一般的に、白浜って軽薄なイメージがあって、団体旅行のオヤジやオバハンたちがいく所と、永い間その程度の認識でした。
確かに駅の旅行カタログスタンドにささっている白浜温泉のパンフレットには、いかにもって感じの巨大ホテルと、パンダやイルカが表紙を飾っている。
しかしこの辺りの温泉は意外にも優れた泉質なのです。
大阪から白浜へはJRの特急くろしおを使うのが一般的だが、このところ急激に乗客を増やしているのが明光バスと西日本JRバスとの共同運航の高速バスです。
この路線、利用好調により大増発され、ほぼ2時間おきに発着していて所要は3時間チョット。
しかも片道2700円と実に格安で、これなら気軽に白浜の湯を楽しむことができます。
大阪・難波のバスターミナル、OCATでバスを待っていると西日本JRバスの新型のセレガが現れました。
8時20分発のこの便は満席で、しかも、2台続行とのこと。
日野自動車のセレガは、2005年にいすゞ自動車と共同開発した車で、いすゞではガーラとして若干のデザインを変えて販売している車です。
新しいだけあって室内デザインも洗練されているが、バスが阪神高速に入ると、そのパワーを実感することができました。加速が実にいい。
ただ、シートもサスペンションも堅めに設定しているようで、高速道路のジョイントがゴツゴツと響いてくる。
乗り心地より走りを重視しているようです。
阪神高速湾岸線で港大橋を渡ると、ここからしばらくは大阪湾を望みながらの快適クルージング。
阪和自動車道の現在の終点、田辺で高速を降り、田辺の市街地を経由して白浜へ向かいます。
白浜では家族連れやカップルや若いグループばっかりで、おっさん独り、なんだか居心地が悪い。それでもめげずに共同湯めぐりを敢行します。腰にタオルをぶら下げて…
白浜温泉の中心、白浜バスセンターから明光バスの椿温泉行きに乗りました。
バスは日野のレインボー。
このバスセンターから白浜駅を経て国道42号線を南下します。
車窓には紀州灘が美しいが、結構なスピードなのでしっかり掴ってないと飛ばされそうになる。
前方に旅館街が見えてくると椿温泉です。
バスを降り、国道に沿った温泉街を歩くが人がいなく、どことなくひっそりとしている。
しかも、温泉街から少し離れたところにバブル期の遺物、高層リゾートマンションが建っていて景観を壊しています。
廃墟かと思いきや、そこそこ人は住んでいるようです。
ここなら毎日温泉に浸かれる余裕の生活。ワタシもリタイヤ後はこんなライフスタイルもいいかも。
さらに歩くこと約10分、地中海風ファサードの旅館が現れました。ここが関西屈指の名湯の宿、富貴です。
よく見るといささか年季の入った建物であるのが解るし、地中海風なのはファサードだけ。
しかもそのファサードには和風な書体で富貴と看板が掲げられている。なんだかチグハクやなあ。
案内されて部屋に通されるのだが、廊下を歩くとギシギシ響くし、襖のシミも古臭く感じるし…はっきりいって、マイナスポイントばっかり。
それなのにまたまた来てしまいました。ここには、と、実に心地いい温泉があるからです。
客室は純和風ではあるものの、ヨーロッパの町並みを描いたリトグラフが飾られていて、ここでもチグハグ。
それでも、窓を開けると潮騒が響ぎ、遠くに貨物船が往来する。
これまでのマイナスポイントを大逆転させるほどの、見事なオーシャンビューです。
白味噌仕立ての鍋が濃厚で旨い程度かな。
オバチャンが一人だけで甲斐甲斐しく仕切っているが、少々忙しない。
歓楽街も何もない静かな温泉地では、温泉に浸かる以外は寝るだけです。
宵っ張りには信じられないような時間に布団に入る。
そして潮騒の音を聞きながら目を閉じたら、程なく意識が遠くなってきます…
翌朝、まだ明け切らぬ早朝にむくむくと起きだし、眠い目をこすりながら温泉へ。
早寝した理由はこれ。誰もいない源泉浴槽でまどろむことができるのです。
睡眠と覚醒の間をさまよいながら温泉のぬるま湯に浸かっていると、魂が抜けていくかのような浮揚感。熱いお湯だとこうはいきません。
これぞ宿泊者の特権ですね。そのうちだんだん外は明るくなってくる、気づくと2時間近く入浴していました。
このお粥、もう他はいらない、これだけでいいと思うほど美味いんですね。
多少ツッコミどころがある旅館だが、この温泉がある限り、関西での最上級の旅館といってもいいんではないかな…
現れたバスは最新型の日野ポンチョ。今回、初乗車です。
このクルマはコミュニティーバス用の小型車で、もちろんノンステップで、今後、各地で活躍するんではないかな?
新車の軽快な走行を暫し楽しんだら早くも白浜駅。ここでは、特急くろしおで到着した観光客を明光バスがリレーしています。
このバスの車体色、まんま近鉄バス。明光バスは近鉄の子会社なので、お古が廻ってくるようです。
車体塗り替えすらままならない地方のバス会社の苦労がうかがえますね。
- 訪問日:2008年7月21日・22日
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