今日の棋譜20200412
昭和21年11月、荒巻三之先生と第1期順位戦です。
大山先生がが中央の位を取り
2筋は金で守り
横歩を取られたら中飛車にする、この将棋が流行ったことがあります。私のいい加減な記憶では、この期に名人に挑戦した塚田正夫先生が木村義雄名人を破った将棋にもあったはず。24飛56歩と進めば乱戦です。
それはともかく平手で大山先生が飛を振った初めての将棋です。
荒巻先生はおとなしく36飛として56歩に備えて、44角(26飛を防いだ)には75歩
33金(22飛を見せた)には27歩。これで想像がつきますね。
玉は右に囲って
石田流に。たまに横歩取りの将棋が相振り飛車みたいになるのですが、これはほとんど相振り飛車です。1歩得で金無双石田流にできた荒巻先生の作戦勝ちです。
大山先生の主張は中央の位ですが、まだ戦前の感覚だという感じがします。玉を固める方を優先すべきでしょう。
荒巻先生は74歩、65歩、56歩、どれを/どれから突くかという選択肢があり、どれも有力なのです。
56歩同歩65歩。これは65同歩56銀55歩65銀と攻めるのが理想です。
大山先生は素直に応じては受けきれないと見て、46歩同歩15歩、先手玉に嫌味を作りに行きました。
17歩の形にして33桂。一応端は手になります。ただ後手陣が受けきれなさそうなのですが。
荒巻先生は56銀~47銀、4筋の嫌味をカバーして玉を固めます。あとは飛角桂だけで攻めきれるかどうか。
△65歩に74歩で決戦です。74歩では56歩同歩同銀とするのもありました。
大山先生は角を交換して打ち直します。荒巻先生は73歩成同銀85桂84銀86歩というのが自然な攻め方(で有利)ですが
73歩成同銀はいいとして、角を合わせるのはちょっと損です。86同角同飛というのもパッとしませんが
64銀と出られて75歩があり、忙しくなりました。73歩も取ってはもらえず
懐に入る74飛にも75歩。飛の詰めろです。
66歩同歩65歩、これで飛は助かりそうですね。
飛角交換ならば良いでしょう。
大山先生は74歩を打って角交換し、
67歩成と16香ねらいの角を打ちます。
香をとっても普通に27銀のほうが嫌だっと思いますが、角を合わせられたので
角を交換して両取りに打ち、歩切れではありますが、駒得だという主張はできました。
でも駒得は味が悪いものです。歩切れなので香を打って6筋を守るしかありませんし、65桂(か85桂)が馬銀取りになるのです。
荒巻先生は53歩(53同金に65桂がより厳しい)、98馬(馬取りになるのを避けた)52角。52同飛同歩成同玉はまだ難しいかと思えば
大山先生は71玉と逃げたので荒巻先生は63歩成。ここは41角成~52歩成のほうが確実でした。
63同香同角成(同飛成もありそう)、こう指したくなるのもわかります。大山先生は63同銀では負けでしょうから65香を打ち
54馬同金66歩。ちょっと紛れてきたかもしれません。
でも左桂で65香を取られては、まだまだ悪いです。
65同金同歩35桂というのはその左桂をあっさりさばかせたのですから、攻めているようでも形勢は良くならないです。
36銀打ちに銀を手に入れて66歩。この飛に活躍されては勝てませんから
馬の力で抑え込んでいければ、というところです。
荒巻先生の77桂はともかく、36香というのに違和感があります。攻防のようで悪い形が残りますから。
35歩には65金43馬35香。後手は歩切れですから駒損というほどでもなく、玉も堅いのでやはり先手有利です。
大山先生は16銀36銀左15香、端から嫌味を作っておきます。荒巻先生としては55飛が自然で十分でしたが
52歩成同飛33香成というのはおかしな手順です。後手の33桂をさばかせたわけで
16銀を取ったら(16同馬を嫌ったという手順でした)香を打たれてしまいました。こうなれば56同飛同歩63銀で寄せるくらいでないとおかしいと思うのですが
47飛58香成同金67歩成同金56歩。飛は渡さないけれど、先手玉が薄くなりました。5筋を受けて16銀を取られたら形勢不明なので
63銀で攻めるのは妥当です。大山先生は48歩。48同玉も同飛も5筋攻めが厳しくなります。
これを無視して52銀不成は先手の寄せ合い勝ちに見えます。
荒巻先生は27銀右、銀取りを防いで守るのも悪くはなさそうですが。49角。この逃げ方を間違えました。
28玉は63銀を取っての19銀から
詰んでしまうのです。大山先生のうっちゃり勝ちでした。
荒巻先生は152手のうち144手まではおおよそ有利だったと思います。最善は逃しているようなところがありますが、それでも最後に間違えてしまうとは。
