伊勢朝日駅周辺の建築探訪を終え再び近鉄で桑名に戻ります。西桑名駅から三岐鉄道北勢線に乗車、1時間かけてのんびりと終点阿下喜駅まで各駅停車の旅です。阿下喜地区は旧員弁郡北勢町の中心として栄えた町で、養老山地の西側のふもとに阿下喜の古い町並みが広がります。駅前から北へ延びる坂道は、町の中心街を通る本町通りで、通り沿いには昔ながらの商店や住宅が点在しています。本町通り沿いの北勢郵便局を過ぎて左へ入ると、右手に広い校庭が広がり、その奥にお目当ての旧阿下喜小学校の校舎が建っていました。
現在この校舎は、いなべ市役所文化資料保存施設「桐林館」として活用されていますが、元々は昭和11年阿下喜尋常高等小学校として建設されました。東西に横長に建つ校舎の正面中央には、立派な玄関車寄とその上の屋根には小さいながら塔が設けられています。地方の山間に建つ木造校舎としては破格の造りで、戦前まで員弁郡の中心地として栄えた旧阿下喜町の往時の様子が偲ばれます。
◆桐林館(旧阿下喜小学校)/三重県いなべ市北勢町阿下喜1980
竣工:昭和11年(1936)
構造:木造平屋建
撮影:2013/11/17
■初めてきた場所なのになぜか懐かしい、子どもの頃通った木造校舎が思い出されるノスタルジックな風景です
■建物南側正面~校舎の中央に玄関を設け左右対称に見えますが、向かって右端の窓の配置が若干異なります
■屋根瓦は新たに葺き替えられ、外観もかなりリニューアルされている様子
■外壁はモルタル塗り、腰回りは下見板張りにして外観に変化を持たせてあります
■建物北東側~東側にも出入り口を設ける
■玄関車寄は木骨を見せるハーフティンバー風にして意匠を凝らしています
■塔の正面には二つの窓が設けられていますが現在はふさがれている様子
塔の屋根の中央を山型にしたデザインは、旧四郷村役場(四日市市)を参考にしたのでしょうか?
■屋根に設けられたドーマー風換気口もなかなかオシャレです
■玄関の柱に残るNHK名古屋放送局のプレートは、右から書かれた戦前もの
■時代を感じさせる石造りの校門