素浪人旅日記

2009年3月31日に35年の教師生活を終え、無職の身となって歩む毎日の中で、心に浮かぶさまざまなことを綴っていきたい。

「思い込み」から脱却するために再び歴史を学ぶ

2014年01月08日 | 日記
 歴史研究をされている方の話を聞いたり、読んだりする機会が多くなるにつれて、自分の持っている知識というものが薄っぺらで思い込みに満ちているということを痛切に感じる。おかげで日々退屈しないわけだが、「思い込み」の怖さについては心しておかないといけないと自戒している。

 今日の朝刊に掲載していた中央大学教授の山田昌弘さんの《日本の「伝統」家族》に関する話も、「本当に伝統なのか?」と思い込みを排してきちっと歴史を見ていく大切さを教えてくれた。

 例えば、結婚制度で今当たり前のようになっている一夫一妻制が定着したのは戦後だという。平安時代は、男性が女性の家に通い、子どもが生まれれば妻の実家で育てた妻問婚であったし、鎌倉時代以降、女性は結婚したら男性の家に入る嫁入り婚が一般化したが、富裕層の間では一夫多妻が普通であった。1898年の明治民法によりキリスト教の伝統に従い一夫多妻は法的には廃止されたが、習慣は根強く残ったという。

 また、「夫婦同姓が日本の伝統」という人に対して山田さんは驚く。そして『日本は今の中国、韓国と同じように、伝統的に夫婦は別姓だった。明治維新後も夫婦別姓は続いたが、明治民法の制定時、欧米の慣習に合わせて夫婦同姓になった。「伝統日本の慣習は野蛮」と、1000年以上続く伝統的な慣習を捨て、無理やり夫婦同姓に変えたのである。夫婦同姓は、日本ではたかだか100年少しの歴史しかない。 』 と断じる。

 さらに「夫は外で仕事、妻は家事・育児」という性別役割はさらに新しいという。戦前まではほとんどの庶民は農家など自営業で、男女が生産労働に従事しており、家事や育児は手のすいた人が片手間におこなっていたし、富裕層は乳母や子守を雇って子どもの面倒を見た。家事育児を専らにする専業主婦が一般化したのは、19世紀の英国社会で、西洋文明の広がりとともに全世界に広がった。日本では、工業化が進んだ戦後の高度経済成長期に、米国のテレビドラマが放映されたのとともに普及。皮肉なことに専業主婦の本家本元であった欧米社会では、社会構造の変化とともに1980年代に専業主婦は少数派となった。

 そこで山田さんは『欧米に遅れて専業主婦が一般化した日本では「夫は外で仕事、妻が家事育児」という分担が、あたかも伝統であるかのように言われている。それにこだわる人がいるのは、学問的にみればおかしいことである』と容赦ない。

 時代とともに家族形態は変わる。ということを前提として、時代に合ったように智恵を出し合って制度などの法整備をしていけばよい。偽伝統にしばられて思考を停止または逆行することは慎まなければいけないと強く感じた。

 これらのこと以外でもまだまだ「思い込み」にしばられているかもしれない。脱却するためには歴史を学ぶ必要がある。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする