昨年は、こんな素人書評の駄文にお付き合いいただきまして、
ありがとうございました。
さて、年末年始にテレビを見ることがめっきり少なくなってきた
昨今、面白い本を読んで過ごしましょう、ということで、5年前
くらいでしょうか、かなり話題になった『警官の血』を、ようやく
読むことに。
話の舞台は、戦後間もない東京の下町からはじまります。安城清二
は、日雇いの仕事から疲れて家に帰ると、妻から「赤ちゃんができた
みたい」と告げられます。
安定した職に就きたいと思っていた清二は、警察官になると決めます。
さっそく地元の警察署に行って、面接と試験を受けて、合格。
警察練習所での訓練を経て、清二は上野警察署の外勤係に配属が決ま
ります。
そこで、一家は谷中に引っ越すことに。
上野公園前派出所に勤務となった清二。公園には、戦争孤児や浮浪者
の吹き溜まりと化しています。そんな中、清二は数人の浮浪者と交流
を持つことになります。ひとりは、浮浪者の男娼グループに属してい
る「ミドリ」。
もうひとりは、中年の浮浪者で、かなり学があり、仲間から「先生」と
呼ばれている原田。
ある日、ミドリが死んでいるところを発見されます。数日前に清二が
見かけたときは顔にアザがあり、ちょっとしたトラブル程度と思って
いたのですが・・・
しかし、清二は浮浪者ひとりの事件にかかりきりというわけにはいかず、
この当時は、朝鮮戦争では北が優勢で、日本では血のメーデーが起こった
り、左翼運動が活発になるのでは、という警戒感が強かったのです。
さて、清二は、上野署に勤務しているときに、凶悪犯を逮捕した功績で、
谷中にある天王寺駐在所に異動を願い出ます。
子どもは2人いて、前から妻と「駐在所のお巡りさんがいい」などと話し
ていて、ようやくその希望がかないます。
近所でヒロポン中毒の男が暴れたり、少年の万引き犯を説教したり、
国鉄に勤めていた少年が死んだりと、何かと忙しい日々。
ある夜、駐在所の裏にある墓地のほうで火の手があがり、五重の塔が燃
えています。現場の野次馬整理に奔走する清二。するとそこに、ある男
の顔が清二の目にとまります。
男は現場を離れ、そのあとを付いていく清二でしたが・・・
ここで、第一部の終了。
清二は、火災現場から離れた場所で、死体になって発見されます。
さて、長男の民雄は、成績が優秀でしたが、父が事故死してしまい、
さらに、火災現場から離れたという理由で、特進にはならず、進学を
あきらめかけていたところ、父の警察練習所の同期たちが援助してく
れて高校に通います。そこでも優秀で、国立大も余裕だったのですが、
民雄は、高卒で警官になる、と告げます。
民雄は採用試験に受かり、警視庁警察学校に入学するのですが、そこで
なぜか公安部の警視の前で面接を受けさせられます。
なんと、民雄に身分は巡査のままで、警視庁のお金で大学に通わないか、
というのです・・・
しかしその実態は、当時日本じゅうの大学に巻き起こっていた学生運動
の、ようは”スパイ”となって、大学生となって潜伏しろ、ということ
だったのです。
かくして北海道大学の学生となった民雄。
大学内で、”赤軍派”やら”ブント”の活動を見張り、公安部に報告を
続ける民雄。
近いうちに、佐藤栄作首相の訪米阻止の大規模な過激運動が起こりそう
との情報を得て、さらに民雄は、ブントの学生に声をかけられ、参加を
求められます。
どこかの山荘で、日本中の学生が集まって、なにやら訓練をするらしく、
民雄はこれに同行することに。そして逐一報告も。
そして、民雄は、仲間の目をかいくぐり、どうにか詳細の書かれた紙を
見ず知らずの登山者に渡します。そのあと機動隊が突入し、一斉逮捕。
民雄は、これで過酷な任務から解かれると思っていたのですが、公安は、
まだもうしばらく続けて欲しい、と。
「僕は親父の様な駐在警官になるのが夢」と訴える民雄。
そのうち、公安のスパイを続けているうちに、心が潰れてしまいます。
治療を受け、これ以上は続けられないとドクターストップがかかり、
これでようやく制服警官になれると安堵する民雄。
その間に、病院の看護婦と仲良くなり、のちに結婚することに。
と、その頃、民雄は、父の同期だった窪田と病院でばったり再会します。
自然と父・清二の話になり、そこで窪田から、上野で起きたオカマさん殺し
、谷中の近所であった少年鉄道員殺し、このふたつの事件を清二はずっと
追っていた、と聞かされ・・・
はたしてふたつの事件の接点は、そして、それが父の死の原因なのか。
父と交流のあった「先生」を探したり、いろいろ調べたり聞いたりします
が、謎は深まるばかり。
民雄は、ふたたび谷中の地に戻ることに。かつて住んでいた、天王寺
派出所の駐在警官になります。
ところが、近所で立てこもり事件が発生、犯人は銃を持って、女の子を
人質に。部屋に突入する民雄でしたが・・・
と、ここで第二部の終了。次は民雄の息子、和也が第三部の主人公に。
和也にとっての祖父、清二の謎の死はなんだったのか。2代そろって殉職
(清二は殉職扱いにはならなかった)し、3代目も警官の道へ。
和也の体に受け継がれる、タイトルの「警官の血」という意味が、第三部に
なって「ええっ!?」という驚きとともに、分かることになります。
戦後の昭和史のおもな出来事を随所に散りばめられ、もちろん安城の三世代も
これらに深く関わっていて面白いですね。
久しぶりに読んだ、重厚な作品でした。
ありがとうございました。