大山先生はこの将棋をどこまで悪いと思っていたのでしょうか。受けに徹していないのは、なんとかなると楽観していたのか、あまりに悪いから将来の形作りを見据えたものだったか。この後にも相振り飛車の将棋をほとんど指さないのは、攻めと受けのバランス、タイミングがわからないからのでしょう。
相居飛車でも攻め合いの将棋は少ないのではないかと想像するのですが、自分から攻めるのは得意ではなく、受けている方が力を発揮します。
#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.41 棋譜ファイル ----
開始日時:1946/11/06
手合割:平手
先手:荒巻三之6段
後手:大山6段
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 3四歩(33)
3 2六歩(27)
4 5四歩(53)
5 2五歩(26)
6 5五歩(54)
7 2四歩(25)
8 同 歩(23)
9 同 飛(28)
10 3二金(41)
11 3四飛(24)
12 5二飛(82)
13 3六飛(34)
14 4四角(22)
15 7五歩(76)
16 3三金(32)
17 2七歩打
18 7二金(61)
19 4八玉(59)
20 6一玉(51)
21 3八玉(48)
22 6二銀(71)
23 9六歩(97)
24 9四歩(93)
25 4八金(49)
26 4二銀(31)
27 6八銀(79)
28 5三銀(42)
29 7七桂(89)
30 1四歩(13)
31 1六歩(17)
32 3二飛(52)
33 5八金(69)
34 6四歩(63)
35 2八銀(39)
36 5四銀(53)
37 7六飛(36)
38 5三角(44)
39 9七角(88)
40 4四歩(43)
41 6六歩(67)
42 4三金(33)
43 6七銀(68)
44 4五歩(44)
45 5六歩(57)
46 同 歩(55)
47 6五歩(66)
48 4六歩(45)
49 同 歩(47)
50 1五歩(14)
51 同 歩(16)
52 1七歩打
53 同 香(19)
54 3三桂(21)
55 5六銀(67)
56 5五歩打
57 4七銀(56)
58 6五歩(64)
59 7四歩(75)
60 9七角成(53)
61 同 香(99)
62 5三角打
63 7三歩成(74)
64 同 銀(62)
65 8六角打
66 6四銀(73)
67 7三歩打
68 8二金(72)
69 7四飛(76)
70 7五歩打
71 6六歩打
72 同 歩(65)
73 6五歩打
74 7三銀(64)
75 7五飛(74)
76 7四歩打
77 7六飛(75)
78 8六角(53)
79 同 歩(87)
80 1六歩打
81 同 香(17)
82 2六歩打
83 同 歩(27)
84 3四角打
85 6六飛(76)
86 1六角(34)
87 2七角打
88 同 角成(16)
89 同 銀(28)
90 8八角打
91 6七飛(66)
92 9七角成(88)
93 6四歩(65)
94 6二香打
95 5三歩打
96 9八馬(97)
97 5二角打
98 7一玉(61)
99 6三歩成(64)
100 同 香(62)
101 同 角成(52)
102 6五香打
103 5四馬(63)
104 同 金(43)
105 6六歩打
106 7六馬(98)
107 6五桂(77)
108 同 金(54)
109 同 歩(66)
110 3五桂打
111 3六銀打
112 2七桂成(35)
113 同 銀(36)
114 6六歩打
115 5七飛(67)
116 6五馬(76)
117 7七桂打
118 5四馬(65)
119 3六香打
120 3五歩打
121 6五金打
122 4三馬(54)
123 6四歩打
124 7二金(82)
125 3五香(36)
126 1六銀打
127 3六銀(47)
128 1五香(11)
129 5二歩成(53)
130 同 飛(32)
131 3三香成(35)
132 同 馬(43)
133 1六銀(27)
134 5六香打
135 4七飛(57)
136 5八香成(56)
137 同 金(48)
138 6七歩成(66)
139 同 金(58)
140 5六歩(55)
141 6三銀打
142 4八歩打
143 2七銀(16)
144 4九角打
145 2八玉(38)
146 6三金(72)
147 同 歩成(64)
148 1九銀打
149 3九玉(28)
150 3八歩打
151 同 銀(27)
152 2八金打
153 投了
まで152手で後手の勝ち