パナソニックは光触媒で水を分解して水素をつくる装置を開発する
パナソニックホールディングス(HD)は製造時に二酸化炭素(CO2)を出さない「グリーン水素」を家庭で自給自足できる装置を2035年にも実用化する。
屋根などに設置して太陽光で水を分解して作る。一般家庭を想定した製造装置は世界でも珍しい。都市圏に設けられる供給拠点から運搬がしにくい地方で水素の普及を後押しする。
製造装置は神戸大学と開発した技術を盛り込む。装置に組み込む特殊な光触媒に太陽光をあて、水を水素と酸素に分解する。製造した水素は貯蔵タンクに保存し、必要時に水素を燃料電池に投入して発電する仕組み。
太陽光発電で自宅の電気をまかなう離島や過疎地の利用者が、夜間など太陽光が使えない時も発電できるようになる。
政府は脱炭素に向けて水素の導入量を40年に現状の6倍の1200万トンにする方針だ。経済産業省によると、家庭用燃料電池の設置台数は22年時点で累計46万5000台。
現在は都市ガスで水素を作る電池が主流だ。価格低減やカーボンニュートラル燃料の普及などで台数が伸びる見通しで、30年ごろに設置台数を300万台にする目標を掲げる。
経産省によれば、純水を使う工業用の水素製造装置の導入価格は1時間あたり1立方メートルの生産能力がある場合で125万円。
1立方メートルの水素を燃料電池に投じると、家庭用エアコンを約90分間稼働させるだけの電力をつくることができる。
35年にも実用化する装置の価格は未定だが、パナソニックは現在の装置の「3分の1程度の水準に下げたい」としている。
電力会社から送電がとまるような災害時の備えにもなり、パナソニックは一般家庭のほか、企業や工場にも導入を呼びかける。
水素は燃料にしてもCO2を出さないため、脱炭素社会にふさわしい次世代エネルギーとして注目されている。
生産方法別に、天然ガスに含まれるメタンを水蒸気と反応させてつくる「グレー水素」、メタンと水蒸気が反応する過程で発生するCO2を地中などに回収する「ブルー水素」といった具合に分類される。
グリーン水素は再生可能エネルギー由来の電力を使い水を電気分解して作られ、消費時だけでなく製造時もCO2を排出しないことから環境に最も優しいとされる。
コンサルティングのデロイトによると、グリーン水素の世界の供給量は30年までに1億1500万トンとなり、ブルー水素を上回る。
40年のグリーン水素の供給量はブルー水素の2.3倍に達する見通しで、水素社会の中核を担うとみられる。
パナソニックと神戸大学が共同開発した装置は、光触媒につかう物質をナノ(ナノは10億分の1)メートルレベルで規則正しく並べ、水の分解に必要な電子を多く発生させる技術に強みがある。
装置は標準的な戸建て住宅の屋根にのせられるサイズを想定し、太陽電池のように薄いパネル状にして販売。
触媒をガラスなど透明な板ではさみ、内部に水を通して太陽光と反応させ水素を作る。水素は専用の配管を通じて燃料電池やタンクに届ける。
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日経記事 2023.10.28より引用
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小型の装置で、家庭で電気や野菜がつくれたら良いですね。