VWは工場閉鎖を巡る労使交渉が長引いている
(4日、独北部ウォルフスブルクの同社本社工場)=AP
【フランクフルト=林英樹】
ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の経営権を持つポルシェSEは13日、保有するVW株について最大200億ユーロ(約3兆2000億円)の減損損失を計上する可能性があると発表した。
VWは業績悪化から独国内工場の閉鎖を検討するが、労働組合が反発している。先行きの不透明さからポルシェSEは2024年12月期の業績予想も撤回した。
ポルシェSEは、オーナー一族であるポルシェ家とピエヒ家が実質支配する持ち株会社。
VWの議決権ベースの株式53.3%、独高級車ブランドであるポルシェAGの株式25%を保有する。
ポルシェSEはVW株の評価額を70億〜200億ユーロ、ポルシェAG株については10億〜20億ユーロの減損損失となるとの予想を公表した。
VW株については9月末時点の515億ユーロの評価額から最大4割の減額となる。
24年12月期の最終損益について「大幅なマイナスになると予想している」と指摘。24億〜44億ユーロの黒字となるとの従来予想を撤回した。
背景にあるのがVWを巡る混乱の長期化だ。欧州での電気自動車(EV)販売不振や生産コストの高止まりから、VW経営陣は同社初となる独国内工場の閉鎖、人員削減などのリストラ策を公表した。これに労組が反発し、2度にわたる終日ストライキに踏み切った。
これまでに4度の労使交渉を行ったが、両者の主張は平行線で妥結に至っていない。16日に独北部ハノーバーで次回交渉を予定している。
労組側は年内妥結が難しい場合ストの拡大を示唆しており、混乱の長期化が避けられない情勢だ。
VWを実質支配するポルシェ家とピエヒ家の影響力は大きい。ポルシェSEとAGの監査役会会長を務めるヴォルフガング・ポルシェ氏ら3人のオーナー一族がVWの監査役会のメンバーとなっている。
VW前社長のヘルベルト・ディース氏は両家の後ろ盾を失い、22年9月に任期途中で退任した。
現在のオリバー・ブルーメ社長はオーナー一族と関係が近く、VWの上場子会社であるポルシェAGの社長も兼務している。
同社関係者によると、オーナー一族はVWが検討する独国内工場の閉鎖に賛同しているという。
【関連記事】
日経記事2024.12.14より引用