心臓のドキドキが、空にあがった花火の音よりずっと大きく聞こえた。
まーくんのこんな近くに座ったのは初めてだった。
桜橋近くの河川敷はイモ洗いみたいにごったがえしていたけど、それはそれで緊張をまぎらわしてくれているようでよかった。
花火はわたしたちを楽しませようと、気ぜわしくあがり続けて、色とりどりのサービスをやめることはなかった。
光の輪はちょっと疲れた火薬のにおいを残しながら、華やかな足跡を残していった。
花火は言った。わすれないでね、楽しい夜のこと、まーくんのこと。
わたしは答えた。わすれないよ、楽しい夜のこと、まーくんのこと、花火のこと。