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瀬尾まいこ『傑作はまだ』2022・文春文庫-50歳のややひきこもりの作家と初めて会う息子との物語

2024年09月16日 | 小説を読む

 2022年7月のブログです

     *

 瀬尾まいこさんの『傑作はまだ』(2022・文春文庫)を読む。

 夏休みに読もうと楽しみにしていた小説。

 旅先の旭川の本屋さんで購入。 

 ゆっくり読もうと思っていたが、なかなか面白くて、1日で読んでしまう。もったいない。

 本の帯には、50歳の引きこもり作家の元に、生まれてから一度も会ったことのない25歳の息子が、突然やってきた、とある。

 若気の至りで生まれた息子に20年間、写真と引きかえに養育費だけを送っていた父子関係が突然変わる。

 びっくりする物語の始まりだ。

 現代っ子の息子と世間知らずの父、二人の織りなす物語が楽しい。

 少しのユーモアと少しの真実が色を添える。

 一見、悩みのなさそうな息子だが、しかしなにやら、少しだけ影を引きずっている風でもあり、気にかかる。

 息子のおせっかいで町内会に入ることになってしまった作家は、おっかなびっくりながらも新しい人間関係を少しずつ築く。

 同じように少しひきこもりの傾向のあるじーじは、人間とはなんとやっかいなものかと思う。

 しかし、そのわずらわしさが同時に喜びでもあるわけだろう。

 子どもを産んだら、子どもだけしか見えなくなった、という息子の母親の言葉も逞しく、重い。

 そして、それが驚くようなラストに続く。

 小説だなあ、と思うが、いい小説だ。

 そして、希望を持てる物語だと思う。      (2022.7 記)

 


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