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伊坂幸太郎『クジラアタマの王様』2022・新潮文庫-現代社会のあやうさとその中での生きざまを描く

2024年09月17日 | 小説を読む

 2022年7月のブログです

     *

 伊坂幸太郎さんの『クジラアタマの王様』(2022・新潮文庫)を読む。

 この本も夏休みにゆっくり読もうと思って楽しみにしていたもの。

 旭川の本屋さんで買って、すぐに読む。

 不思議な小説、物語である。

 伊坂ワールド全開。

 例によって、あらすじはできるだけ書かないが、まずは、夢が真実か、現実が真実か、というテーマが描かれる。

 ロールプレイゲームとの関連もテーマらしいが、もっと深い世界を描いているような気もする。

 胡蝶の夢、という言葉も出てきて、司馬遼太郎さんをはじめとして、夢と真実は小説家にとっては大きなテーマなのかもしれない、とも思う。

 次に、小説家のすごさを感じた部分。

 昔から、小説家は社会のカナリアのような存在、人が気づかないことに先に気づく、と言われるが、この小説はまさにそう。

 コロナ騒動を、騒動にさきがけて、あるいは、騒動と同時に、これだけ描いた小説はすごいと思う。

 マスコミのいいかげんさ、怖さ、社会のいいかげんさと怖さ、などなどが鋭く描かれる。

 改めて、怖い社会になってきているな、と思うし、ここで、自分らしく生きていくことは、おとなでもなかなか大変だなと思う。

 ましてや、子どもは…。

 コロナはコロナにとどまらず、差別、金儲け、戦争、などなどと問題は広がる。

 このような世の中で、人はどう生きるのか。

 それが多少のユーモアをともなって物語られる。

 とても怖いが、同時に、勇気をもらえる小説ではなかろうか。       (2022.7 記)

 


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