山陰本線・江津駅より石見交通バス有福線で30分ほど、およそ1300年前の開湯以後、湯治場として栄えた有福温泉は、石段が入り組む山峡の斜面に旅館や民家、共同湯が建ち並ぶその景観から「山陰の伊香保」とも呼ばれています。
実に鄙びた、時が止まったかのようなこの温泉街には、9軒の小規模な旅館とともに、3箇所の共同浴場があります。
そのうちのひとつ、斜面の上方に、小さな温泉街に似合わぬほどの立派な建物が、この温泉のアイコンと言っていい有福を代表する共同湯、御前湯です。
実にレトロなこの共同湯が建てられたのは昭和初期とのことで、今でこそひっそり佇んでいるが、建設当時はかなり賑わっていたとのことです。
番台で300円を支払って中に入るのだが、この番台もレトロだ。じっと時代を見つめ続けてきた矍鑠とした存在感がありますね。
浴室に入ってみると、室内は古さこそ感じるが、手入れが行き届いていて意外なほど清潔です。中央に設えられた浴槽の、その真ん中から清澄な湯がこんこんと沸いて出ています。
ここの湯は無味無臭なアルカリ性の単純泉。シルクのような淡白な感触で、個性は希薄だが、肌触りがしっとりしている、いわゆる美人の湯といった感じです。
この建物の2階は休憩室なのだが、実質は昔の写真のギャラリーとなっています。当時の温泉街には人がいっぱいで、艶やかな芸妓が華を添えている…当時の栄華がしのばれますね。
当時のように賑わいを取り戻してほしいと思う反面、この静寂のままでいてほしいとも思ったりもします。
・場所:石見交通、広島電鉄(高速バス)・有福温泉BS
・泉質:アルカリ性単純温泉 45.5℃
・訪問日:2009年4月12日
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