素浪人旅日記

2009年3月31日に35年の教師生活を終え、無職の身となって歩む毎日の中で、心に浮かぶさまざまなことを綴っていきたい。

出逢い

2009年12月12日 | 日記
 昨日借りた渡辺貞夫のアルバム“INTO  TOMORROW"をパソコンに取り込み、BGMにしてブログを書いている。アルトサックスの響きが心地よい。

 アルバムに寄せて、ナベサダの一文がある。

    『出逢い。 
     人生の妙味は、これに尽きると思います。
     ぼくはミュージシャンなので、自分のテイストに合った仲間たちに出逢えた嬉しさは格別です。
     今回のレコーディングに際しては前日のリハーサルで曲のフォームを決めただけで、
     あとは彼らの自由な解釈に任せました。
     テイクは一度だけ、バラードはリハーサルもなく本番でした。

     このアルバム制作に関わってくれた、ミュージシャンとスタッフに感謝します。
     そして僕の家族に、ありがとう。

     最後に、ぼくの親しい友人のチャーリー・マリアーノ、
     そして、今回のアルバムのライナーをお願いしたかった黒田恭一さんに、
     このアルバムを捧げます。』

 以前TVで、ナベサダのメンバーに加わった20歳前後だったと思うが、若いドラマーを追跡したドキュメントがあった。必死でドラムをたたく、孫ほど歳の違う若者に渡辺さんは「もっと、ご機嫌に!」とよく声をかけていた。渡辺さんにとって、メンバーとの演奏は楽器を通しての会話なんだと思った。正確にきちっとすることの上に“楽しく”おしゃべりをしようよと若者に呼びかける。

 キャリアも浅く、余裕のない若者にとってはとてもむずかしい課題である。ナベサダに選ばれているのだから技術も感性も優れたものを持っている彼の悩む姿をカメラが追っていくのだが、暖かく見守るナベサダの人柄も相伴って、ドラマチックな派手さはないが心にしみるいい番組だった。

 何かがふっきれて演奏する若者を眺め、他のメンバーに「ご機嫌だねぇ」と嬉しそうにニッコリ微笑みながらつぶやくシーンが印象的だった。

 第九の指導の中でも、終盤にさしっかかった時点で、三原さんは、ここでは弦楽器がこういう風にがんばっているから、ここは金管の動きを意識していてくださいとか、ソプラノがこういう感じでがんばっているので他パートはしっかり支えてあげてください。ソリストの呼びかけに対しての応えなのだからなどと自分のパートだけではなく、オーケストラ、ソリスト、他のパートの動きもしっかり受けとめながらの表現を要求することが増えてきた。ジャンルこそ違え、やはり会話なんだと思う。

 私自身は残念ながら、その余裕はない。ほんの5%ぐらいの部分でしかご機嫌に参加することはできない。全然本格的な合唱を経験をしたことがない者が3ヶ月余りで楽しめるほど簡単な曲ではない。ということもよくわかった。いろいろな偶然の重なりの中での“フロイデ”との出逢いであったが、たくさんのことを学んだ。

 自分自身のさまざまな出逢いを考えてみると、本当に不思議な気がする。“もしあの時こうであったら”この人と一生出逢うことなく人生を過ごしていっただろうと思うことがしばしばある。それゆえに、偶然に感謝し、会話を楽しんでいきたい。
コメント
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