本棚7個じゃ足りません!

引っ越しのたびに蔵書の山に悩む主婦…
最近は二匹の猫の話題ばかりです

いまこそ『るきさん』

2006年01月27日 | マンガ
 連日テレビで取り上げられていますが、誰しもライブドア事件には思うところがあるのではないでしょうか。論じればきりが無いですが、物質主義の危うさに、今更ながら気づかされます。

 また、最近使われる「勝ち組・負け組」「負け犬」という言葉。何を基準にしているのか曖昧で変だ、と思うから、それに囚われている人間への皮肉としてしか用いませんが(世間で言われているいわゆる勝ち組っていうの?という認識で)。比較対象は人によって異なるもの。マスコミは今後、厳密にこれこれを基準として判断すると、この人は勝ち組である、と前置きをして発言すべきじゃないでしょうか。(話がそれますが、セレブという言葉も乱発しすぎ!もはや有難みが無いっ)

 はあ…文化人ぶったおじさんぽいことを言ってしまった。わたくしも年です。。。

 つまり、お金さえあればなんでもできるとか、がんがん金儲けしてると勝ち組だとか、独身で子供がいない女性が負け犬と自称するとか、そういうのは好きではない、ということが言いたかったのです。自分で思い込む分にはまだ構いませんが、社会共通の価値観になるのが怖い。だからマスコミにはただ流行の言葉だからといって飛びつかないで欲しい、ということ。まとめてみると平凡な考えです。

 改めて自分を顧みると、“あるがまま自然にいきる”ことが永遠のテーマになっているような気がします。自分を受け入れ、流れのままに、生きること。難しいです。だから、決め付けっぽい言葉に反発してしまうのかも。多様な価値観の共存が民主主義社会の基本なんだから、誰が声高に叫ぼうと、どうでもいいコトなんですが。未熟だからさ。

『るきさん』高野文子 筑摩書房 1996

 さて。あるがままマイペースを保っている主人公のるきさん、好きです。

 るきさんは都会の独身一人暮らし。仕事は自宅でする保険の請求。生活は質素だが楽しみは多い。ほっそり美人なのにさほどお洒落でもなくて、色恋とは縁が無さそう。一ヶ月かかる仕事を一週間で(こっそり)片付けて、あとはのんびり暮らす。趣味は読書と切手収集。肩に力を入れず我が道を行く感じがとてもいい。

 えっちゃんというキャリアウーマンの友達がいて、彼女は普通にブランド物も好きだし、流行にもついていく。一見てきぱきしたしっかり者だけど、後輩に純情な恋をしたりする。浮世離れしたるきさんとは対照的ながら良いコンビ。

 この二人の友情がまた、べたべたしてなくていいのです。お互いに病気になれば看病に行くような間柄だけど、それぞれの違いを認め合ったうえでの付き合いというか。その辺は解説の氷室冴子が詳しく書いていますが。

 バブル時代に連載が始まったらしいこの漫画、登場が早すぎたのか時代を超えているのかナゾです。スローな暮らしが注目されている今こそ、気軽に読んで楽しんだらいいんじゃないかなあ。るきさんてホント無理してないし、充分自分に満足してるように見えるんだよね。荒稼ぎするのも、他人と自分を比べてばかりいるのも、虚しいって気づかせてくれる。ちょっと理想の女の人です。