
企業で社員の資産形成を支援する動きが広がってきた。職域金融教育とも呼ばれ、フィンテック企業や野村証券が相次いで参入し、学習アプリの提供などを通じて後押ししている。
資産運用立国を掲げる政府も2024年に司令塔となる「金融経済教育推進機構」を設立する計画で、官民を挙げて金融リテラシーの底上げを目指す。
人的資本経営が背景に
社員がどれだけ老後資金を用意できるかは、給与が同じでも、資産運用の知識によって大きく変わりうる。
人材を資本として捉え、その価値を最大限に引き出そうとする「人的資本経営」が広がるなか、社員の資産形成を支援する企業が増え始めた。後押しする金融機関にとっては、潜在的な顧客である現役世代との接点を増やせるメリットがある。
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フィンテック企業のMILIZE(ミライズ、東京・港)は人工知能(AI)を使った金融教育ツールを開発した。
運用や年金、保険、住宅、税金、教育の6分野のクイズに答えると自身の金融知識の水準がスコアとして表示される。
年齢や職業などをもとにAIが未来の資産額を予測する。すでに1社で導入済みで、今後半年で実証実験を含めて10社の獲得を計画する。
金融教育スタジオを展開するABCash Technologies(エービーキャッシュテクノロジーズ、東京・渋谷)は企業から研修を請け負うサービスの提供を始めた。
4万人分の利用データからAIが最適な学習内容を提案。導入企業の従業員は家計管理や年金など100本超の動画の受講や、専門家への個別相談ができる。
野村証券は23年度中に、企業に提供する社員持ち株会サービスの専用サイトと野村の資産形成スマートフォンアプリを連携させ、アプリを通じて金融教育を提供する。
アプリをきっかけに資産運用に関心を持った人が野村で証券口座を開設し、持ち株会と並行して資産形成に取り組むことを期待する。
野村が提供する社員持ち株会サービスの会員や企業型確定拠出年金(DC)の加入者数などの合計は23年3月末時点で348万件にのぼる。
野村で営業部門長を務める杉山剛専務は「国内で最も多くの企業の事務主幹事を務めている野村ならではの強みだ」と意気込む。
NECはまずは自社2万人に
大手企業が自ら職場での金融教育に乗り出す例もある。
NECは20年に買収したスイスのソフトウェア企業アバロクが持つ富裕層向けの資産運用ノウハウを活用。社員が生成AIとのチャットなどを通じて気軽に資産運用の勉強をしたり、相談したりできるサービスを開発中だ。
NECの社員2万人を対象にサービスを開発・検証する。その後はNEC以外にサービスの提供を広げる予定で、その一環として9月に資産運用を助言するジャパン・アセット・マネジメント(東京・渋谷)を買収した。
職場での金融教育が活発になってきた背景には22年11月、政府の資産所得倍増プランで「雇用者に対する資産形成の強化」が柱として掲げられたことがある。
そのためのメニューの一つが金融経済教育推進機構の発足。金融庁の関連事業や金融広報中央委員会(日銀が事務局)の機能を移し、金融教育の司令塔とする。
同機構は働く人や学校向けの講師派遣を全国で拡大していく。
個人の資産形成を中立的な立場で助言する専門資格(中立アドバイザー)もつくる。投資の未経験者が資産形成を考える際に気軽に相談できるようにする狙いがある。
年予算約20億円の9割以上を民間からの拠出金でまかなう。同機構の設立を盛り込んだ金融商品取引法改正案が継続審議中で、24年春の設立を目指す。

三井住友信託銀行の調査によれば、金融教育を受講したことがある人の平均金融資産保有額が1001万円だったのに対し、受講経験がない人の平均保有額は901万円にとどまった。
20歳代から60歳代まですべての年齢層で、受講経験がある人の方が保有額は大きくなっている。
2000年に金融審議会が消費者教育としての金融教育を提起してから20年以上が経った。
貯蓄から投資の動きは欧米に比べて進んでおらず、投資詐欺などの事案も後を絶たない。
金融教育ベンチャーのマネネの森永康平氏は「金融商品を扱う金融機関(による投資教育)は中立性の観点から敬遠されてしまう部分がある。雇い主による金融教育は従業員には受け入れやすい」と指摘する。
(フィンテックエディター 関口慶太、和田大蔵、岩田夏実)
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日経記事 2023.10.26より引用