
先手番大山先生の次の手は?
☆ 今日の棋譜20171028
昭和57年10月、米長邦雄先生と第9回名将戦です。
途中でこの将棋は見たことがあるなあ、と思ったら、逆転のテクニックに出ていました。詳しくはそちらを。

大山先生の四間飛車に米長先生は中央位取りです。

4筋の歩を交換するところは昨日の二上戦と似ています。

大山先生は石田流に組み替えて

米長先生は左美濃に。米長先生も終盤型ですが、玉を堅くというよりは厚く構えることが多いです。

大山先生は持ち歩があるので8筋の逆襲を狙えます。

米長先生は端桂や角で8筋の突破をけん制します。75歩を守ってもらえれば良いのですが、75角では76飛74歩で質駒になってしまうのが悩みの種です。

8筋は守り切れなくて、51飛と転回します。桂頭の嫌味をついて角を呼んで

33角から55銀と調子が良さそうですが

53歩と打たれてさばききれず、銀は下がります。

角をぶつけて勝負しました。

角交換で打たれるのですが

自玉は堅いので53飛と歩を払い、また桂頭の嫌味を突きました。

8筋はどうしようもないので36の地点を中心に嫌味をついていくしかありません。

でも桂馬を取られては悪いです。

大山先生は駒得になったので自陣飛車を打って完封しようとしています。ここでどう指しますか?(ここで本に書いてあったなあと気が付きました。)

46歩から角を切り、78の角も切ってしまいます。

かなり駒損ですが、その金銀を打って、厚みを主張します。これを自慢していました。
大山先生は桂頭に嫌味があるので、飛車を見捨てて寄せ合いに出ます。

44桂で金を剥がし、飛車を取らせて

先手で飛を成って香を取りました。米長先生の方は歩を打つだけで後手を引いているのですが、玉が堅くなりました。

大山先生は85角と打って銀取りを受けさせて63角成が狙いでした。でも歩を取り込まれて失敗です。桂頭を守っておく(金を打つ)か35歩と取ってしまうか(後手は歩切れです)が有力手でした。

