今年の、公共放送では大型連休と呼んでいるでお馴染みゴールデンウィークですが、夜勤が1日おきに入ってましてゴールデンウィーク期間中はずっと仕事でした。もっとも土日も祝日も盆も正月も関係ないような職種ですから世間の休みと自分の休みが重なると出かけたくなくなるといいますか。平日のほうが空いてますし。
ワーカホリックではありません。
さて、ロザムンド・ピルチャー。スコットランドの女性作家。だいぶ前ですが「9月に」という作品を読みまして、作者の名前も作品もしらずに買って読んだらこれがまた面白かったのです。「面白い」というのはハラハラドキドキのスリルとかジェットコースターのようなスピード感とかではありません。そういうのは全くありません。ごく普通の登場人物でごく普通の話が淡々と述べられていく、ぶっちゃけ地味な内容なのですが、なぜか物語に引き込まれてしまい、読後にはとても良い本を読んだと心がほんのりあったかくなるような気分になります。
アメリカ西海岸カリフォルニアの観光客はまず来ない場所にある家に住んでいる娘ジェインと父のふたり暮らし。飼い犬もいます。ジェインの父は映画やドラマの脚本家で、もともとはスコットランドに住んでいたのですが、ジェインの母親の死後にアメリカに移り住んではや7年。ある日のこと、父は出かけていてジェインが家にひとりでいると一台の車が家の前に停まり、男が父に用があって来たと告げ、玄関越しにジェインの声を聞くと「ジェインだね?」と言います。
男はデイビッドといいスコットランドに住むジェインの祖母の弁護士。アメリカまで来た理由は祖母が何度も手紙を出しても返事が来なかったからで、ジェインはそのことを知りません。手紙の内容はジェインにスコットランドに帰ってきてほしいということなのですが、じつは父娘がアメリカに来る前、父と祖母が言い争っていたことがあったので、父がそれを読んで娘を帰らせたくなかったので隠してたのか。
もっとも、父と飼い犬を残して帰ることは難しく、スコットランドには帰らないと言いますが「火曜までいるので気が変わったら連絡をくれ」といって帰ります。父の机を開けるとそこには祖母からの手紙が。するとジェインの脳裏に懐かしいスコットランドの情景が思い浮かんできます。翌日、父が恋人のリンダといっしょに帰ってきます。なんとこれからいっしょに暮らすというのです。
ジェインはスコットランドに帰ると決心し父に告げ、弁護士が来て手紙の件も知ってしまったことを言うと「とめないよ」と許してくれます。そして、デイビッドといっしょにイギリス行きの飛行機に乗ります。ロンドンから寝台列車でエディンバラを過ぎてスロンボという駅に着きます。そこから車でしばらく行くとエルヴィー湖があり、ほんの半マイル先にエルヴィー荘が。到着すると中から祖母が出てきて7年ぶりの再会。
デイビッドが帰り、家に入ると祖母が「驚かせたいことがある」といってジェインが振り向くと「お帰り、ジェイン」と、ロンドンに住んでいるはずのいとこのシンクレアが立っています。休暇を取って戻ってきて、ジェインはシンクレアと懐かしい人に会ったり懐かしい場所へ行ったりします。
ふたりでピクニックに出かけると、いきなりシンクレアが「結婚しよう」とジェインにプロポーズを・・・
ジェインがまだ小さかった頃、密かにシンクレアに恋心を抱いていたことはあったのですが、ジェインはオーケーするのか。そして、知ってしまった家族に関する秘密とは。
こういう感想だとロマンスぽい内容のようですが、ロマンチックな結末ではありません。冒頭、カリフォルニアから始まったのでびっくりしましたが、その後のメインストーリーはスコットランドになったので安心。そしてスコットランドの情景描写はとても美しく、行ったことがなくてもなんだか懐かしい気持ちになってしまいました。「蛍の光」や「故郷の空(誰かさんと誰かさんが麦畑)」、「スコットランド・ザ・ブレイブ」といったスコットランド民謡やバグパイプの演奏を聞くとなぜか懐かしさがこみ上げてきます。音楽の専門的な話になりますが日本の歌とスコットランド民謡の共通点として「ヨナ抜き音階」というのがあって、ドレミファソラシドを数字にして4と7つまりファとシが無い、ドレミソラドの5音で構成されているメロディーが多いのです。ちなみに沖縄音楽は2と6(レとラ)抜きの「ニロ抜き音階」といいます。じっさいに弾いてみたらわかります。
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