2022年7月のブログです
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伊坂幸太郎さんの『クジラアタマの王様』(2022・新潮文庫)を読む。
この本も夏休みにゆっくり読もうと思って楽しみにしていたもの。
旭川の本屋さんで買って、すぐに読む。
不思議な小説、物語である。
伊坂ワールド全開。
例によって、あらすじはできるだけ書かないが、まずは、夢が真実か、現実が真実か、というテーマが描かれる。
ロールプレイゲームとの関連もテーマらしいが、もっと深い世界を描いているような気もする。
胡蝶の夢、という言葉も出てきて、司馬遼太郎さんをはじめとして、夢と真実は小説家にとっては大きなテーマなのかもしれない、とも思う。
次に、小説家のすごさを感じた部分。
昔から、小説家は社会のカナリアのような存在、人が気づかないことに先に気づく、と言われるが、この小説はまさにそう。
コロナ騒動を、騒動にさきがけて、あるいは、騒動と同時に、これだけ描いた小説はすごいと思う。
マスコミのいいかげんさ、怖さ、社会のいいかげんさと怖さ、などなどが鋭く描かれる。
改めて、怖い社会になってきているな、と思うし、ここで、自分らしく生きていくことは、おとなでもなかなか大変だなと思う。
ましてや、子どもは…。
コロナはコロナにとどまらず、差別、金儲け、戦争、などなどと問題は広がる。
このような世の中で、人はどう生きるのか。
それが多少のユーモアをともなって物語られる。
とても怖いが、同時に、勇気をもらえる小説ではなかろうか。 (2022.7 記)