『書物展望』昭和十八年六月号に、市村宏の「宮澤賢治の歌」があり、以下のように記識されているところがある。本文は以下の写真をご覧になっていただくとして、冨山房から出版された「宮澤賢治」五版以前には市村の名はないが、「『宮沢賢治』のできた頃」と題して昭和四十五年四月二十五日が、一般の人々にはみられた。
市村は「宮澤賢治の郷里岩手県花巻町を訪ねたのは昨年の冬の最中同地では旧正月を迎えるための暮市の最中であった。」とあるが、昭和十八年一月の二十日から二十五 六日ころ花巻に来たのであろう。佐藤博士の桜の自宅に、清六さんや森荘已池・菊池暁輝・佐藤紅花(歌)等「賢治の会」の幹部の方々が集まってみえたとある。そして賢治という人のいろいろな面が、「これらの方々の口から交々描き出されてそれをお聞きしたくて来たわたしには実になによりもたのしかった。またこの時はじめて佐藤紅花(歌)氏の漏れた故人の少年時代の逸話の数々が、隆房博士の名著、「宮澤賢治」の内容を一層豊富にしたことも特筆してよいことであろう。」とある。
つづく