上野の科学博物館にて、好評開催中の特別展に行ってきました。
■大哺乳類展 海のなかまたち
期間:2010年7月10日(土)~9月26日(金)
場所:上野 国立科学博物館
春に行われた「陸の仲間たち」に続く第二弾。
今回のテーマは「海の仲間たち」。
海洋性ほ乳類がメインの展示です。
海に仲間などいない。
まず、こう大きな声で言う勇気を持とう。
確かに海にも哺乳類はいます。
ですが、あのような生き物に仲間面される謂れはないのです。誇り高くあれホモサピエンス。
私は幼い頃にシロナガスクジラの全身剥製を見てトラウマを植え付けられて以来、奴らを敵視することに決めてます。
ありえないんですよ。全長20メートルにも迫る肉食動物なんて。
しかもそんなのが海中を三次元に泳ぎまわってるなんて。
想像して欲しい。暢気にお船で航海してたら、足元ほんの100メートルくらいのところに10メートル級の肉食獣がいる状況を。
もしもこれが陸上で起きていたら生活どころではありません。まずお互いの誇りをかけて殲滅し合わないと。
そんな心持で行ってきました。
展示は主に大量のクジラ骨格と、アシカ・オットセイの剥製展示。
この企画の第1部にあたる「陸のなかまたち」と基本構成は同じです。
ただ「陸」であった大量のシカの剥製群にあたる展示はなかった。
無理もない。
同じことをクジラでやったら、大の大人でも怖くて泣く。
会場入り口では諸悪の根源たるパキケトゥスや、邪悪の象徴バシロサウルスの展示も。
バシロさんは多分、常設展からの出張組。
何度見てもぞっとします。こんなのが近海に生息している時代に、人類が存在しなくて本当に良かった。
クジラの骨格群。凶悪な牙を生やしてやがります。
歯がないクジラもいますけれど、そいつらは更に危険。
シロナガスクジラなんて、一口で70トンの水を飲み込むとか書いてあった。
そりゃピノキオも食われますよ。
奴ら、その気も何もないまま無造作に全てを食い尽くしやがる。悪意が無いのが逆に腹立たしい。
マッコウクジラの説明が印象深かったです。
[引用]
ダイオウイカなどの大型のイカが生息する深海には酸素があまりなく、俊敏に行動する動物たちはいないという。一方で、マッコウクジラは海面で呼吸し、肺から赤血球(ヘモグロビン)を介して巨大な体内の筋肉中のミオグロビンに酸素を蓄え深海に潜行する。まわりの生物たちが低酸素でゆっくりしか動けないのでマッコウクジラは捕食者としては圧倒的に有利なはずである。
[引用終]
卑怯。
もうその一言しか浮かびません。
法に反しなければ何をやってもいいの精神ですよ。
いたいけなイカたちが低酸素でも頑張ってるのに、この暴虐。恐ろしい生物だ。
その他には、クジラに寄生するクジラジラミやオニフジツボが熱かったです。
むしろクジラ本体よりも熱心にDNA研究等々が力説されてる気配すらした。
「寄生虫のDNAを分析することで宿主の進化形態を調べる」というのは個人的には斬新だった。
確かに化石だけでは調査に限界がある。
特定の生物にしか寄生しない性質を加味すれば、どこでどう分岐したかとか分かるのか。
あとトドがでかかった。
そしてトドとアナグマが近縁だと知って裏切られた気分になった。
アナグマめ…。裏切り者は、こんな近くに。
最後に、展示のラストに掲げられていたメッセージが心に残りました。
[引用]
おわりに
この展示を通じていろいろな海の哺乳類をみてきた。陸での生活に適応したもののなかからなぜかふるさとの海への回帰をめざした彼ら。いわば、もともと海の中の生活にあわせてできていた身体を、陸上仕様への大改造―といっても長い時間をかけた小改造の積み重ねの結果として―を達成し、ようやく陸上で問題なく生活できるようになったところで、またまた海中仕様に再改造、これまた小改造の積み重ねでようやく達成といった歴史が、体内のそこかしこに隠れている。
海に還っていった彼らは、すでにできあがっていた海の生態系の中に割り込んでいかなければならなかった。初期にはいろいろな障害もあったかもしれないが、その新しいニッチに再び適応し、生存競争を勝ち抜いていった。しかし長い時間をかけてせっかく獲得してきた陸上生活への適応を捨て去ってまで海に還らなければならなかった理由は何だったのだろう。生存競争からの消極的な逃避だったのか、生存競争への積極的な挑戦だったのか。
[引用終]
一度は陸に適応しておきながら、海に再び戻るその性根が許せないという人は多数に上るかと思います。私もその一人。
でもこうして書かれると、クジラも苦労してるというか、何かの挑戦者のようにすら見えてきます。
「生存競争からの消極的な逃避」に違いないのに。いたいけなお魚さんを蹂躙してるだけなのに。
それでも同じ哺乳類として、何かを分かり合おうという気持ちが芽生えた気がする。
なんてことだ。特別展、恐るべし。
【蛇足】
シロクマの展示はずるいと思った。
「陸の仲間たち」にも参加なされてたじゃないか。
それなのに「海でも陸でも行けるよ?」とばかりに。
あるいは「海」を毛嫌いする人への緩衝材とばかりに。
シロクマを「海の哺乳類」と言い張るのなら、確かに海にも仲間が、いた。
