アガサ・クリスティーのミステリを漫画化した!と知ってから、
わくわくして単行本を待っていました。
どんな風に描かれるか興味津々だったのです。
(連載では読んでいなかったので…)
収録作品は、
『チムニーズ館の秘密』(原題同じ)
『追憶のローズマリー』(『忘られぬ死』)
『ソルトクリークの秘密の夏』(『ゼロ時間へ』)の3本。
長編3作が一冊に?
ええっ、コンパクトすぎない?
と思いましたが、上手にまとめられていました。
アリバイの裏付けがどうの、登場人物たちの駆け引きがどうの、
といった細かな部分は少し省かれているのかもしれません。
(断言できないのは、原作の記憶が薄れてしまったから…)
日々老化する頭でかろうじて覚えていた、
読者をミスリードするエピソード、
または真相に迫る証言なども、無かったりしました…。
その代わり、シンプルで読みやすいです。
おそらく謎解きが主眼ではないのでしょう。
選ばれた原作も…トリッキーな感じがしないし。
どちらかといえば、淡々としたスリラー風の持ち味、
それぞれの思惑が交錯した人間ドラマ、という印象があります。
と言う訳で漫画のほうも、“事件”そのものより、
渦中の“人々”を丁寧に描いているような気がしました。
(始めは不条理な存在だったローズマリーも、
あ~、こういう人だったんだね~、と思えてくる)
舞台になっている、20世紀前半の空気も素敵ですね。
時間の流れが今とは違うような、優雅さと余裕。
クラシカルで洗練されているファッション。
悪女も淑女も、詐欺師も快男児も、
泳ぐように上流社会を渡っているのだわ。( ̄▽ ̄)。o0○
なんだかロマンチック~。
クリスティー物の映像化やアレンジには、
厳しいことも言う(おうちでね)わたくしですが、
この作品の場合は…
例えば、独特の歌い方をする歌手がいて、
誰かの名曲をカヴァーしたんだけど、
それはその人らしい歌になってしまっている。
だから「イメージ違うんだよ」という声も上がるけれど、
自分はその雰囲気も好きだな、というような感じなんです。
回りくどい(笑)。
端的に言えば「それはそれとして」ということなの。ヽ(´ー`)ノ
欲張っちゃうと。小説世界では別の作品にも登場する
バンドル(『七つの時計』)と、
レイス大佐(『茶色の服の男』等)が、
もっと目立って格好良くてもよかったなぁ。
原作ファンがふふっ、て楽しめるじゃない?
『チムニーズ館の秘密』榛野なな恵
原作アガサ・クリスティー 集英社 2006
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