歴史的な大型再編の決断を促したのは、台湾電機大手、鴻海精密工業の影だった
(8月の記者会見で握手する日産自動車の内田社長=㊧=とホンダの三部社長)
ホンダと日産自動車が経営統合に向けて協議に入る。歴史的な大型再編の決断を促したのは、台湾電機大手、鴻海精密工業の影だった。
鴻海は経営不振の日産に狙いを定め、水面下で経営に参画しようと動いていた。鴻海の思惑が実現すれば、ホンダと日産の協業が白紙に戻りかねない。両社は不退転の覚悟で一気に統合へ舵を切った。
今秋から日産の周辺に鴻海の影がちらついていた。鴻海は米アップルのスマホ「iPhone」の受託生産で成長を遂げた。
今もIT機器の受託生産が主力だが、2019年に次の柱として電気自動車(EV)事業への参入を表明。EVの設計や製造を受託するサービスを展開しているが、停滞する事業のてこ入れが課題だった。
鴻海のEV事業のトップは日産元ナンバー3
そのEV事業を担うのが関潤・最高戦略責任者(CSO)。日産の元ナンバー3で日本電産(現ニデック)社長を経て、23年に鴻海に招かれた。
世界のEV市場で「シェア40%」にする長期目標を課された関氏は、古巣の日産に目をつけた。
鴻海の関氏は日産の元ナンバー3
鴻海は顧客になると期待した米新興EVメーカーが相次ぎ破綻したこともあり、日本市場の開拓に力点を置いた。子会社のシャープの部品技術を活用しながら、自らEV開発まで手掛けることを9月に打ち出していた。
日産は10年にEV「リーフ」を量産した実績がある。鴻海は日産への出資を通じ、EV製造のノウハウと世界に持つ販売力を獲得したい思惑があったもようだ。
鴻海は日産への経営参画の手段として、仏ルノーが信託銀行に預けている日産株に着目した。ルノーは、1999年に経営不振に陥った日産株を取得し43%を出資する筆頭株主となった。
ルノーの影響力が強い不平等条約といわれ、日産は対等関係への修正を長年求めてきた。2023年11月、両社の資本関係が24年ぶりに見直され、ルノーが出資比率を引き下げて15%ずつを相互出資する形となった。
ルノーは保有する日産株の一部を段階的に放出するために、いったんフランスの信託銀行に移していた。現在も22.8%(9月時点)の日産株が信託銀行にあり、鴻海はその株式を取得すれば日産の経営に関与できると踏んだようだ。
日産は鴻海の動きを察知
鴻海は顧客になると期待した米新興EVメーカーが相次ぎ破綻したこともあり、日本市場の開拓に力点を置いた。子会社のシャープの部品技術を活用しながら、自らEV開発まで手掛けることを9月に打ち出していた。
日産は10年にEV「リーフ」を量産した実績がある。鴻海は日産への出資を通じ、EV製造のノウハウと世界に持つ販売力を獲得したい思惑があったもようだ。
鴻海は日産への経営参画の手段として、仏ルノーが信託銀行に預けている日産株に着目した。ルノーは、1999年に経営不振に陥った日産株を取得し43%を出資する筆頭株主となった。
ルノーの影響力が強い不平等条約といわれ、日産は対等関係への修正を長年求めてきた。2023年11月、両社の資本関係が24年ぶりに見直され、ルノーが出資比率を引き下げて15%ずつを相互出資する形となった。
ルノーは保有する日産株の一部を段階的に放出するために、いったんフランスの信託銀行に移していた。現在も22.8%(9月時点)の日産株が信託銀行にあり、鴻海はその株式を取得すれば日産の経営に関与できると踏んだようだ。
日産は鴻海の動きを察知
鴻海は顧客になると期待した米新興EVメーカーが相次ぎ破綻したこともあり、日本市場の開拓に力点を置いた。子会社のシャープの部品技術を活用しながら、自らEV開発まで手掛けることを9月に打ち出していた。
日産は10年にEV「リーフ」を量産した実績がある。鴻海は日産への出資を通じ、EV製造のノウハウと世界に持つ販売力を獲得したい思惑があったもようだ。
鴻海は日産への経営参画の手段として、仏ルノーが信託銀行に預けている日産株に着目した。ルノーは、1999年に経営不振に陥った日産株を取得し43%を出資する筆頭株主となった。
ルノーの影響力が強い不平等条約といわれ、日産は対等関係への修正を長年求めてきた。2023年11月、両社の資本関係が24年ぶりに見直され、ルノーが出資比率を引き下げて15%ずつを相互出資する形となった。
