のほほんとしててもいいですか

ソプラノ歌手 佐藤容子のブログです。よろしくお願いいたします!

もし、この道で

2013-07-10 | 『詩・散文』





地下鉄を降りて、階段を上る




汗をふきながら、顔をしかめたサラリーマンが何人も何人も、すれ違いながら吸い込まれていく




地下へ地下へ





大手町駅は複雑だ





この出口も知らない人は知らないだろう






ビルへの道を急ぐ





ゆとりを持って出たはずだが、途中、駅のトイレで化粧を直しているうちに時間が過ぎた








別にそうじゃない




彼に会うかも、と思ったからではない





身だしなみを整えただけだ





半ば、自分に言い聞かせた







昼の時間帯だった





この界隈では名の知れたラーメン屋は、この炎天下の中でも、それなりの行列ができていた





目は、一応、行列の中に彼の姿がないことを確認していた






会ったからと言って、声をかけられるのだろうか




まったく自信がなかった






向こうさえ気づかなければ、身を隠すかもしれない、とさえ、思った





一方、もし会ったら、もう以前の私とは違うのよ、とでもいうように、余裕の笑みを見せようか、とも思った







いやいや、それはないや…










彼の勤め先のビルに差し掛かった







偶然を願いつつ、偶然を願っていなかった








暑さに頭がクラクラしてきた





夏のせいでもあり、彼のせいでもある、と、わけのわからぬ濡れ衣を着せた


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ポッキーからの電話

2013-07-10 | 『詩・散文』



蒸し暑い午後に電話が鳴って






でたら知り合いの犬からだった


ポッキーという美佳の犬






ポッキーは電話口で元気なく感じられた






実は、今日電話したのは、最近歳のせいかずっと調子悪くて、そしてあの風が吹くんだ最近








あの風?
気のせいじゃなくて?
気弱な時はそんな感じがするものよ






気のせいじゃないよ
確かに銀の粉も混じっていたし

怖くなって美佳に言ったけどあまり信じてもらえなかった





そうか…
じゃあ、確かにあの風なのかもね











どうしたらいい?











どうにもできないわ、ポッキーもあたしも美佳も










怖い…








かわいそう…
でも、こうしたらどうかな、目をつぶる









目をつぶってもあの風はわかるよ









うん、でも少なくとも銀の粉は見えないよ








わかった、やってみる









怖かったらいつでも電話して、電話に夢中であの風に気づかないかもしれないし








ポッキーは少し笑った








じゃあ、また








うん、また











電話を切ったら、生ぬるい風が吹いて、黒のワンピースに銀の粉がキラキラとついた








うそっ、わたしにも?












怖かった







自分の心臓の音が聞こえた











でも、やり方はわかっていた












ゆっくりと目をつぶった





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夕方にまた

2013-07-10 | 『絵』描きました







学食でチラッと見かけて




呼び止めたら






あ、夕方にまた

って







そう言って走って行って






夕方どころか







そのあと二度と会うことはなかった













簡単に約束しないで


そう思って泣いた











よいこともやなことも急にくる







あらかじめ相談してくれるなり予約するなり





モラルってものがあってもいい










どうにもならない







どうにかなる









 そういうものかも

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