■大哺乳類展 海のなかまたち
期間:2010年7月10日(土)~9月26日(金)
場所:上野 国立科学博物館
春に行われた「陸の仲間たち」に続く第二弾。
今回のテーマは「海の仲間たち」。
海洋性ほ乳類がメインの展示です。
海に仲間などいない。
まず、こう大きな声で言う勇気を持とう。
確かに海にも哺乳類はいます。
ですが、あのような生き物に仲間面される謂れはないのです。誇り高くあれホモサピエンス。
私は幼い頃にシロナガスクジラの全身剥製を見てトラウマを植え付けられて以来、奴らを敵視することに決めてます。
ありえないんですよ。全長20メートルにも迫る肉食動物なんて。
しかもそんなのが海中を三次元に泳ぎまわってるなんて。
想像して欲しい。暢気にお船で航海してたら、足元ほんの100メートルくらいのところに10メートル級の肉食獣がいる状況を。
もしもこれが陸上で起きていたら生活どころではありません。まずお互いの誇りをかけて殲滅し合わないと。
そんな心持で行ってきました。
展示は主に大量のクジラ骨格と、アシカ・オットセイの剥製展示。
この企画の第1部にあたる「陸のなかまたち」と基本構成は同じです。
ただ「陸」であった大量のシカの剥製群にあたる展示はなかった。
無理もない。
同じことをクジラでやったら、大の大人でも怖くて泣く。
会場入り口では諸悪の根源たるパキケトゥスや、邪悪の象徴バシロサウルスの展示も。
バシロさんは多分、常設展からの出張組。
何度見てもぞっとします。こんなのが近海に生息している時代に、人類が存在しなくて本当に良かった。
クジラの骨格群。凶悪な牙を生やしてやがります。
歯がないクジラもいますけれど、そいつらは更に危険。
シロナガスクジラなんて、一口で70トンの水を飲み込むとか書いてあった。
そりゃピノキオも食われますよ。
奴ら、その気も何もないまま無造作に全てを食い尽くしやがる。悪意が無いのが逆に腹立たしい。
マッコウクジラの説明が印象深かったです。
[引用]
ダイオウイカなどの大型のイカが生息する深海には酸素があまりなく、俊敏に行動する動物たちはいないという。一方で、マッコウクジラは海面で呼吸し、肺から赤血球(ヘモグロビン)を介して巨大な体内の筋肉中のミオグロビンに酸素を蓄え深海に潜行する。まわりの生物たちが低酸素でゆっくりしか動けないのでマッコウクジラは捕食者としては圧倒的に有利なはずである。
[引用終]
卑怯。
もうその一言しか浮かびません。
法に反しなければ何をやってもいいの精神ですよ。
いたいけなイカたちが低酸素でも頑張ってるのに、この暴虐。恐ろしい生物だ。
その他には、クジラに寄生するクジラジラミやオニフジツボが熱かったです。
むしろクジラ本体よりも熱心にDNA研究等々が力説されてる気配すらした。
「寄生虫のDNAを分析することで宿主の進化形態を調べる」というのは個人的には斬新だった。
確かに化石だけでは調査に限界がある。
特定の生物にしか寄生しない性質を加味すれば、どこでどう分岐したかとか分かるのか。
あとトドがでかかった。
そしてトドとアナグマが近縁だと知って裏切られた気分になった。
アナグマめ…。裏切り者は、こんな近くに。
最後に、展示のラストに掲げられていたメッセージが心に残りました。
[引用]
おわりに
この展示を通じていろいろな海の哺乳類をみてきた。陸での生活に適応したもののなかからなぜかふるさとの海への回帰をめざした彼ら。いわば、もともと海の中の生活にあわせてできていた身体を、陸上仕様への大改造―といっても長い時間をかけた小改造の積み重ねの結果として―を達成し、ようやく陸上で問題なく生活できるようになったところで、またまた海中仕様に再改造、これまた小改造の積み重ねでようやく達成といった歴史が、体内のそこかしこに隠れている。
海に還っていった彼らは、すでにできあがっていた海の生態系の中に割り込んでいかなければならなかった。初期にはいろいろな障害もあったかもしれないが、その新しいニッチに再び適応し、生存競争を勝ち抜いていった。しかし長い時間をかけてせっかく獲得してきた陸上生活への適応を捨て去ってまで海に還らなければならなかった理由は何だったのだろう。生存競争からの消極的な逃避だったのか、生存競争への積極的な挑戦だったのか。
[引用終]
一度は陸に適応しておきながら、海に再び戻るその性根が許せないという人は多数に上るかと思います。私もその一人。
でもこうして書かれると、クジラも苦労してるというか、何かの挑戦者のようにすら見えてきます。
「生存競争からの消極的な逃避」に違いないのに。いたいけなお魚さんを蹂躙してるだけなのに。
それでも同じ哺乳類として、何かを分かり合おうという気持ちが芽生えた気がする。
なんてことだ。特別展、恐るべし。
【蛇足】
シロクマの展示はずるいと思った。
「陸の仲間たち」にも参加なされてたじゃないか。
それなのに「海でも陸でも行けるよ?」とばかりに。
あるいは「海」を毛嫌いする人への緩衝材とばかりに。
シロクマを「海の哺乳類」と言い張るのなら、確かに海にも仲間が、いた。