穴にハマったアリスたち

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(第2話)キボウノチカラ〜オトナプリキュア’23〜「ケツイノスガタ」感想

2023年10月14日 | オトナプリキュア
■(第2話)キボウノチカラ〜オトナプリキュア’23〜「ケツイノスガタ」感想


(「オトナプリキュア」第2話より)

キュアドリームが顕現なされた。夢見るものには希望を、それを邪魔するものには絶望を携えて。
長年「最も出会いたいプリキュア」と「最も出会いたくないプリキュア」としてドリームを挙げてきたのだけど、それが間違いではなかったと改めて確信しました。
この夢原さんは強い。

子供時代は何でもできると思っていた。だけど大人になったら様々などうにもならない問題に溢れていた。

カワリーノさんが見せた悪夢。「鏡の国」でダークキュアたちが語ったこと。
夢を叶えて何になるのか。
久々に集まった一同はみな悩んでいた。傍目には成功しているように見える。が、各自が劣等感を覚えている。

例えばこまちさんの悩みは、ダークミントやこまちちゃん人形から指摘されたことそのもの。
誰かの代わり。誰かの予備。自分は空っぽの人形で、損な役回り。
町内会の手伝い。家業の手伝い。手伝い手伝い手伝い。確かに貢献してる。小説も何かの賞を取った。で、それが何になるのか。

プリ5の精神は「夢を目指すとき人は一人きり。だけど同じように夢を目指して頑張っている人がいれば、私も頑張れる」。
たとえどんなに離れていても、見えない糸でつながっている。私たちは同じ空の下にいる。

それが今や逆に自分を追い詰める。みんなはあんなに立派なのに、それに引き換え私は…。
プリ5の続編として、この上ない完璧な心の折り方だと思う。

夢の無意味さ。変化の悲しさ。
ナイトメアとエターナルがここにきて心に忍び寄る。

そんな状況で遭遇したシャドウの群れ。たまたま居合わせた教え子を守るために夢原先生は奮闘なさる。
的確な指示と共に発せられる「大丈夫」の言葉が胸を打ちます。
際立って強調して発せられた台詞ではなかったのに、あの頃のイントネーションや響きそのもので、ああもう「大丈夫」だと謎の確信が沸いてくる。

シャドウに捕縛され、夢の終わりを囁かれる中。夢原さんを奮い立たせたのは、るみちゃんと交わした「未来で会おう」の約束。
かつてフローラさんとの「だって会いに行くって約束したから」と同じ精神です。
夢の先で会いに行く。だからうずくまっている暇はない。

舞い降りたプリキュアバタフライを、夏木さんも認識してたのがさりげなく好き。
何が起きるかはよく知っている。あの蝶だ。

細かな設定的なところで言うなら、バタフライで変身したのは5の夢原さんで、キュアモは蝶(パルミエ)と薔薇(ローズガーデン)の力で変身してる。
今のキュアローズガーデンの主は夢原さんですから、彼女はローズガーデンの力的なものを行使はできるはず。
ただもうそんな設定は今はどうでもいい。野暮というもの。

若返ったから変身できるというより、変身できるのだから若返った。
これについては今後何かありそうなので先走って踏み込むのは避けた方が良さそうですが、今はそれで納得できます。

無邪気に何でもできると思っていた子供時代とは違う、現実のままならなさを知った上でのキュアドリーム。恐ろしく強いです。
「大人って辛いんだよ」的な負の描写が、綺麗に反転して強さに繋がるのは見事としか言いようがない。本当に強い。大人だから強い。子供時代の想いを、大人の今、昇華して取り込んで変身したその姿。希望のプリキュアと同時に絶望のプリキュアとすら思う矛盾しまくった感動が巻き起こるほど、とにかく強い。

本当に今、プリキュア5の続編を見てるんだなと感動しまくってます。
ちゃんと「オトナ」であり「プリキュア」でもある。凄いなこれ。本当に凄い。

【変身】
変身時には子供の姿に戻った。

子供時代の自分と、大人になった自分は全く別の人間ではない。
昔の自分は消え去ったのではなく、今の自分を構成する大事な要素になっている。
だから昔の気持ちを取り戻せば、昔の自分の姿にもなれる。
乱暴に情緒もなく言うなら「昔取った杵柄で、昔を思い出したら上手く行った」みたいなものか。

「大人では解決できないことを、子供なら解決できる(大人になったら解決できなくなった)」のではなく、「私の中にいる子供時代の大事な思いが、今を切り抜ける力になる」。

10周年のハピネスチャージでも15周年のハグプリでも、同様のことは大事な要素になっていました。
子供時代のイノセントな気持ちを忘れないで。私が憧れたのはこんなことで心折れる私じゃない。
幼き頃の思い出を胸に立ち上がるのは、子供番組たる「プリキュア」の未来の戦いとしてとても納得がいく。

ただ、きっかけとなったタイムフラワーは、見た目の感じが何やら怪しいです。
「時を戻す」のは「先に進む」に主眼のある夢原さんとは合わないとも思う。
なのでここから何かもう一捻りありそうな気がする。

【スプラッシュスター】
現時点で「プリ5」の続編として完璧なだけに、美翔さん達がどう割り込むのかさっぱり分かりません。
出オチかに思われたダークナイトライトが、事態を把握して暗躍してるっぽいのは素直に胸が高鳴ります。あの霧生さんたちが、密かに戦ってる…!
で、美翔さんはどうするんでしょうか。これからしばらくはプリ5メンバーの再始動が続くとして、そこから登場するのかしら。
実はもう花鳥キュアとして影で戦ってますとかもあるのかもしれない。

