ゆうわファミリーカウンセリング新潟 (じーじ臨床心理士・赤坂正人)     

こころと暮らしの困りごと・悩みごと相談で、じーじ臨床心理士が公園カウンセリングや訪問カウンセリングなどをやっています。

小倉清『子どものこころの世界-あなたのための児童精神科医の臨床ノート』2019・遠見書房

2024年09月17日 | 子どもの臨床に学ぶ

 2019年のブログです

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 小倉清さんの『子どものこころの世界-あなたのための児童精神科医の臨床ノート』(2019・遠見書房)を読みました。

 本書は小倉さんが1984年に出した『こころのせかい「私」は誰?』(同書の拙い感想文もブログに書いてありますので、よかったら読んでみてください)を改訂した本で、内容がさらにパワーアップしています。

 もちろん、基本的なところは同じで、本書でも子どものこころの成長を精神分析的な見方をもとにして、とてもていねいに説明されています。

 現場で長らく診療をされているお医者さんなので、症例が豊富ですし、重要なケースがたくさん出てきて、それをどのように診るか、どのように理解するのか、じーじのような初学者にはとても勉強になります。

 例によって、今回、特に印象に残ったことを一つ、二つ。

 一つめは、防衛機制について。

 防衛機制というのは、ご存じのかたも多いと思いますが、こころの平衡を保つための心理的な作用のことで、否認や抑圧、合理化などが有名ですが、この説明がすごいです。

 これまで、いろいろなかたの説明を読んできていますが、小倉さんの説明が一番シンプルで、かつ、わかりやすいのではないでしょうか。

 文章が本当にこなれていて、読みやすいです。

 幻聴についても、投射という機制で説明をされていて、とてもよく理解ができました。

 二つめは、症例の豊富さ。

 しかも、適切な説明がなされますので、本当にびっくりしたり、感心をしたり、驚くばかりです。

 三つめは、年代ごとのこころの成長と課題について。

 とにかくていねいで、温かく、子どものことを考えられていると思います。

 近いうちに、さらに再読をしようと思いました。      (2019.9 記)

 

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伊坂幸太郎『クジラアタマの王様』2022・新潮文庫-現代社会のあやうさとその中での生きざまを描く

2024年09月17日 | 小説を読む

 2022年7月のブログです

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 伊坂幸太郎さんの『クジラアタマの王様』(2022・新潮文庫)を読む。

 この本も夏休みにゆっくり読もうと思って楽しみにしていたもの。

 旭川の本屋さんで買って、すぐに読む。

 不思議な小説、物語である。

 伊坂ワールド全開。

 例によって、あらすじはできるだけ書かないが、まずは、夢が真実か、現実が真実か、というテーマが描かれる。

 ロールプレイゲームとの関連もテーマらしいが、もっと深い世界を描いているような気もする。

 胡蝶の夢、という言葉も出てきて、司馬遼太郎さんをはじめとして、夢と真実は小説家にとっては大きなテーマなのかもしれない、とも思う。

 次に、小説家のすごさを感じた部分。

 昔から、小説家は社会のカナリアのような存在、人が気づかないことに先に気づく、と言われるが、この小説はまさにそう。

 コロナ騒動を、騒動にさきがけて、あるいは、騒動と同時に、これだけ描いた小説はすごいと思う。

 マスコミのいいかげんさ、怖さ、社会のいいかげんさと怖さ、などなどが鋭く描かれる。

 改めて、怖い社会になってきているな、と思うし、ここで、自分らしく生きていくことは、おとなでもなかなか大変だなと思う。

 ましてや、子どもは…。

 コロナはコロナにとどまらず、差別、金儲け、戦争、などなどと問題は広がる。

 このような世の中で、人はどう生きるのか。

 それが多少のユーモアをともなって物語られる。

 とても怖いが、同時に、勇気をもらえる小説ではなかろうか。       (2022.7 記)

 

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