ルノーは保有する日産株の一部を段階的に放出するために、いったんフランスの信託銀行に移していた。現在も22.8%(9月時点)の日産株が信託銀行にあり、鴻海はその株式を取得すれば日産の経営に関与できると踏んだようだ。
日産は鴻海の動きを察知
日産はこうした鴻海の動きを察知し、水面下で買収防衛に向けた対策を協議していた。経営不振に直面する日産にとって、鴻海による経営参画は避けたかった。
日産は主力の米国や中国市場の販売不振が深刻で、24年4〜9月期の連結純利益は192億円と、前年同期比で94%落ち込んだ。
立て直し策として、世界で9000人の人員削減や世界生産能力を2割減らす構造改革を11月に打ち出したが、鴻海が経営に参画すれば、一段と踏み込んだリストラを迫られるリスクがあった。
鴻海の関氏には日産の内田誠社長との因縁もあった。
関氏は19年12月に日産の副COO(最高執行責任者)に就任した。
内田社長らに次ぐ「ナンバー3」として経営再建にあたる予定だったが、就任直後に日産を去り、日本電産の社長に転じた。「関氏は日産を捨てた」と日産側には映った。
ホンダ、日産との協業白紙に焦り
ホンダも鴻海の動向を警戒していた。ホンダは8月に日産と包括的な業務提携を結び、EVの基幹部品や車載ソフトウエアなどの共通化に向けた協議を始めていた。
「日産と鴻海が連携すれば、こちらの連携は白紙に戻す」
ホンダ関係者は日産に強く警告していたが、焦りの裏返しでもあった。
ホンダにとって日産との協業は成長の軸で、破談は何としても避けたかった。鴻海が日産に対して敵対的TOB(株式公開買い付け)に踏み切れば、ホンダがホワイトナイト(友好的買収者)になることも検討していた。
12月に入り、鴻海による水面下の動きは活発になってきた。
鴻海の関氏がフランス・パリでルノーのルカ・デメオ最高経営責任者(CEO)との会談を予定しているとの情報も伝わった。「その場で鴻海が日産株の取得を打診しても不思議ではない」(日産関係者)との見方もあった。
日産の大株主にアクティビスト
日産の経営環境は厳しさを増していた。11月にアクティビスト(物言う株主)の存在も明らかになった。旧村上ファンド系のエフィッシモが運用するとされるファンドが発行済み株式の2.5%を保有する第5位の大株主に名を連ねた。
さらにトランプ次期米大統領が掲げる関税引き上げも事業環境を一層不透明にする。日産はメキシコや日本の工場から米国に多くの車を輸出している。公約通りに関税引き上げとなれば、主戦場である米国市場での打撃は大きい。
経営再建に向けて様々な選択肢があるなか、内田社長は買収リスクを排除し、事態を打開するために最終的にホンダとの経営統合に向けた協議入りを選択した。
日産が筆頭株主の三菱自動車も将来加わることを視野に入れ、今後増大する自動運転などのソフトウエアや電池の投資負担に耐えられる体制づくりを目指す。
3社の統合が実現すれば、販売台数が800万台を超える世界第3位の自動車グループが誕生する。米テスラや中国勢と伍す競争力を得られる。
米ゼネラル・モーターズ(GM)は現代自動車とEVやソフトウエアなど次世代車の共同開発で提携を検討している。ホンダと日産が鳴らした再編の号砲は、今後は世界へ波及する。
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
”シャープ化”した日産の救済に今必要なのは鴻海だったと思う。
高い技術力があっても、目まぐるしい世界の需要変動に対して適材適所で売れる商品を出す商品企画力が欠如している。
今の日産の苦境は鴻海が救済に打って出た時のシャープのようだ。中国勢よりスピード感に欠ける車メーカー同士がくっついて“○○○万台”で規模の経済性を追求するという発想は、独フォルクスワーゲンや仏PSAの昨今の経営失敗が示すように今や時代遅れだ。
求められるのはスピード経営と抜本的事業改革。前例なきスピードで収益改善と企業価値を向上させる具体的施策を早期に出せるかに注目。
日産株は急騰しているがホンダ株は日経平均以上の率で下落している。
ホンダと日産自動車が経営統合に向けた協議に入ります。持ち株会社を設立し、傘下に両社がぶら下がるかたちで調整します。将来的に三菱自動車が合流することも視野に入れています。最新ニュースと解説をお伝えします。
日経記事2024.12.18より引用