18日の米株式市場は大揺れとなった。ダウ工業株30種平均は前日比1123ドル(2.6%)安の4万2326ドルに急落。米大統領選以降のいわゆる「トランプ・ラリー」で上昇した分がほぼ帳消しとなった。
米株市場を覆っていた楽観を米連邦準備理事会(FRB)のタカ派的な発信が冷ました格好だ。
「間違いなく『タカ派的利下げ』で、しかもタカ派度合いは予想よりもはるかに強かった」。米運用会社インベスコのチーフ・グローバル・マーケット・ストラテジスト、クリスティーナ・フーパー氏は指摘する。
米連邦公開市場委員会(FOMC)は大方の予想どおり3会合連続の利下げとなったが、市場をおののかせたのは3カ月に1度公表するFOMCの経済見通しだった。
FOMC参加者の予想中央値では、25年中の利下げ回数は2回。前回9月予想の4回から半減。同時に市場参加者の目を引いたのは「25年の米個人消費支出(PCE)コア指数の上昇率予想を2.5%へと上方修正したことだ」。
米大手ヘッジファンドのポイント72でチーフエコノミストを務めるディーン・マキ氏は語った。一部の参加者がトランプ次期政権の政策変更の影響を織り込んだとパウエル氏は説明した。
ダウ平均は4日に史上最高値4万5014ドルを付けて以降、10営業日連続で下落した。10日続落は1974年10月以来、50年2カ月ぶりの珍事だ。
続落中の下げ幅は計2687ドル(6%)に及び、株価水準は大統領選の投開票日11月5日の終値(4万2221ドル)までほぼ逆戻りした。
前日までのダウ平均の下げ基調は、値がさ株である米医療保険最大手ユナイテッドヘルス・グループ(UNH)の急落という個別かつテクニカルな要因によるものだった。
ただ、18日はダウ平均採用銘柄のうちUNH以外の29銘柄全てが下落し、構図は逆転。純粋に投資家心理が弱気に急旋回したことを示した。
前日まで最高値圏を続けていたS&P500種株価指数も18日は3%安と急落し、採用銘柄の9割以上が下げる全面安の展開となった。
同指数で下げ銘柄数が上げ銘柄数を上回るのは13営業日連続。米ブルームバーグ通信によると少なくとも1996年以降で初めての事態だ。一部の巨大テックばかりがけん引してきた相場上昇のもろさが露呈した。
24年の米国株は夏場の短期的な急落を除けば、ほぼ大きな調整を経ずに上昇基調を続けてきた。どこかでスピード調整は避けられなかった。ちょうど良い押し目とみる向きもあるだろう。
「FOMCの経済見通しは驚くほど不正確になりうることを念押ししたい」。インベスコのフーパー氏は、FRBが21年末時点で22年の利上げペースを見誤った点を引き合いに出す。
ちなみに、ダウ平均の18日の下げ幅1123ドルは22年9月13日(1276ドル安)以来、約2年3カ月ぶりの大きさを記録した。
当時は消費者物価指数(CPI)が予想比上振れしたことで、利上げ終了時期が逃げ水のように遠のいたことから投資家心理が一気に弱気に傾いた。当時も今も、中銀頼みの株高という構図自体は変わっていない。
(ニューヨーク=竹内弘文)
マーケットコラム「ウォール街ラウンドアップ」の一覧ページです。2024年10月1日、コラム名称を「NY特急便」から変更しました。
日経記事2024.12.19より引用