獅子風蓮のつぶやきブログ

日記風に、日々感じたこと、思ったことを不定期につぶやいていきます。

藤圭子へのインタビュー その28

2024-03-13 01:32:12 | 藤圭子

というわけで、沢木耕太郎『流星ひとつ』(新潮社、2013年)を読んでみました。

(目次)
□一杯目の火酒
□二杯目の火酒
□三杯目の火酒
□四杯目の火酒
□五杯目の火酒
□六杯目の火酒
□七杯目の火酒
■最後の火酒
□後記


最後の火酒

   5

「……月だね。さっきまで、この窓からは見えなかったのに」

__それにしても、綺麗な三日月だなあ。

「うん、綺麗だね。でも、月のまわりが少しぼんやりしてる」

__えっ? 視力は、悪いの?

「すごくいい」

__……そうか。

「二重に見えるよ、あたしには。……にじんで、ぼんやりしてる」

__そうか……。

「うん、そう。空は蒼いんだよね。いまは暗くて黒いけど、ほんとはまっさおなんだね。……そう?」

__そう、だろうね、きっと。空は蒼いんだろうね。

「綺麗だね、ここから見ると。暗い空も、ネオンの街も……」

__最後にもう一杯、ウォッカトニックを呑もうか。

「うん、乾杯しよう」

__何に乾杯する? あなたの前途に対して?

「ううん、そんなのつまらないよ……」

__では、このインタヴューの……。

「成功を祝して?」

__いや……このインタヴューは失敗しているような気がする。

「どうして?」

__本当に、どうしてそんな気がするんだろう……。

「あたしのインタヴューなんて、成功しても失敗してもどっちでもいいけど……じゃあ、失敗を祝して、盛大に乾杯しよう!」

__うん、いいね、そうしよう……。

 

 

 


解説
__いや……このインタヴューは失敗しているような気がする。

順調に進んだインタビューと思われましたが、沢木耕太郎さんにとっては失敗したと感じられたとのこと。
その理由は、「後記」で語られます。


獅子風蓮



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