ヤマザキマリ作「扉の向う側」を読みました。ヤマザキマリさんは14歳でヨーロッパ1人旅をしてから世界各地で暮らして来られました。札幌、フィレンツェ、ナポリ、シリア、パリ、キューバ、リオデジャネイロ、シカゴ、ブラジルなど新しい場所で新しい扉を開けるたびに、いろいろなドラマがありました。家族のこと、新しい発見、出会いなど感動することばかりです。そこにマリさんの挿絵がとてもよくはまって、生き生きしていて、川の絵では流れているように見えて、人物の絵ではそこに佇んでいるように見えて、海外を疑似体験出来て、登場人物とは昔からの友達のような感覚になりました。今までにもマリさんの本は何冊か読んでいるので、知っていることもありました。キューバにボランティアへ行かれた時は15人家族の家に居候されていました。その家にはお皿が3枚しかないので、5回に分けて食べるそうです。ベランダのテーブルに象の形をした可愛らしい陶器の灰皿があったそうです。マリさんが奥さんに「これかわいいですね」と伝えると、奥さんは「新婚旅行で行ったサンティアゴで買ったのよ」と愛おしそうな目を灰皿に向けたまま微笑んだそうです。「殺伐としたその家の中で、色といい形といい際立った存在感があった」そうです。マリさんが帰国の日、空港で子供たちが「大したものじゃないんだけど、これキューバと私たちの思い出に渡してくれって両親から」と新聞紙で包まれたものを差し出して「でも恥ずかしいから飛行機の中に入ってから見てほしいって」。それは「象の灰皿」だったのです。マリさんは飛行機の中で、体を屈めてしばらくの間誰にも気がつかれないように、黙って泣いたそうです。私も涙があふれてきました。これはオーヘンリー作「賢者の贈り物」だと思いました。このようなお話が28話掲載されています。お話と絵とどちらも心に響きました。
2025ー1ー21(火) 図書館資料 請求番号:913/E/ヤマ
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