上州の「寅」(44)メロンソーダ
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/11/33/e2bd94663cc7778c0da9fac5bc4388be.jpg)
喫茶店で寅が頼むのは、いつも決まってメロンソーダー。
メロンソーダー以外、頼んだことがない。
母といっしょに初めてカフェへ寄ったとき。
寅の目にいきなり、涼しそうな緑の飲み物が飛び込んできた。
なんだろう?。
サイダーのような液体に、鮮やかな色がついている。
「ママ。シュワシュワしている、あの緑が呑みたい」
「ダメ。あれは身体によくない炭酸飲料です。
それにあの緑色は人工甘味料のかたまり。
どちらもこどもの体によくありません。他のものを頼みなさい」
「身体によくないの?」
「炭酸飲料に子供にひつような栄養ははいっていません。
炭酸は骨を溶かすのよ」
「骨が溶けるの?。でもあの人は呑んでるよ」
「大人は良いの」
「大人になれば呑めるのか。いつになれば呑めるの。ぼくは」
「親から独立した時。
お給料をもらい、ちゃんと生活できたとき。それまでは駄目です」
「自分のお金で呑むならいいの?」
「そういう考え方もあります」
「じゃ僕は貯めたお年玉を使って呑む。それならいいでしょ」
「あなたが働いたお金じゃないでしょ。好意でもらったものは問題外です。
我慢しなさい」
「我慢できない!」
「妙にこだわりますねあなたも。体に良くないのよ。
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喫茶店で寅が頼むのは、いつも決まってメロンソーダー。
メロンソーダー以外、頼んだことがない。
母といっしょに初めてカフェへ寄ったとき。
寅の目にいきなり、涼しそうな緑の飲み物が飛び込んできた。
なんだろう?。
サイダーのような液体に、鮮やかな色がついている。
「ママ。シュワシュワしている、あの緑が呑みたい」
「ダメ。あれは身体によくない炭酸飲料です。
それにあの緑色は人工甘味料のかたまり。
どちらもこどもの体によくありません。他のものを頼みなさい」
「身体によくないの?」
「炭酸飲料に子供にひつような栄養ははいっていません。
炭酸は骨を溶かすのよ」
「骨が溶けるの?。でもあの人は呑んでるよ」
「大人は良いの」
「大人になれば呑めるのか。いつになれば呑めるの。ぼくは」
「親から独立した時。
お給料をもらい、ちゃんと生活できたとき。それまでは駄目です」
「自分のお金で呑むならいいの?」
「そういう考え方もあります」
「じゃ僕は貯めたお年玉を使って呑む。それならいいでしょ」
「あなたが働いたお金じゃないでしょ。好意でもらったものは問題外です。
我慢しなさい」
「我慢できない!」
「妙にこだわりますねあなたも。体に良くないのよ。
それでも呑みたいの?」
「呑みたい!」
「石の橋を叩いても渡らないくせに・・・。
こういうときだけ自己主張しますねぇ、あなたって子は。
負けました。しかたありません。いいでしょ。何事も経験です。
こんかいだけ許可しましょう」
メロンソーダを呑むたび、根負けした母を思い出す。
「こら。寅。聞いてのか。ひとの話を!」
いきなりチャコの怒鳴り声で、寅の意識が現実へ引き戻された。
ここはホームセンター脇にたっているちいさな喫茶店。
巣箱をつくるための買い物を済ませた後、小豆島のさいしょの休日を
寅は、チャコと2人で過ごしている。
(あれ?。チャコが目の前にいる。
なんでチャコと2人でお茶してんだ?。こんなところで俺は・・・)
クスクス笑う声が聞こえてきた。寅があわてて周りを見渡す。
店内にいるのは5~6人。
チャコの怒鳴り声がまわりの好奇の目を集めたようだ。
「あれれ・・・まわりはいったいぼくらを、どんな風に見ているのかな?」
「なに。いきなり?」
「デート中の若いカップル。仲の良い兄妹。
いったいどんな風に観られているのかな・・・」
「どちらも外れ。
どうしたのさ。人が説明しているのに聞きもせずぼう~とうわの空で。
失礼にもほどがあります」
「説明?。なんだっけ・・・いったいなんの話していたんだ?。俺たちは」
「いまさらとぼけないで。
あたしの話をまったく聞いていなかったんだね。あんたって人は」
「だから何の話だ?」
「ユキが金髪になったいきさつ」
「あ・・・」
寅がようやくすべてを思い出した。
(45)へつづく
「呑みたい!」
「石の橋を叩いても渡らないくせに・・・。
こういうときだけ自己主張しますねぇ、あなたって子は。
負けました。しかたありません。いいでしょ。何事も経験です。
こんかいだけ許可しましょう」
メロンソーダを呑むたび、根負けした母を思い出す。
「こら。寅。聞いてのか。ひとの話を!」
いきなりチャコの怒鳴り声で、寅の意識が現実へ引き戻された。
ここはホームセンター脇にたっているちいさな喫茶店。
巣箱をつくるための買い物を済ませた後、小豆島のさいしょの休日を
寅は、チャコと2人で過ごしている。
(あれ?。チャコが目の前にいる。
なんでチャコと2人でお茶してんだ?。こんなところで俺は・・・)
クスクス笑う声が聞こえてきた。寅があわてて周りを見渡す。
店内にいるのは5~6人。
チャコの怒鳴り声がまわりの好奇の目を集めたようだ。
「あれれ・・・まわりはいったいぼくらを、どんな風に見ているのかな?」
「なに。いきなり?」
「デート中の若いカップル。仲の良い兄妹。
いったいどんな風に観られているのかな・・・」
「どちらも外れ。
どうしたのさ。人が説明しているのに聞きもせずぼう~とうわの空で。
失礼にもほどがあります」
「説明?。なんだっけ・・・いったいなんの話していたんだ?。俺たちは」
「いまさらとぼけないで。
あたしの話をまったく聞いていなかったんだね。あんたって人は」
「だから何の話だ?」
「ユキが金髪になったいきさつ」
「あ・・・」
寅がようやくすべてを思い出した。
(45)へつづく
あけましておめでとうございます。
コロナにはじまり、コロナに暮れた2020年。
目に見えない敵とのたたかいはあたらしい章へ突入しました。
でも人は病にぜったい負けません。
なんどもたちあがり、命ある限り、前へむかってすすみます。
暮れに体調を崩しましたが、こんかいもまたここへ戻って来ることが出来ました。
やはり健康はありがたい。
2021年も体調に気を配りながら、ひきつづき創作に励みたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
2021年。元旦 落合順平
コロナにはじまり、コロナに暮れた2020年。
目に見えない敵とのたたかいはあたらしい章へ突入しました。
でも人は病にぜったい負けません。
なんどもたちあがり、命ある限り、前へむかってすすみます。
暮れに体調を崩しましたが、こんかいもまたここへ戻って来ることが出来ました。
やはり健康はありがたい。
2021年も体調に気を配りながら、ひきつづき創作に励みたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
2021年。元旦 落合順平