こういう香打も攻防ではありますが、米長先生が少し良くなっています。

飛を打たれれば角打ちで返し、激しい攻防は続きます。

飛を切っての68角に53飛が疑問手になってしまいました。代わる手も難しいのですが。

というのはここで51飛成を決行できず、36銀と打ってからの難しいやり取りから

銀金と打ちあって

田楽刺しから

角を取らずに銀打とか米長先生の好手があり

角は逃げたものの、52金打で大駒を渡すことになったから。53飛が疑問手だという説明に間がかなりあるのですが、どこかで飛を追われるだけになったということなのです。

57飛成は76馬の金取りで返されて

馬を切って竜を使って、と大山先生も最善を尽くしています。

米長先生は角を手持ちにしているので、馬を切って寄せに入ります。

66角に大山先生は逆転狙いの角打ちですが

35歩と受けられては不発です。あとは粘りに行くのですが

米長先生は銀を捨てて竜を取り

飛を打ち

上から押さえつければもう一息。

銀角と取れば攻め駒は4枚に戻り

ここに桂を打つのが良い手なんですね。

投了図。
大山米長戦は名局が多いのですが、これも良い将棋です。実戦集ではない本に米長先生が解説していたのも納得です。図面を多めにしましたが、繰り返し並べてみても得るものが多いと思います。
#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.31 棋譜ファイル ----
手合割:平手
先手:大山王将
後手:米長邦雄棋王
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 3四歩(33)
3 6六歩(67)
4 6二銀(71)
5 7八銀(79)
6 8四歩(83)
7 6八飛(28)
8 4二玉(51)
9 4八玉(59)
10 3二玉(42)
11 3八玉(48)
12 5二金(61)
13 2八玉(38)
14 1四歩(13)
15 1六歩(17)
16 5四歩(53)
17 3八銀(39)
18 5三銀(62)
19 6七銀(78)
20 5五歩(54)
21 5八金(69)
22 5四銀(53)
23 7五歩(76)
24 8五歩(84)
25 7七角(88)
26 4四歩(43)
27 4六歩(47)
28 4五歩(44)
29 同 歩(46)
30 同 銀(54)
31 7八飛(68)
32 9四歩(93)
33 6八角(77)
34 8四飛(82)
35 7六飛(78)
36 3三角(22)
37 7七桂(89)
38 2二玉(32)
39 6五歩(66)
40 3二銀(31)
41 3六歩(37)
42 4三金(52)
43 3七桂(29)
44 5四銀(45)
45 8六歩(87)
46 9三桂(81)
47 9六歩(97)
48 8六歩(85)
49 8五歩打
50 8一飛(84)
51 8六飛(76)
52 4二角(33)
53 5六歩(57)
54 同 歩(55)
55 同 銀(67)
56 5一飛(81)
57 8四歩(85)
58 3五歩(34)
59 同 角(68)
60 3三角(42)
61 6七金(58)
62 5五銀(54)
63 5三歩打
64 4四銀(55)
65 6八角(35)
66 2四角(33)
67 4五歩打
68 3三銀(44)
69 2四角(68)
70 同 歩(23)
71 6二角打
72 5三飛(51)
73 8三歩成(84)
74 3五歩打
75 5三角成(62)
76 同 金(43)
77 4七銀(56)
78 4六歩打
79 同 飛(86)
80 5五角打
81 5六飛(46)
82 5四金(53)
83 9三と(83)
84 7八角打
85 5七飛打
86 4六歩打
87 同 銀(47)
88 同 角(55)
89 同 飛(56)
90 6七角成(78)
91 同 飛(57)
92 5五金打
93 8六飛(46)
94 5六銀打
95 4四桂打
96 同 金(54)
97 同 歩(45)
98 6七銀(56)
99 4三歩成(44)
100 同 銀(32)
101 8二飛成(86)
102 4二歩打
103 9一龍(82)
104 5一歩打
105 8五角打
106 3六歩(35)
107 6七角(85)
108 3七歩成(36)
109 同 銀(38)
110 4五桂打
111 3八香打
112 4七飛打
113 5八角打
114 6七飛成(47)
115 同 角(58)
116 6八角打
117 5三飛打
118 7七角成(68)
119 5八角(67)
120 3七桂成(45)
121 同 香(38)
122 4五金(55)
123 3六銀打
124 同 金(45)
125 同 角(58)
126 4六銀打
127 4七金打
128 3七銀成(46)
129 同 金(47)
130 3四香打
131 4六銀打
132 3五銀打
133 同 銀(46)
134 同 香(34)
135 4六銀打
136 3四銀打
137 6三角成(36)
138 3七香成(35)
139 同 銀(46)
140 5二金打
141 5七飛成(53)
142 7六馬(77)
143 5二馬(63)
144 同 金(41)
145 4六龍(57)
146 4九馬(76)
147 同 龍(46)
148 2五桂打
149 3八歩打
150 6六角打
151 6七角打
152 3五歩打
153 5六金打
154 3七桂成(25)
155 同 歩(38)
156 4八銀打
157 3八龍(49)
158 3九銀(48)
159 同 龍(38)
160 同 角成(66)
161 同 玉(28)
162 4七飛打
163 5七銀打
164 3七飛成(47)
165 4九玉(39)
166 4七金打
167 3九香打
168 5七金(47)
169 3七香(39)
170 6七金(57)
171 4八金打
172 4四桂打
173 5七金(56)
174 同 金(67)
175 同 金(48)
176 5六銀打
