晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

佐伯泰英 『夏目影二郎始末旅(五) 百鬼狩り』

2022-01-02 | 日本人作家 さ

気が付いたら年が明けてしまいました。旧年中は当ブログを見て頂きましてありがとうございます。今年も暇つぶしになれば幸いに存じます。というわけでどうぞお付き合いのほどを。

去年読んだ本のほとんどが時代小説。現代小説も海外の小説も好きです。ただ、ここ最近は時代小説が多いですね。本を読む理由のその①が「時間つぶし」、その②が「現実逃避」ですので、時代小説、主に江戸時代が多いのですが、読んでる最中は自身がその時代にタイムスリップしてる心持ちで読んでおります。

まあこのご時世、心の切り替えは大事です。

 

さて、夏目影二郎始末旅。今までの旅は基本的には関八州でした。武蔵、相模、安房、上総、下総、常陸、上野、下野。現代の関東地方ですね。江戸府内より外のこのエリアの腐敗を見つけ、成敗をしてきたわけですが、本作は一気に九州へ。

影二郎と、勘定奉行監察方の菱沼喜十郎とその娘の大道芸者をやっているおこまの3人が向かっているのは、西国九州の唐津。なんのために九州くんだりまで足を運ぶことになったのかというと、時の老中、水野忠邦のたっての願い、というか、後始末というか尻拭い。影二郎の実父である常盤秀信とその部下である菱沼喜十郎の直属の上司であり、さらに影二郎が十手持ちを殺めて島流しになる寸前に牢屋から出られたのは裏でこの老中が罪人の履歴を抹消させたからで、つまり父子揃って頭が上がりません。

20年ほど前、幕閣への道が開けつつあった忠邦は、九州の唐津から東海道筋への移転を希望していて、タイミングよく浜松藩の前の藩主が不祥事で東北の陸奥に飛ばされ、陸奥の藩主だった小笠原家が唐津へ、そして忠邦は浜松藩へ、という(三方領地替)が行われます。

ところが、唐津から浜松へ移転すれば石高が減収し財政のひっ迫は目に見えていたので移転に反対していた唐津藩の国家老が自決するという事件が起きます。

で、ここからが本題。

城内で鵜飼いを見物していた忠邦は、宴席に招かれ、藩お抱えの鵜匠の娘(お歌)と恋仲に。しかし忠邦は浜松へ。お歌にいっしょに浜松に行こうと誘いますが父親が反対、ふたりの恋は終わります。それから20年後、忠邦のもとにお歌から手紙が。じつは別れたときにお腹の中にはあなたの子がいて、息子は立派に育ちました、父親に会わせてあげたいという母の願いを聞いては下さいませんか、といった内容。そこで思い出したのが、江戸からお歌宛てに手紙を送っていたのです。忠邦は、どうやらその手紙の内容が出世の道が閉ざされるスキャンダルになるかもしれんと恐れている様子。

しかし、20年も過ぎてなぜ今さら、なにか裏にあるはずだということで、これが表ざたにならないよう手紙を処分し、なんだったら息子も処分してくれ、と非情な命令。

唐津藩では財政がひっ迫しているはずですが、藩主は幕閣へ昇進しようと躍起になっています。その資金源は密貿易ではとの疑いもあって、ひょっとしてお歌の背後には藩がいるのか。

そんなこんなで肥前に入ろうとした国境警備の役人に止められますが影二郎は役人をあっけなく倒して唐津に向かいます。道中、一宿の世話になった医師の話によれば、唐津では「百鬼水軍」と名乗る倭寇の末裔が出没しているというのです。

お歌の実家である鵜匠の家を訪ねると、当代の主はお歌の弟。弟によると、妊娠が発覚した姉は長崎の知り合いの家に養女に出されたそうなのです。これは長崎に行って見ないと分からないな、というわけで、唐津の城下をぶらぶら歩いて海まで行って見た影二郎は、水軍のような男たちが船から荷を下ろして、それを藩士ぽい人が確認している場面を目撃するのです。

影二郎とおこまは長崎に行くことにして、お歌の弟に紹介された鯨漁師の船で長崎へ向かっていると、百鬼水軍の船に襲われて・・・

はたして、お歌の目的は。お歌の背後にいるのは藩なのか、それとも商人か。忠邦が送ったとされる手紙はどこにあるのか。そして、お歌の息子は。

 

唐津と言えば「くんち」。祭りのシーンも出てきますが、なんとも幻想的というか。あ、あと、ちなみにですが、忠邦が領地替えすることになった浜松の前の藩主の名前は井上河内守。井上河内守で(不祥事)といえば、酔っぱらって農家の女房に乱暴しようとして止めに入った亭主の腕を刀で斬り落としたという「色でしくじりゃ井上様よ」の人。殿さまはいちおう猛省したそうで、亭主に賠償金を払ったとか、藩お抱えにしたとかいろいろ後日談がありますが、こうやって話に残ってるだけマシなほうで、日本全国どこかしらでもっと酷いことがあったんでしょうね。


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