素浪人旅日記

2009年3月31日に35年の教師生活を終え、無職の身となって歩む毎日の中で、心に浮かぶさまざまなことを綴っていきたい。

レブンアツモリソウ

2010年06月24日 | 日記
“レブンアツモリソウ”という花のことを初めて知ったのは、阿刀田 高の12の男女の切ない恋物語からなる短編集『おとこ坂 おんな坂』の中の“あつもり草”という話の中である。

 高校2年の学園祭で憧れの同級生と「平家物語の“敦盛最期”」の部分を一緒に朗読した男がサラリーマンになって、再会を果たすが、なかなか自分の気持ちが言い出せない。入院した女性を9人の同級生で見舞った時、偶然花屋で見つけた“熊谷草”をなにも言わずにベッドの下に置き残した。

 熊谷次郎直実のことがカードに書いてあるのだから、だれが贈ってくれたか、 -わかるはずー  わかるほうに賭けてみた。
 数日後、葉書が送られて来て、
 “熊谷草、ありがとう。すぐにわかったわ。おもしろい花!ベッドの脇に飾って毎日ながめてます。北海道へ行くことがあったら礼文島へ行ってみてください。島には敦盛草が咲いているそうですよ。見たい!”としたためてあった。


というところから、惹かれあいながら思いが告げられない二人の物語が展開するのである。

   

 クマガイソウ、アツモリソウの名は、膨らんだ形の唇弁を昔の武士が背中に背負った母衣(ほろ)に見立て、がっしりした方を熊谷直実(くまがいなおざね)に、優しげな姿の方を平敦盛(たいらのあつもり)にあてたものである。

 W杯デンマーク戦、日本時間午前3時キックオフ。起きておくか一眠りするか思案しながら、もう一度短編のいくつかを読み返した。

 
コメント
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