晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

馳星周 『長恨歌~不夜城完結編~」

2011-01-18 | 日本人作家 は
はじめの「不夜城」、そして続編にあたる「鎮魂歌」はだいぶ前に
読んだので、この「長恨歌」の読み出しから、あれ、この人は?
そして、この人とこの人の人間関係は?という基本情報が抜けていて、
かといってせっかく読もうとしているのに前編をもう一度読み返す
というのも正直メンドクサイ(汗)ので、自分が過去にこのブログに
書いた書評を見ておさらい。

まず、しょっぱなからとんでもないことが起こります。
これは「不夜城」「鎮魂歌」を読まないと、その関係性はわからない
のですが、素直な感想として「とうとうやっちまったか・・・」
というもの。

今作品の主人公、武は、もともと中国人でありながら、ある方法で残留孤児
なりすまし、日本国籍を取得、そのまま日本人として日本で暮らすも、
勤めていた会社がつぶれ、なんだかんだで歌舞伎町の裏社会と関わる
ことになります。

そこで、銃だのクスリだのを危ない組織と取引する、いわゆる「運び屋」
のようなことをしていたのですが、このまとめ役に呼ばれて、ある大きな
仕事の見張りをすることに。そこで、まとめ役でリーダー格の男が、待ち
合わせに指定された喫茶店で取引中に突然、見知らぬ男たちが散弾銃
をぶっ撃ち、リーダー格の男と、取引に来ていた暴力団は死亡。

一部始終を見ていた武は、はっきりとこの男たちの顔を見ますが、
とりあえずその場から逃げます。するとその時、道で不気味さの漂う
男とぶつかってしまいます。

自分の部屋で隠れるように引きこもる武。携帯の留守電には、運び屋
の仲間から、出て来いとのメッセージが引っ切り無し。
その中に、聞き覚えのない男からのメッセージが。取引相手の暴力団
関係者でした。
とりあえず、この暴力団の男に会いにいくことに。逃げた犯人の顔を
見ていたのは武だけということで、犯人探しを頼まれます。もちろん否や
など不可能。

しかし、センセーショナルな事件だっただけに、歌舞伎町は辺りいっぱい
警察が、そして、この街に住む危ない人たちも一時的に表立って動こうと
はしていないので、情報収集も容易ではありません。

そんな時に、この歌舞伎町でスゴ腕の「情報屋」がいると訊き、さっそく
その「情報屋」のもとへ向かう武。
その「情報屋」とは、事件の時にぶつかった、あの男だったのです・・・

男の名は、劉健一。

劉健一といえば、「不夜城」から出てくる、まあ、一言でいえば「ヤバイ」
人です。またこの男が表に出てくるのか・・・

逃げようと思えば逃げられるのに、なぜか今の酷い境遇にとどまろうとする
その心理は何なのか。
一様に「破滅願望」とまとめることもできません。

怜悧なのか、人情に厚いのか、それは人間性の核ではなく、その時その場面
に応じてころころ色を変えるカメレオンのよう。

相変わらず、読み始めると「うわあ、読まなきゃよかった」と思いつつも
そのままぐいぐいと引き込まれてしまい、アッという間に読み終わる。
そしてなぜか、その世界感にまだとどまっていたいとさえ思わせてくれます。
コメント
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