バスde温泉

バスで行く温泉旅日記

古総湯@山代温泉

2019-10-30 09:56:56 | 温泉(石川県)
大袈裟な言い方かもしれないが、温泉は生命を育むための地球が生み出した恵みです。この日本は温泉に恵まれた故、古来よりそこに生命が宿るとともに、動物や人が集まり、その源泉を中心に街を形成し、そして独自の温泉文化を創り出してきました。


関西から特急サンダーバードで約2時間、そして加賀温泉駅からさらに路線バスで30分ほどのところ。1300年の歴史を誇る山代温泉は、加賀温泉郷の一角を占め、和倉、山中、片山津と並ぶ県下有数の温泉です。


ここでは温泉街の真ん中に総湯と呼ばれる共同浴場が建ち、それを中心にして旅館や商店が立ち並ぶ「湯の曲輪」という街並みが形成されてきた様を目の当たりにすることができます。


そしてここでは、多くの文人墨客を集める独自の文化を育んできました。大きな旅館が立ち並ぶなか、ところどころ雰囲気のいいお店や、和装のきれいどころの女性がそぞろ歩くなど、しっとりとした温泉情緒に満ち溢れています。


この山代温泉では、バブル崩壊以降の不況や世の中のニーズの変化によって、宿泊客が急減し、最盛期には50軒以上を数えた宿泊施設はほぼ半減してしまいました。そこで、歓楽温泉のイメージを脱却し、総湯を核として歴史的価値を重点に置いた振興を施そうとしています。


その序章が伝統的な造りの建屋に茶店や加賀特産品のショップを配した交流スペース「はづちを楽堂」の整備。次に老朽化した旧総湯の移設。


そして最終章として、旧総湯があった位置に明治代の総湯を復元し、外観や内装だけでなく、入浴しながら温泉の歴史や文化が楽しめる「体験型温泉博物館」として2009年にオープンしたのがこの「古総湯」です。


木造2層の建物は、上層が釉薬瓦葺き、下層がこけら葺きの、金閣寺のようなシルエットで、ところどころにステンドグラスの色彩が施された白木の美しい華やかな造り。新しくて綺麗ではあるが、風格を得るにはこれから数年はかかるでしょう。


オープンと同時、早朝6時過ぎに訪問。あわただしく雪かきをしていた係の女性に入浴したい旨を伝えると、丁寧にも入り口まで案内し、さらに浴場についての説明とともに、脱衣籠を貸してくれたり、靴下が濡れないよう気遣ってくれたり…かなり親切。


しかもこの日の一番湯なので特典のお札をくださったり…意外なプレゼントはうれしいですね。


浴場には独立した脱衣室はなく、湯槽の脇に脱衣棚が設けられているプリミティブなスタイル。これは別府温泉の共同湯でもこんなのでした。荷物棚は鍵が無いので貴重品がある場合は浴場に入る前に、入り口近くの貴重品ロッカーに預けておく必要があります。


浴場の真ん中に凝灰岩でできた長方形の湯槽がひとつ、その手前に白いタイルで囲われたかけ湯枡に源泉が投入され、そこから湯槽に流れ込むようになっています。源泉だけに、このかけ湯枡は熱すぎて使えません。


また、お湯や水のカランは無く、ましてや混合水栓のシャワーなんかもありません。ここはあくまでも古の湯浴みを体感するところ、なのでシャンプーや石鹸は禁止です。


お湯はやや熱めなのは一番湯だからかな?澄明で匂いも味も感じない淡白なお湯です。山代温泉新1号源泉は源泉のところでいったんタンクに貯められてるので、若干の劣化があるようです。源泉の足湯では濃厚なお湯だったんやが…


ゆったりお湯を味わった後は、上階の休憩室でほっこりすることができます。無料のお茶をいただきながら、総湯の周りの風景を楽しむことができるかと…残念ながらこの時間はまだ真っ暗でした。


山代の起爆剤となろうこの温泉、あと数年たって風格が備わってくれば、道後の温泉にも負けない名所になるかもしれませんね。

・場所:加賀温泉バス・山代温泉BS
・泉質:ナトリウム・カルシウム‐硫酸塩泉 低張性・弱アルカリ性高温泉 64.3度
・訪問日:2014年1月19日


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