25日の米株式市場でダウ工業株30種平均は続伸し、前週終値比440ドル高い4万4736ドルで取引を終えた。
ダウ平均の構成銘柄ではないが、トランプ次期政権入りが決まったイーロン・マスク氏率いる電気自動車(EV)大手の米テスラは4%安となった。
自動運転車の規制緩和など同社に有利な政策が進むとの期待から、大統領選以降に株価は4割上昇したが、一服感が出てきた。
「テスラ株の上昇はほとんどがアニマルスピリット(動物的精神)で起こされる」。
UBSのジョセフ・スパック氏は25日、マスク氏の政権入りを歓迎するハネムーン相場は続かないと予測し、トランプ政策で同社が待ち受ける厳しい現実を分析した。
トランプ氏が検討中のEVを購入した消費者への税額控除の廃止が実現すればEV価格は上がり、テスラにも値下げ圧力が高まる。「中国勢との競争も依然として厳しい」(スパック氏)
足元の自動車株はトランプ政策の影響を計りかねているようだ。25日、ゼネラル・モーターズ(GM)は3%高、フォード・モーターは2%高、トヨタ自動車は1%高と小幅だった。
前週からカリフォルニア州で始まったロサンゼルス自動車ショーも業界の迷いを映し出すものになった。
ホンダは25年から北米で生産するEVのコンセプト車こそ展示したが、目玉の新車は高出力エンジンを搭載したガソリン車だった。
フォードもハイブリッド車(HV)や大型ガソリン車が中心。一方の韓国勢はEVを前面に打ち出した。
カリフォルニア州は環境規制で先行し、EV登録台数も全米首位だが、次期政権を見越したかのようにEVは控えに回り、主役が定まらないショーとなった。
「我々は介入する」。同州のギャビン・ニューサム知事は25日、トランプ氏がEV税額控除を廃止した場合、州で税額控除を復活すると宣言したが、テスラは除外するという。
トランプ次期政権で米国EVはどこに向かうのか。バイデン氏はインフレ抑制法(IRA)のもとで、EVを購入した消費者に新車1台あたり最大7500ドルを税額控除する仕組みで販売を促した。しかしこの政策でEV市場は本当に広がったといえるのか。
IRAでは、対中強硬の色合いが強まった。販売補助金を支給する対象の車種を北米の生産車に絞っただけでなく、支援するEVに価格上限を設け、部品などでも一定の割合を北米生産とする要件を設けた。
生産や販売規模が小さい新興メーカーはコストの高い北米で、しかも中国からの調達にも頼らずに低価格EVを生産するのは難しく、結果的に補助金の対象からはずれた。フィスカーなど新興EVメーカーの一部は破綻も余儀なくされた。
EV普及が行き詰まる中でバイデン氏は23年にIRAの条件を緩和。北米産でなくてもリースなら補助金対象とした。この政策が輸入のEVを増やす「抜け穴」になったとの批判もある。
補助金の恩恵がはがれれば、7500ドル分のEV値上げが始まる。消費者の選択はどこに向かうのか、メーカーの眼力も問われることになる。次の主役は何か。市場はまだ狩りに踏み出せずにいる。
(ニューヨーク=川上梓)
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
元々、EVはまだ多くの問題を抱えている商品である。
バッテリー劣化に伴う資産価値低下、重量増によるタイヤ/道路への負担増と事故を起こした時の死亡事故増加、バッテリーのリサイクル問題、電力供給問題、給電設備の新設などなど。
勿論、利点もある。部品点数削減による参入障壁低下、走行時のCO2排出量ゼロ、燃料コスト削減、などなど。
しかし、ユーザーフレンドリーの視点で見ると圧倒的にハイブリッドが優っていると思う。補助金ありきのEVに明るい将来は見えない。
マーケットコラム「ウォール街ラウンドアップ」の一覧ページです。2024年10月1日、コラム名称を「NY特急便」から変更しました。
日経記事2024.11.26より引用