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(第1話)キボウノチカラ〜オトナプリキュア’23〜「ミライノカタチ」感想

2023年10月07日 | オトナプリキュア
■(第1話)キボウノチカラ〜オトナプリキュア’23〜「ミライノカタチ」感想

謎の配信者・ダークナイトライト。
もしやこれが暗躍する今回の敵か…?と思いきや。


(「オトナプリキュア」第1話より)

即座のオチがついた。霧生さん達、お元気そうで何よりです。

舞台はあの激闘の本編から何年後か。
我らの夢原さんは小学校教師になっていらっしゃった。まずいきなり驚愕。何となく中学校(何ならサンクルミエール)で教師をやってるイメージがあったので。

いつの間にかキュアモは失われ、今や変身もできない。そのことを意識もしていない。
大人になったからなのか。それとも別の理由があるのか。だけど今はそれは重大事ではない。
彼女たちは目の前の今を生きている。

夢原さんの目下の悩みは、教え子のるみちゃん。ダンスを頑張ってたけど、ご家庭の経済状況が芳しくなく転校することに。転校先にはダンス部はない。

どうにか応援しようと、夢原先生は考えた。学校に掛け合ったり、親御さんに相談したり。
無策ではなく、一定の筋を通した現実的な案や、様々な補助政策も携えて。
だけど現実はままならない。新たな制度を作るには時間がかかるし、目先をしのぐだけでは生活は成り立たない。

まだ明確に描写はされていませんが、るみちゃんのお家は金以外の問題も抱えていそう。
今回未登場の母親は、一家の危機にさっさと離婚して一抜けで知らぬ存ぜぬです。
何か描かれていない事情があったにせよ、お父さんが自棄になるのも分かる。

プリキュアだったときは何でもできると思っていた。
しかしながら現実は、敵を殴り倒して解決することばかりではない。

ハピネスチャージの「人形の国」。
スマイルプリキュアの続編小説。
ハートキャッチのデザトリアン療法。

思い返せばプリキュアさんは、どうにもならない現実の問題に苦しめられてきた。
10周年の「人形の国」で吹っ切ったかに思えた壁が、成長した夢原さんの前に立ちふさがる。

謎の存在・ベルは語る。「時間は止まらない、戻らない」。これが何を意味するかは分からねど、街には蠢く謎の影たち。不思議な偶然か必然で再集結したプリ5の面々。
世界に溢れかえる「殴っても解決しない」問題の片隅で、夢原さんはどうなさるのだろう…?

【お帰りなさい、プリキュアさん】
プリキュア5にスプラッシュスター。
美翔舞役の榎本温子さんもおっしゃっていたように、驚くほど違和感なく当時のままで見ることができた。
それでいて感じる、あの頃には戻れない空気。

随所に溢れるオマージュや引用が謎の感情を掻き立てます。
OPにED、アイキャッチや登場人物。もうそれ一つで幾らでも語ってしまいそうな演出が次々と。

SS組からの初登場はいきなりの満さん・薫さんで、その後は健太・優子。
そして彼女らを「日向咲・美翔舞の関係者」と夢原さんは認識していない(おそらく)。
こういう距離感はとても好き。

卒業した一同がいつの間にか疎遠になってるのも良いです。
「プリ5」「GoGo」の物語は、視聴者的にはそれが全てでも、夢原さん達にとっては数十年の人生の1,2年のこと。
私達の知らない何倍もの時間を歩んで、今ここにいる。
それに何より「離れていても同じ空の下にいる」はプリ5で描かれたこと。ずっと仲良しべったりより説得力がある。

他にも大事なことやしょうもないこと、細々いろいろ気なることが溢れてくる。
夢原先生は、教え子にプリキュアが混ざってる可能性は考えてるんだろうかとか。慌てて物陰に走って行ったり、何やら蠢く鞄を押さえてアタフタしてたら、「ああ、うん、そうだよね…」と見て見ぬふりするんだろうか…。

SDGs絡みとのことでかなり不安にはなっていたのですけど、「大量消費はダメ」とか「個人の価値観優先」とかの安易な方向には行かなさそうでまずは安心。

ベルの語る「時間は戻らない」はスプラッシュスターのテーマ。
宇宙開闢前の静寂に戻りたかったゴーヤーンの夢は、全ての物に宿る命の前進により潰えた。時間は止まらないし戻らない。

これまでのプリキュアの文脈で行くなら「温暖化を食い止めよう!」とか「私達ひとりひとりが意識しよう!」のような方向ではないはず。るみちゃんを救うために皆で寄付しよう!とならないのと同じで。(いやもしかしたらその展開なのかもしれないけれど)

温暖化(不幸なアクシデント)は起きる。それは事実として受け入れるしかない。ただ無駄に悪化させる必要はないんだから避けられることは避けよう、備えよう。そしていざ起きても挫けず夢を見つめなおそう。そんな方向かしら。
夢原先生も、児童の問題を何でも解決するスーパー教師の幻想から卒業し、「できないことがある」を受け入れた上で「立派な先生」の夢を改めて目指すとか。

るみちゃんも転校先でダンス部を作ると宣言し、空元気かもしれませんが前を向いています。
夢原先生の想いはちゃんと伝わっている。彼女本人は納得できていないけれど。

OPの「夢原先生を助けに舞い戻ったかのようなキュアドリーム」の絵は無性に泣けてきます。
かつての自分。「夢」を冠するプリキュアに、現実に惑う自分自身が救われる。
実際にそういう展開なのかはともかく、子供時代のあの時の自分に救われる感覚は実感として分かる。

次回は「ケツイノスガタ」。決意の姿として変身なさる…のだろうか?
とんでもないものが始まってしまった。

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