晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

福井晴敏 『Op.ローズダスト』

2009-05-23 | 日本人作家 は
福井晴敏のデビュー作『川の深さは』から第2作『Twelve Y.O』、
そして『亡国のイージス』はストーリー的に繋がっていて、防衛庁
(まだ省じゃない)の秘密組織「DAIS(ダイス)」が出てくるのです
が、今回の『Op.ローズダスト』はその流れを汲む作品です。

前述の3作品を「3部作」と呼ばせてもらいますが、基本設定は、
終戦後、アメリカの支配下に置かれ、独立はしたもののいまだに
独り立ちできていない日本という国家を憂い、いい加減に自立し
ようよ、といった感じ(かなり乱暴ですが)なのですけど、3部作は
ピンとテンションの張り詰めた弦楽器を丁寧に奏でるといった例え。
あまり強く弾くと弦が切れてしまい、だからテクニックを要するので
すが、今回の『Op.ローズダスト』は、そんなに張り詰めなくてもい
いじゃん、弦緩めて弾こうよ、といった、肩の力がいい具合に抜けた
ような、なんか文章に遊びを入れたりといった余裕が垣間見られま
したね。

ネット財閥の役員が早朝出勤時に爆発死。カルト教団の関与が囁か
れる中、警視庁公安所属の並河は防衛庁の丹原とともに、警察の
捜査とは別に調査をします。中東のテロが日本上陸か、北朝鮮が
関与しているのか、調べてゆくうちに、第2の犯行が起こります。
そこで並河と丹原はこの事件の犯人グループの正体、さらに丹原と
犯人グループには接点があり、「オペレーション・ローズダスト」
という名の日本国内におけるテロ活動が明らかに・・・

それにしても、肉厚な作品。読後は満足感というよりは、胸焼けの満
腹感、といったほうが感覚は近いかも。
敵方も魅力的に描ける、というか、そこには単純な正義と悪という関係
では推し量れない、複雑な感情だったり因縁だったり立場だったりが
交錯して、登場人物みんなが存在感を持っています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする