2020年8月のブログです
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荻原浩さんの『花のさくら通り』(2015・集英社文庫)を読みました。
これも旭川の本屋さんで見つけました。
面白かったです。
そして、いい小説です。
ユニバーサル広告社という小さな広告会社をめぐる小説で、『オロロ畑でつかまえて』『なかよし小鳩組』に続く第3弾。
前2作もとても面白い小説でしたが、今回もすごいです。
今回はある商店街が舞台ですが、主人公だけでなく、その他の登場人物がとても生き生きとしています。
商店街の変革をめぐるドタバタ劇は、やはり組織と個人の問題や生き方の問題に繋がっていて、じーじには結構、重いテーマですが、荻原さんは一見軽快に描きます。
加えて、主人公と、その別れた妻に引き取られた娘とのやり取りが少しの哀しみをそえます。
さらには、若いカップルの許されない(?)恋愛、中年男性の生き様、などなど、さまざまな人間模様が展開します。
荻原さんはこれらを軽快にとても面白く描きますが、その底には深い哀しみや憤りや怒りなどが渦巻いているように感じられます。
生きることの喜びと切なさ、じーじがこう書くとなんだか陳腐になってしまいますが…。
ラストがまたいいです。
良質の映画を観ているようです。 (2020.8 記)