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トランプ関税、自国にブーメラン 27年GDP1.1%下押し

2024-12-13 14:13:25 | 米大統領選2024

米国のトランプ次期大統領が打ち出した関税引き上げ策が、米国経済の減速につながるとの見方が出ている。

主要輸入元のメキシコやカナダに25%の関税を課す考えで、物価上昇や雇用減につながって、米の2027年の国内総生産(GDP)は1.1%下押しされる。世界最大の経済大国は自由貿易の果実を失うことになる。

 

トランプ氏が11月25日に表明した関税政策の影響を、日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所が試算した。

メキシコやカナダ向けの25%のほか、中国に追加で10%の関税を課した場合、27年時点のGDPへの影響を調べた。トランプ氏は25年1月に就任し、任期は4年となる。

 

 

試算では米国のGDPは関税引き上げがないケースと比べて1.1%マイナスとなる見通しだ

。鉱業、農業がそれぞれ1.5%下落と影響が大きい。経済的な結びつきが強いメキシコやカナダから、トマトやアボカドといった野菜や果物を輸入しており、関税増による販売価格の上昇が国内消費への打撃や就労機会の減少につながる可能性がある

 

米小売り大手ウォルマートのジョン・レイニー最高財務責任者(CFO)は米CNBCの取材に、関税引き上げで「消費者にとっては価格が上がるケースが恐らくある」と指摘した。

アジア経済研究所の磯野生茂氏は「トランプ氏が掲げる自国中心の高関税政策は『自損行為』となる可能性が高い世界経済全体の成長を抑制する要因にもなり得る」と指摘する。

 

 

 

中国からは代替が難しい品目はコスト増として米経済に跳ね返る。

ジェトロによると、電気自動車(EV)の電池の材料である天然黒鉛・永久磁石の対中輸入割合は23年時点で77.8%、EV用リチウムイオンバッテリーは65.1%に達している。

 

中国は0.3%のマイナスとなる見込みだ。関税があがれば米国内やアジアからの代替調達や工場移転が進む可能性がある。リコーは米国向けに輸出する事務機の生産地を中国からタイに移す方針を示す。

米靴小売大手スティーブマデンのエドワード・ローゼンフェルド最高経営責任者(CEO)は11月、「中国からの商品調達割合は今後急速に減る」と述べた。現在は商品の7割を中国で生産、調達する。今後はカンボジアやベトナムなどに分散し、中国からの調達を4割程度減らす考えだ。

 

日本のGDPは0.2%押し上げられる見通しだ。自動車産業を中心に代替先として米国向けの輸出が増えることが想定される。

東南アジア諸国連合(ASEAN)やインドも食品加工や繊維・衣料産業などの代替先としてプラスの影響を受ける。磯野氏は「政策的な分断が激化するほど、ASEANなど中立的なグローバルサウスの国々の便益は大きくなり、重要度も増す」と指摘する。

 

17〜21年のトランプ政権下では対中国で高い関税が課された結果、メキシコやカナダは輸出を伸ばした。25年1月以降に両国への関税率が上がれば、深刻な影響が出る。

27年のGDPはメキシコが3.8%、カナダは1.2%下押しされる見込みだ。特に自動車関連は生産が冷え込み、メキシコが10.7%、カナダが10.2%マイナスとなる。

 

経団連の十倉雅和会長は「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)によって原則関税がかからないことを前提に現地に製造拠点を設けている日本企業が多い」と指摘して、先行きへの影響を懸念する。

4月にメキシコで空調機器の新工場を稼働したダイキン工業の竹中直文社長は「もし関税が課されれば、今後メキシコ工場へのさらなる投資計画を見直す可能性もある」と話す。住友電気工業はメキシコで新工場の稼働を25年にも予定する。担当者は「状況を注視し顧客と相談しながら対応を考える」とする。

 

 

 

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トランプ氏は「関税は世界で最も美しい言葉」と述べ、選挙戦などで中国への関税を60%に引き上げることや、他国には10〜20%をかけるとも表明している。実現した場合、米国や世界経済への負の影響はさらに拡大する見通しだ。

ただ、こうした発言は「あくまで各国との取引材料で、全面的に実行される可能性は低い」(第一生命経済研究所の前田和馬氏)とみる向きもある。実際、追加関税表明後、メキシコのシェインバウム大統領、カナダのトルドー首相が相次ぎトランプ氏と会談。不法移民対策などについて意見交換したとされる。こうした各国の駆け引きは今後も加速するとみられる。

 

アジア経済研究所は試算に経済地理シミュレーションモデル(IDE-GSM)を用いた。このモデルは国よりも小さい州や県といった単位での経済効果を算出できるのが特徴。

世界銀行やアジア開発銀行(ADB)によって、国際的なインフラ開発の経済効果分析などに利用されてきた。

 

 

 

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

 

 

 

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小野亮
みずほリサーチ&テクノロジーズ 調査部 プリンシパル
 
別の視点

中期的にみれば、トランプ関税によって、日本の最大の輸出先・投資先である米国がやや重い風邪をひき、自動車セクターが多額の投資を行っているメキシコが瀕死の状態に陥っても、日本は風邪を引かずむしろ少し元気になる ーーー

トランプ関税を悲観的に捉えるべきではないという貴重なシナリオだが、好ましい「中期」の姿に到達する前に「短期」の荒波を乗り越える必要がある。

荒波によって経済の進路が変われば、中期の姿も自ずと変化する。当初、

対岸の火事と思われたサブプライム問題やリーマンショックによって、日本経済が大きく屈折したことを想起せずにはいられない。

 

 
 
 
 
日経記事2024.12.13より引用
 
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