今年になって初めての近代建築探訪は、2006年以来ほぼ10年ぶりになる愛知県瀬戸市です。瀬戸は江戸時代から尾張藩の保護を受けた陶磁器産業が栄え、明治以降は石炭窯の発達もあり「せともの」といえば陶磁器の代名詞といわれるほどになりました。名鉄尾張瀬戸駅の南西瀬戸川沿いには、昭和10年に瀬戸陶磁器工業組合綜合共同販売所見本陳列所として建てられたRC造総タイル張り3階建の立派な建物が今も残っています。
昭和61年に建物の西側に隣接し新館が増築され、外壁タイルやアルミサッシを新館に合わせて改修しましたが、建物北面の玄関廻りは当時の面影をそのまま残しています。特に玄関廻りを囲むように張られた陶板のテラコッタ装飾は、陶磁器の町らしい華やかな雰囲気で、この建物の最大の見どころになっています。内部は1階廻りが大きく改変されていますが、3階の大ホールや2階の理事長室、廊下階段周りに竣工当時の旧状をとどめています。
◆愛知県陶磁器工業協同組合(旧瀬戸陶磁器工業組合綜合共同販売所見本陳列所)/愛知県瀬戸市陶原町1-8
竣工:昭和10年(1935)
設計:丹羽建築事務所(丹羽英二)
施工:北川組
構造:RC造3階建
撮影:2015/1/25
■瀬戸の町を東西に流れる瀬戸川沿いに建つ瀟洒なタイル貼りの建物はとても戦前築とは思えません
■玄関より西側(向かって右側)は昭和61年に増築されたもので、窓割りなどが異なっています
■釉薬のかかった黄瀬戸(きぜと)の陶板で門型に囲った玄関廻りは竣工時のままで華やかな印象です
外壁のタイルがすべて張り替えられたため、建物全体から受ける印象はかなり現代的
■旧字体の看板が昭和レトロな雰囲気を演出
■2006年訪問時の玄関廻り
竣工時の金属製グリルが当時のまま残っていましたが、その後現在のものに変更されたようで残念です
■玄関両脇にある藤の花を図案化した陶製の照明シェード
釉薬のかかったテラコッタは、竣工時から80年を経過した現在も当時の艶やかな質感を保っています!
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