路地猫~rojineko~

路地で出会った猫と人。気付かなければ出会う事のない風景がある。カメラで紡いだ、小さな小さな物語。

映画鑑賞の感想的なモノ

2024-10-03 | ★ほんの日常

ちょっと前にBS松竹さんでポン・ジュノ監督作品特集をやっていたので

録画してゆっくり鑑賞しようと思っていたのです…。

で、寝る前に見るつもりが、

目がギンギンになってどっと疲れる結果になってしましました。笑。

詳しいストーリーはこちらからどうぞ。

 

「パラサイト~半地下の家族~」は話題になっていたのでだいぶ前にみていたのですが、

この作品はパラサイトよりも以前に撮られた作品だそうで、でも色濃くポン・ジュノ色が

滲み出た作品でした。

いや、こっちの方が重いかも。

 

通常の「母」のイメージを覆す凄さがありました。

無駄なシーンが一つもない息をつかせないジェットコースター。

以下はネタバレをかなり含みますので、ご覧になっていない方は読まない方が良いかも。

 

 

出てくる人がみんな変だし、奇妙なバランスで成り立っている町だと思う。

一番まともそうでいい人なのは、母の漢方薬局の向いの写真館の奥さん位。

でも不妊治療に苦しんでいてトジュンの母親がくれる妊娠できる薬欲しさに

色々協力していたとしても、故人の写真を他人に現像して渡す所はそもそも変だしね。

 

根底には大きく「貧困問題」があって、

「警察・司法・医療のズサンさ」「障碍者問題」「ヤングケアラー問題」「援助交際問題」

もっとすれば「国際問題(中国への偏見や日本への自国対応)」もはらんでる気がする。

韓国の危うさをも描いているのかも。

 

序盤にトジュンの母親がどす黒い漢方薬を

立ちションするトジュンに飲ませるシーンが出てくるんですが、

流れたオシッコを母親が隠すシーンが全てを物語っています。

 

この映画では特に液体(オシッコ、お薬、ペットボトルの水、血液、ボンド、雨など)が

意味深に場面毎に登場します。この液体を使った演出が素晴らしい。

 

トジュンの記憶がいつも曖昧なのは、過去の事件の記憶を封印する癖が残っているのかも。

人間はショックな記憶を消してしまう心の作用があるというし。

色んな考察を読んでみたのですが、トジュンは障碍者ではないという考察が出て来たりしてましたが

これは、ちゃんと障碍者だと思うのです。

ただ、母親から「馬鹿にされたらやり返せ」という教育を受けて育ち

「馬鹿」と呼ばれるとスイッチが入る人になってしまった。

それが偶然、アジュン(殺された子)に「馬鹿」と言われただけ。

そもそも殺意なんかなく、事故。

「血が出てるから皆に知らせなくちゃ」…で、みんなの目に付く屋上へ運ぶ。

奇妙な他殺体の出現…となる訳です。

 

 

セリフ回しも秀逸です。

刑事の奥さんが母親の漢方薬局で高麗人参にケチを付けているシーンでは

「これ中国産じゃない?死体の腐ったような臭いがするわ」と、

中国産商品への不信感をあらわにするシーンがあったり。

トジュンが警察で尋問を受けている時、

刑事が言う「殺しにライセンスはいらない」というセリフが出てくるのですが、

トジュンの母親は「鍼灸師の免許は持っていない」のです。

母親がトジュンに面会に来た時も、

「リンゴ→アップル→アポー」というセリフもまた、

トジュンの「母親→マザー→マーダー」という言葉遊び。

なぜ日本の邦題が「母なる証明」なのかなと思うくらいです。

トジュンが、「皆俺が殺したって言うし、結局罪が何周か回って俺に戻ってくる」

というセリフも「殺したら殺したって言わなきゃ」と母親に語りかけている顔がまた怖い。

「貧困からの母親の罪がトジュンをつくり、トジュンの罪が母の罪になる」のではないかと。

 

 

登場人物については、

トジュンの友達であるジンテは恐らく、幼馴染で

若い頃のトジュンの母親への憧れみたいなものもあって「何でお前みたいのが良いのかね」とつぶやきます。

このジンテも貧困に苦しんでいます。でも頼れる親もなく警察学校へ行くお金もなかったのでしょう。

トジュンの母親に疑われたのを機に、母親を脅して金銭を要求。

良い奴なのか悪い奴なのか良くわからない人ですが、トジュンの事は嫌いではない様子。

正義感は割と強くて、でもズルい知恵は回るし

色々回りの奴を利用してうまく立ち回れるタイプ。

ジンテの彼女のミナはスナックの娘であまり頭が良いとは思えない感じ。

ジンテとつるんでいるトジュンにも愛想を振りまいている。

殺されたアジュンですが、町の噂では金銭や米と引き換えに援助交際(売春)をしているという少女。

ある考察ではジョンパル(ダウン症の日本人)とは純粋に付き合っていたけれど

ジョンパルを守る為に米を貰っていたのでは?という深い事を書いておられる方がいて、それもそうだなと。

認知症のおばあちゃんの所へトジュンの母親がアジュンの秘密が詰まった携帯をとりに行った時、

米はお櫃の中に溢れる程にあったし、写真館の奥さんには携帯の写真を現像できないか聞いていた時

20枚くらいって言ってたけど、サッカーチーム2つ分くらいの人数がアジュンの客(脅迫したい相手)だとしたら

11人×2=22人になる。現像したい枚数が20枚くらいって事はあと2人は割と好きな人だったのかも。

ジョンパルと、もう一人。それは廃品回収業のおじさんだった。

死ぬ前にあれだけ米櫃が一杯なのに米と引き換えにあのおじさんと会おうとしていたのだから。

廃品回収業者のおじさんは雨が降っていた時にトジュンの母親から壊れた傘と引き換えに

お札を2枚渡されて1枚しか受け取らなかった。

割とフェアに商売をしている人かもしれない。

けど、アジョンの身体をお米で買っていたとは言えないから証言はできないよね。

 

そもそも、アジョンの葬式にトジュンの母親が行った時に、

あれだけ親戚が沢山いて認知症のおばあちゃんをアジョンが一人で看ていたってのも奇妙でしかなかった。

まるで自分たちが看るのが嫌で身内を精神病院に入れておいて、

ひとたび病院で不都合な事があると裁判沙汰になる親族みたいに。

 

何処かの考察記事にジョンパルが日本人だからこれは「反日映画」だと書いてあるものがありましたが

それは、逆ではないのかなと思う訳です。

ジョンパルは冤罪だし。

「悪い事はみんな日本の性にしてるよな、韓国って国は」って事ではないかと思うのです。

 

 

ポン・ジュノ監督の毒リンゴ爆弾のような映画でした。

長い長い私的考察にお付き合いくださってありがとうございます。

 

 

 

 


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