素浪人旅日記

2009年3月31日に35年の教師生活を終え、無職の身となって歩む毎日の中で、心に浮かぶさまざまなことを綴っていきたい。

毎日新聞・オピニオン「加藤陽子の近代史の扉」を読んで

2021年05月15日 | 日記
 毎日新聞・オピニオンに毎月第3土曜日に掲載される「加藤陽子の近代史の扉」を楽しみにしている。今月のテーマは〈新型コロナと対中戦略〉を例に焦燥感より冷静な「構想」の重要性を説く。
 その冒頭で、朱戸アオ氏の「リウ―を待ちながら」(講談社)という漫画を紹介している。特異型のペストに襲われた現代日本の地方都市を舞台に、それに関わったさまざまな立場の人たちの造形が見事だという。そして、おのおのが立場の違いを超えて①自らの責任で現状を理解し➁何が問題かを考え➂明日のための解決策を探そうと誠実に動く姿に心揺さぶられたとあった。
 主人公らのこの3つの行動原理をまとめながら以前読んだ、防衛研究所主任研究官の下平拓哉氏が米海軍大の講義を紹介した論文にあった「構想手法」という手法と同じだと気づく。それは①現在の作戦環境を理解し➁問題点を明確化し③将来のための解決策を案出するという3段階をいう。そして①を可能とするのは、「情報」収集への不断の努力に他ならない。
 この「構想手法」が必要な緊迫した事態は新型コロナウイルス対応の他に、先月日米両首脳の共同記者会見で、現代を「驚くべき地政学的変化の時代」と位置付づけられた点にもあるという。米国の対中戦略への焦燥感が前面に押し出されたものだと危惧している。そして脅威に対して焦燥で応ずるのは賢明ではない。と断じている。
 考えさせられることの多かった加藤さんの話だった。さっそく朱戸アオ氏の「リウ―を待ちながら」(講談社)を購入することにした。
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