177 5八玉(49)
178 8五角打
179 投了
まで178手で後手の勝ち
20171028今日の一手
7月16日の名南将棋大会から、OさんとIさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。
一昨日の一手の回答
☆ 形勢判断をします。
金歩歩と角の交換で と金と成銀を作り合っています。やや先手の駒得ですが終盤ですし損得なしくらいに思っておけばよいです。
玉の堅さは後手のほうが堅いです。
先手の攻め駒は26角と持ち駒飛銀桂で4枚。
後手の攻め駒は75桂と持ち駒飛金で3枚。49成銀を入れれば4枚です。
総合すれば互角です。
☆ 大局観として
一応は先手の駒得なので長期戦を考えても良いのですが、互いに攻め駒が多いので寄せ合いを考えます。
49成銀がそっぽに行った(もとは先手41飛、後手49飛47成銀の形で58成銀49飛成同成銀となったのが問題図)ところなので、後手の攻めが遅くなった(問題図だけ見れば遅い)というチャンスです。
後手のねらいとしては28飛~67金くらい。現状は4手すきくらいですから、それよりも早く後手玉に迫れば良いです。攻め駒が豊富なので自然な寄せを考えましょう。
× 受ける手を見ておくと、76歩は87桂成
でどちらで取っても王手角取りに打たれます。まだ先手不利というほどでもないかもしれませんが、失敗でしょう。
△ 68銀と打てば
先手玉が堅くなり、29飛44角19飛成11角成
で長い戦いです。歩を入手すれば確実に駒得ですから、先手が悪いということはありません。
○ 実戦は41飛で、成銀取りなので自然な手です。しかし29飛に61銀
というのは重くて不自然な手でした。26飛成72銀成同金61銀71銀72銀成同銀71金62金
金銀を打ったり埋めたりでここまで進みました。86桂85銀を利かせて72金同金61角成としたのですが86銀
桂馬を食いちぎられて先手玉は詰めろ。後手玉は詰みません。86歩と取り返しても先手玉は詰みで負けました。二人掛かりで先手玉を寄せたようなもので、良さそうに見えた86桂が悪手でした。
先手の工夫はいくつかあって、86桂を打たなければ61角成に81金くらい。
これは形勢不明です。
もう少し戻って72金ではなくて51飛成
ならば受けにくいので先手有利。
後手はこれを避けて61銀に銀を打たずに71金
と引いてどうだったか。
61銀ではなく81銀なら62金寄
というのも寄せにくそうです。
もっと戻って、61銀ではなく52角成が自然な手です。62金打
で馬を逃げるのではなあ、と見送ってしまいそうなのですが、62同馬同金引86桂
馬を切れば攻めに調子が出てきます。この桂馬がかなり厳しくて、63金なら94桂同香91銀
で寄り筋です。
後手は角を打つしかなく
76銀と打てば結局(63銀85銀同桂)94桂が実現します。
後手としては62金打が無効なら26飛成
くらいしかないのですが、55桂62金打63桂成同金93金
で寄り筋です。
○ 2段目から打つのもありまして、42飛
か22飛か。(後手にどこかで41歩を打たれたら22飛成です。)29飛に45角
と使います。(これが気が付きにくい手なのですが。)54歩は同角同金71角成、54金も同角ですね。62金引には86桂63金打51銀
戻って62金打には55桂
どれも先手が十分です。
○ 飛を打たずに43角成もあります。
これは28飛に53馬同金同角成
と26角を攻め駒にしようという意味でした。71馬同玉51飛は寄り筋ですから、62金打に同馬同金31飛
41飛と打って王手飛車を食らわなければよいでしょう。角しかないので受けにくいです。
△ 52銀は少し重くて
62金引に86桂84金43角成
後手に駒を使わせてゆっくり攻める感じで指します。52銀が質駒なのは嫌なのですが、86桂がかなり厳しいので考えてもよいです。
○ 先に86桂というのもあって
28飛なら53角成同金74桂92玉51飛
という寄せ方です。この図では後手がうまく守ることができません。(81玉と逃げていても51飛です。)
86桂に84金と守られたらかなりの利かしで、52角成には(53角成を防いで)62金上くらい。
51飛52金71銀
81玉52飛成71玉53角成
と寄せます。
△ 55桂は
62金引22飛28飛63銀
という攻め方ですが、千日手模様に粘られて寄せきれるかどうか。
☆ まとめ
相手玉を寄せる時には自然な寄せを考えたいです。もっとも最初は自然な手(駒を取る手、自分の駒の働きを良くする手)を考えますが、どこかで駒を捨てるとか切るとかの不自然な手が入ることになります。一見は駒損でも相手玉の囲いを弱体化するための駒損です。これがきれいに決まれば寄り筋になります。
この場合は符号でいうと
飛を打って敵玉をにらむ41飛や42飛(あるいは22飛)
34角を攻めに使う43角成や52角成や45角が自然な寄せ方です。
大駒の場合は手駒よりも盤上で敵玉をにらんでいるほうが働いているということがあります。
端もにらんでの86桂とか、単純に駒得を狙う55桂も打ったほうが得な感じです。
(桂馬は直接の王手がないのならば一度打っておいてから跳ねる手が有効かも。ただし実戦のように銀を渡して86桂85銀という形は危険でした。)
これらが自分の駒の働きを良くする手です。
銀を打って金を剥がすというのもやや有効ですが、後手は金を手持ちにしているということもあり、それだけでは決定打にはなりません。
中盤なら駒を取る11と も良いのかもしれませんが、香の使い道があればともかく、今は攻め駒が十分にあるので考えません。23角成と歩を取るのも同じことですね。
そのあとはなるべく自然な手を心がけながらも、大駒で金銀を取る手は成立しないかというのを考えます。駒損でも囲いを薄くしてしまえば好手になるかもしれませんから。
問題図では後手の美濃囲いが崩れていて、71金の形だというのが背景にありました。7筋が壁ですから端攻めに弱いですし、71金にひもがついていないので飛や角で切って(取って)しまう手が出やすいです。金の位置によって堅さに差がありました。