中島京子作「小さいおうち」を読みました。昭和5年に尋常小学校を卒業し、住み込み女中として東京で働くことになった「タキさん」の回想録のかたちの小説です。私は女中さんや仲居さんにはあこがれに似た尊敬の念を抱いています。こちらのブログで一番最初に書いた記事は2006-10-25の「おこしやす」のCDについてでした。そこには老舗旅館で働く仲居さんの田口八重さんの日常が綴られていました。その気働きのすごさに圧倒されて、それ以来尊敬しています。こちらの本も女中さんの日常が綴られていました。奥様の平井時子さんとぼっちゃん、旦那様との戦前戦中戦後のことを詳しく回想されています。田口八重さんと重なり私は楽しく読み進みました。あまり上手にタキさんの気持が表現されているので、作者のプロフィールを何度も見てしまいました。何度見ても作者中島京子さんは1964年生まれです。かなり取材されたのでしょうか?自伝を書いておられると錯覚してしまいます。2年前に直木賞を受賞されているだけあると思いました。そして私が想像していたような小説ではありませんでした。だんだん戦争に近づいている時代であってもおきれいな奥様のことなどどことなく華やかでその時代の幸せが書かれているように思いました。戦争の暗いお話ではないと感じていました。ところが最終章でいろいろなことが明かされます。小さいおうちでの出来事が目の前に絵として思い浮かんできます。中島京子さんのすごさにも感心しました。また違う本を読みたいと思います。
お気に入り度:★★★★★ 図書館資料 請求番号:913/ナカ