素浪人旅日記

2009年3月31日に35年の教師生活を終え、無職の身となって歩む毎日の中で、心に浮かぶさまざまなことを綴っていきたい。

今日の夕刊より

2010年06月08日 | 日記
 夕刊はあまり読む記事がないので、サッと目を通すことが多い。しかし、今日は2つの記事に目が留まった。

 1つは、フランス映画「パリ20区、僕たちのクラス」の監督ローラン・カンテ氏へのインタビュー記事。新聞によれば、この映画は中学校の1クラスの1年をドキュメンタリー風に描き、08年のカンヌ国際映画祭で最高賞を受賞した。学校は移民の多いパリ20区にあり、さまざまな家庭環境の子供たちが通っている。クラスは時に、反抗的な女性徒にかき回され、少年が起こした暴力ざたに翻弄される。そんな中で担任教師フランソワは生徒たちと向き合おうとする。
 フランスでも教育は深刻な問題で、映画は教師の絶望感や苦労も浮き彫りにし、社会的な議論のきっかけにもなったという。監督の談。

「教育予算は削られる傾向だ。教師も人員削減で疲弊している。フランソワは英雄でも理想像でもない。当然失敗もする。しかし彼は、子どもの好奇心を刺激し、知性を引き出そうとしている。少なくとも、彼のような教師に、自分の子どもを受け持ってもらいたいと思う。」

「子どもの活発さや、人生への根拠のない自信、愚かさも含めて興味があるんだ。今回の撮影でも、子どもたちに責任を与え、能動的にやらせたら、こちらが望むものを返してくれた。だから、教育の可能性を信じたい。子どもと分かち合おうと思うことが大切だと思う。」


 大阪では“テアトル梅田”で6月26日(土)よりロードショーの予定である。

 もう1つは、『想・創』というコーナーでの落語家・林家たい平さんの話。彼が高校3年の時の担任である美術の教師の言葉がずぅっと心の中にあるとのこと。

 「人を感動させる仕事に就こうと思ったら、どんな些細なことでも感動できる自分でいること」

 そして、落語家として“落語を聴いて、元気に明るい気持ちになってほしい、明日もがんばろう!というパワーを持って帰ってもらいたい。”という思いで高座をつとめている彼の談。

 「一生懸命に演っていると、自分の中のガソリンが空っぽになってしまいそうになることがあるんです。そんなことになる前に毎日の感動の充電がとっても大切なんです。
 下を向いて考え事をしていたり、ふさぎ込んだりしていたら、出合えるハズの感動に出合えません。時々、立ち止まって“空”を見上げるんです。素敵な空が広がっています。その瞬間にしか味わえない空が、もう二度と同じ表情はない空がそこにあるんです。空は落語にすごく似ているものだと思うんです。

 常に動いていて同じものは二度とない。型に残るものではない。落語も同じ噺を演っても全く同じなんていうものはありえない。お客様と空気と時間と演者が一つになって、その日、その刻を創り上げていく。

 都会の空はビルで切り取られてしまって美しくない!なんて決めつけずに見ていると、邪魔だと思っていたビルでさえ、空を美しく切り取る額縁のように見えてくるんです。晴れの日ばかりではありません。雨空、くもり空。空は私の落語の師匠なんです。」


 落語を授業に、お客様を生徒に、演者を教師に読み替えれば大切な点をついているように思う。

 このような記事に目が留まるのは、先日、教育現場のしんどい実態を生の声で聞いたからかもしれない。
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