いつもと違う春に
ただ風の音をきく
いまだけを手に取り
探しているものを確かめた
不確かなそれは、確かに不確かながら、ちいさな光を宿す
ささやかに行きさきを示し、ちいさく頷く
木の下で賢者にであい、古い盃をもらった
ひとしきり雨がふると
盃はこなごなにくだけたが、
あわてて飛び散ると、一部は空に散った
たぶん、と思い、そのうちのひとつに飛びつく
憧憬は終わりなき慟哭に消え、辺りは笑いにつつまれた
多少、羞恥を覚えながらも同調し、拍手した
白みはじめた空にすべては吸い込まれていった