路地猫~rojineko~

路地で出会った猫と人。気付かなければ出会う事のない風景がある。カメラで紡いだ、小さな小さな物語。

「猫の木」(1)

2008-10-17 | ★アトリエ

その木は、南の奥地にある、

川沿いの草原にありました。

春から夏にかけての暖かい頃になると、

毎年、猫のなる木があるのです。



春には、その木に花が咲き、花びらが散った後、花の中心の部分が

小さくふくらみ、ゆっくりと小さなしっぽを伸ばすのです。

そして、夏には、熟した猫が枝から

ぽとり、ぽとり、と落ちる姿が見られます。

猫の木には、色々な種類の猫がなります。

三毛猫、キジトラ、茶トラ、白猫、黒猫、ブチ猫、サビ猫…などなどです。




枝から落ちた猫は、

のら猫として、ひとりで生きていくものもいます。

おばあさんにひろわれて、おばあさんの猫になるもの。

王さまにひろわれて、王さまの猫になるもの。

女の子にひろわれて、女の子の猫になるもの。

猟師さんにひろわれて、猟師さんの猫になるもの……と、さまざまです。




ある年の春、花が散った後に、

ゆっくりとしっぽを伸ばした三毛猫がいました。

もうじき猫の顔ができてくるころ、大きなカラスが飛んできたのです。

カラスは、猫の木を見たのは、はじめてでした。

まだ子猫のままの三毛猫は、熟していないので、

木から落ちることも、逃げることもできません。

カラスは、猫の木のものめずらしさに、ツチバシでつつきました。

できはじめたばかりの三毛猫の右目がつぶれてしまいました。





熟した猫たちが枝から落ちる頃合いを見計らって、

ペット売りの店主がやって来ました。

店主は、毎年、この季節にここへやって来ては、枝から良い猫を選んで

店につれて帰り、猫を欲しがっている人に、売るのです。

店主は、いつも良い猫を選んでいました。

そうしないと、猫が売れないからです。

店主は、右目のつぶれた三毛猫を見て、「お前は、ダメだ」と言い

黒猫と、キジトラ、茶トラの美しい猫たちを、選んでつれて帰りました。





      --つづく--





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2 コメント

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ねこやまさんへ (rojineko)
2008-10-17 23:15:33
ありがとうございます。
続きは明日のお楽しみです。。
返信する
気になる (ねこやま)
2008-10-17 15:02:37
続きが気になります。
可愛いイラストですね。
返信する

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