晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

宮部みゆき 『孤宿の人』

2011-01-04 | 日本人作家 ま
新年。慶賀。

宮部みゆきの時代小説は、ふしぎと「重さ」のようなものは
感じられず、かといってライトタッチというわけでもなく、
説明過多ではないのにすんなりと理解できる、なんとも形容
しがたいのですが、要は「面白い」ということですね。

四国、讃岐国(現在の香川県)の丸海藩は、北に瀬戸内海、
南は山に囲まれた、小さな藩。
(※作者があとがきで記しているように、このモデルは一文字
変えた「丸亀」だそうです)
ここに、江戸から金毘羅参りの途中で捨てられた小さな
女の子がいました。その名は「ほう」。

江戸の商家の若旦那が外腹で産ませた「ほう」は、むげに
扱われず、かといって厄介ものでもあり、縁者筋の老夫婦
にあずけられますが、そこでの暮らしは悲惨そのもので、
ろくにしつけもなされず、ふたたび商家に連れ戻された
「ほう」は、家中に病人が相次いで出たために、年輩女中
に連れられて、四国の金毘羅さま参りに出かけます。

しかしこの女中は底意地が悪く、道中「ほう」を苛めとおし、
挙句、四国に入ると、途中で「ほう」を置き去りに。
しかし「ほう」は、丸海藩で代々医家の井上家に助けられて、
女中として暮らします。
それまで字も数勘定も教わっておらず、「ほう」は井上家の
お嬢さま、琴江に教わり、幸せな日々だったのですが、ある
大雨の日、家近くの高台にある畑にいると、琴江さまの友人
で井上家によく遊びにくる藩役人梶原家の美弥さまが傘を
さして家に入っていくのを見ます。
それからしばらくして、家の中で琴江さまが倒れているのが
見つけられ・・・

琴江さまは医師の兄の所見で毒殺されたとわかり、かけつけた
同心の渡部に「ほう」は、確かに美弥さまが井上家に入って
いったところを見たといいます。

しかし、事態は「ほう」の想像だにしない方向に進んでいきます。
なんと、琴江さまは心臓の病で急死し、そもそも美弥さまは井上
の家には来ておらず、「ほう」の見たのは琴江さまが死んだショック
の幻想だというのです。

周りの大人たちがこう言うのを、にわかに「ほう」は信じません。
そのうちに「ほう」は、美弥さまを琴江さま殺しの犯人だと言い出し
かねないので井上家には置いて置けないという話に発展。

そんな中、女でありながら引手見習いの宇佐に引き取ってもらい、
ふたりで暮らしはじめます。

そして、丸海藩にとって一大事である、江戸幕府役人で家族と家来を
切り殺して流罪となった加賀殿の請け入れの日が迫ってきて、まるで
その呪いでもあるかのように、藩内では事故や不審な病死が相次いで
起こります。
琴江さまが死んだのも、この加賀さまのせいなのか・・・

なんと、「ほう」に、その加賀殿の幽閉されている屋敷で女中奉公を
せよとお達しが・・・

はたして加賀さまは丸海藩に厄災を運んできた鬼悪霊なのか・・・

のちに「ほう」は、この加賀さまと交流をもちはじめるのですが、
それが泣けます。たまりません。

比較してはいけないとは分かりつつ、しかしこの作品は、山本周五郎の
「樅の木は残った」に匹敵する素晴らしい時代小説。

コメント (2)
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