かどの煙草屋までの旅 

路上散策で見つけた気になるものたち…
ちょっと昔の近代の風景に心惹かれます

旧牛久保郵便局(愛知県豊川市)

2014-06-08 | 東三河の近代建築

 県道495号線を姫街道の交差点からさらに南へ進み、名鉄豊川線の手前で旧伊那街道と合流、JR飯田線沿いに牛久保方面へ向かいます。伊那街道をそのまま進むとほどなく牛久保の町並みに入り、八幡社の向かいにタイル貼りの昭和モダンな建物が見えてきます。昭和7年築の旧牛久保郵便局で、現在は西隣に新しい局舎が建てられています。

 戦前の地方の郵便局は個人所有がほとんどで、牛久保郵便局も東隣に和風の住宅が付属しています。局舎はファサード全面に、白っぽいスクラッチタイルが貼られたモダンな洋風意匠で、200mほど先にある同じく洋風の旧星野医院とともに、戦前の昭和の牛久保の町並みを今に伝える貴重な近代建築です。


◆旧牛久保郵便局/愛知県豊川市牛久保町常盤12
 竣工:昭和7年(1932)
 設計:花田栄一
 施工:井桁屋(現花田工務店)
 構造:木造2階建
 撮影:2014/05/03

■和風の住宅部分と洋風の郵便局舎がセットで残っています



■タイル貼りのファサードだけ見るとRC造に見えますが、横から見ると看板建築風の木造なのが良く分かります



■端正な直線的デザインで装飾はありませんが、外壁にまわした石貼りの帯と2階の連続する上げ下げ窓が外観上のアクセントになっています



■淡い色合いのスクラッチタイルがなかなかお洒落で、モダンな雰囲気を演出しています
向かって右側の通用口の扉は当時のままの木製です



■豊川牛久保郵便局の文字がうっすらと残っています



■雨どいも逓信省の〒マークが入った特注品



■掲示板もレトロなデザイン



 旧街道沿いには戦前の郵便局舎がそのまま残されているケースをよく見かけます。使われなくなった建物は老朽化が進む一方なので、手遅れにならないうちに保存再活用する手段が望まれます。滋賀県の旧醒井郵便局では、町の資料館として再生し、貴重な地域の近代化遺産を保存活用しています。
 
 牛久保には牛久保城跡や今川義元の胴塚、山本勘助の墓など多くの歴史遺跡が残されています。これらの歴史遺跡と近代建築を組み合わせて、人々が訪れたいと思うような魅力的な町づくりができないものかと素人の浅知恵で思ってしまいます。どこの自治体も予算には余裕がなく、費用対効果とか考えるとなかなか難しいのが現実なのでしょう。あと10年もすれば、現存する近代建築は文化財指定の建物か、運よく資料館などとして保存活用された一握りの建物だけになってしまうのでしょうね。それまでに今はまだかろうじて現存している街角の近代建築を、ひとつでも多く紹介したいとあらためて思う今日この頃です。