さて、年末年始にテレビを見ることがめっきり少なくなってきた
昨今、面白い本を読んで過ごしましょう、ということで、5年前
くらいでしょうか、かなり話題になった『警官の血』を、ようやく
読むことに。
話の舞台は、戦後間もない東京の下町からはじまります。安城清二
は、日雇いの仕事から疲れて家に帰ると、妻から「赤ちゃんができた
みたい」と告げられます。
安定した職に就きたいと思っていた清二は、警察官になると決めます。
さっそく地元の警察署に行って、面接と試験を受けて、合格。
警察練習所での訓練を経て、清二は上野警察署の外勤係に配属が決ま
ります。
そこで、一家は谷中に引っ越すことに。
上野公園前派出所に勤務となった清二。公園には、戦争孤児や浮浪者
の吹き溜まりと化しています。そんな中、清二は数人の浮浪者と交流
を持つことになります。ひとりは、浮浪者の男娼グループに属してい
る「ミドリ」。
もうひとりは、中年の浮浪者で、かなり学があり、仲間から「先生」と
呼ばれている原田。
ある日、ミドリが死んでいるところを発見されます。数日前に清二が
見かけたときは顔にアザがあり、ちょっとしたトラブル程度と思って
いたのですが・・・
しかし、清二は浮浪者ひとりの事件にかかりきりというわけにはいかず、
この当時は、朝鮮戦争では北が優勢で、日本では血のメーデーが起こった
り、左翼運動が活発になるのでは、という警戒感が強かったのです。
さて、清二は、上野署に勤務しているときに、凶悪犯を逮捕した功績で、
谷中にある天王寺駐在所に異動を願い出ます。
子どもは2人いて、前から妻と「駐在所のお巡りさんがいい」などと話し
ていて、ようやくその希望がかないます。
近所でヒロポン中毒の男が暴れたり、少年の万引き犯を説教したり、
国鉄に勤めていた少年が死んだりと、何かと忙しい日々。
ある夜、駐在所の裏にある墓地のほうで火の手があがり、五重の塔が燃
えています。現場の野次馬整理に奔走する清二。するとそこに、ある男
の顔が清二の目にとまります。
男は現場を離れ、そのあとを付いていく清二でしたが・・・
ここで、第一部の終了。
清二は、火災現場から離れた場所で、死体になって発見されます。
さて、長男の民雄は、成績が優秀でしたが、父が事故死してしまい、
さらに、火災現場から離れたという理由で、特進にはならず、進学を
あきらめかけていたところ、父の警察練習所の同期たちが援助してく
れて高校に通います。そこでも優秀で、国立大も余裕だったのですが、
民雄は、高卒で警官になる、と告げます。
民雄は採用試験に受かり、警視庁警察学校に入学するのですが、そこで
なぜか公安部の警視の前で面接を受けさせられます。
なんと、民雄に身分は巡査のままで、警視庁のお金で大学に通わないか、
というのです・・・
しかしその実態は、当時日本じゅうの大学に巻き起こっていた学生運動
の、ようは”スパイ”となって、大学生となって潜伏しろ、ということ
だったのです。
かくして北海道大学の学生となった民雄。
大学内で、”赤軍派”やら”ブント”の活動を見張り、公安部に報告を
続ける民雄。
近いうちに、佐藤栄作首相の訪米阻止の大規模な過激運動が起こりそう
との情報を得て、さらに民雄は、ブントの学生に声をかけられ、参加を
求められます。
どこかの山荘で、日本中の学生が集まって、なにやら訓練をするらしく、
民雄はこれに同行することに。そして逐一報告も。
そして、民雄は、仲間の目をかいくぐり、どうにか詳細の書かれた紙を
見ず知らずの登山者に渡します。そのあと機動隊が突入し、一斉逮捕。
民雄は、これで過酷な任務から解かれると思っていたのですが、公安は、
まだもうしばらく続けて欲しい、と。
「僕は親父の様な駐在警官になるのが夢」と訴える民雄。
そのうち、公安のスパイを続けているうちに、心が潰れてしまいます。
治療を受け、これ以上は続けられないとドクターストップがかかり、
これでようやく制服警官になれると安堵する民雄。
その間に、病院の看護婦と仲良くなり、のちに結婚することに。
と、その頃、民雄は、父の同期だった窪田と病院でばったり再会します。
自然と父・清二の話になり、そこで窪田から、上野で起きたオカマさん殺し
、谷中の近所であった少年鉄道員殺し、このふたつの事件を清二はずっと
追っていた、と聞かされ・・・
はたしてふたつの事件の接点は、そして、それが父の死の原因なのか。
父と交流のあった「先生」を探したり、いろいろ調べたり聞いたりします
が、謎は深まるばかり。
民雄は、ふたたび谷中の地に戻ることに。かつて住んでいた、天王寺
派出所の駐在警官になります。
ところが、近所で立てこもり事件が発生、犯人は銃を持って、女の子を
人質に。部屋に突入する民雄でしたが・・・
と、ここで第二部の終了。次は民雄の息子、和也が第三部の主人公に。
和也にとっての祖父、清二の謎の死はなんだったのか。2代そろって殉職
(清二は殉職扱いにはならなかった)し、3代目も警官の道へ。
和也の体に受け継がれる、タイトルの「警官の血」という意味が、第三部に
なって「ええっ!?」という驚きとともに、分かることになります。
戦後の昭和史のおもな出来事を随所に散りばめられ、もちろん安城の三世代も
これらに深く関わっていて面白いですね。
久しぶりに読んだ、重厚な作品でした。
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