まわる世界はボーダーレス

世界各地でのビジネス経験をベースに、グローバルな視点で世界を眺め、ビジネスからアートまで幅広い分野をカバー。

2020年の母の日に公開されたFacebookのコマーシャルに関して、一年後の母の日に語っておきたいこと

2021-05-06 14:34:03 | 新型コロナウィルス

一年前に作られたFacebook社の母の日に向けたコマーシャル。パンデミックが過ぎ去り、すでにこれが過去の作品となっているのではないかと思っていたら、今年も同じ状況が続いていて、あるいは昨年より状況が悪化している国もあり、このコマーシャルは、年をまたいで私たちに強く訴え続けています。というわけで、2021年の母の日に向けて、昨年の母の日用に作られたこのコマーシャルを紹介したいと思います。



生まれたばかりの赤ん坊の写真から映像が始まります。そして、“I was born during a quarantine”(私は隔離期間中に生まれました)というナレーションが聞こえてきます。



昔のことを知らない私たちは、最近のコロナ禍の話かと思ってしまいます。しかし、ナレーションが、あきらかにかなりの年齢の女性の声で、遠い昔を回想しているような雰囲気。ひょっとして、はるか未来からコロナ禍の現在を回想しているのかなと思えたりもします。

しかし、ちょうど100年くらい前にもスペイン風邪が流行っていて、世界はパンデミックになっていていて、そんな時代の隔離の中で生まれた女性の回想だと知ったときのショックは強烈でした。このコマーシャルで喋っている女性は、Anita Sampsonという1920年に生まれたアメリカ人女性です。



スペイン風邪は第一次世界大戦が終盤を迎える1918年頃流行しはじめ、1920年を過ぎてから収束していくのですが、世界中で5億人(世界人口の約3割)が感染し、数千万人以上が死亡したとされています。日本は大正時代でしたが、約45万人が死亡したと言われています。科学技術や、生活様式は現在とは異なるのですが、ソーシャルディスタンスや、隔離など、パンデミックの対策は、現在とほとんど同じという事実に驚かされます。



アニタさんは、コマーシャルの中で語ります。"I don’t remember it, of course. But for my mother, it was a very difficult time. "(もちろん私は覚えていないけれど、それはとても困難な時代だったと母は私に語ってくれた)さらに、"She told me, ‘it was just you and me for many months.’”(何ヶ月もあなたと私だけだったと母は私に語ってくれた)

このコマーシャルの中で、現在の写真と、100年前の写真が混ざって登場するのですが、パンデミックで苦しんでいるのは、現代の私たちだけではないというメッセージをじわじわと感じます。アニタさんはさらに続けます。”But she wasn’t alone. Everybody tried to do what they could to help.” (でも母は決して一人ではなかった。みんなが自分ができる精一杯のことをしようとしてくれていた) "But she was also a very strong person”(母はとても強い人だった)



"And then it was over. We came out into a new world, my mother and me. We can get through this. We all have the strength to do it”
(そしてやがてそれは終わった。母と私は、新しい世界を迎えることができた。私たちにこれを乗り越えられる。そのようにできる力をみんな持っている) という力強いメッセージ。





彼女の母親もパンデミックの中で頑張ってきた。今の時代の母親も負けてはいけないというエールになっています。



"I’m 100 years old”(私は今100歳です)とアニタさんは続けます。”And you just take care of that little miracle” (みなさんはただこの小さな奇跡を大切にしてくださいね)と若い母親に語りかけています。

このコマーシャルの最後に登場する文字スーパーは、"For all new moms in quarantine, you’re not alone.”(隔離下で新たに母親になる皆さん、皆さんは決して一人ではありません)。この「一人ではない」というのは、周りの人々の協力があるということだけではなく、今の時代が特別なわけではなく、100年前も、あるいはもっと昔も、人類は同じような経験をしてきているというメッセージにもなっています。

ところで昨年の報道によると、100歳のアニタさんは、107歳のフィアンセがいるのだそうです。Joe Newmanという男性ですが、107歳にして赤のメルセデスのオープンカーを乗り回すというすごい人。



こちらのリンクに107歳のJoe Newman氏の姿が動画で紹介されています。Anita Sampsonさんも登場しています。

https://www.wfla.com/wfla-plus/107-year-old-sarasota-man-still-living-life-to-the-fullest-with-fiance-and-drivers-license/

昨年3月、二人が住んでいるフロリダで100歳の誕生日パーティーをリモートで行なったそうですが、その時「パンデミックでは死にたくない」と思ったそうです。その後の様子はわかりませんが、二つの大きなパンデミックを経験したこのカップル、世界最強ですね。



フェイスブックは、このコマーシャルの前にも、パンデミックを題材とした作品を作っていて、どちらの広告代理店も同じ会社なのですが、そのことはこちらのブログ記事をご参照ください。

https://blog.goo.ne.jp/singaporesling55/d/20200414

世界中の母親のみなさん、これから母親になられる皆さん、今は大変な時代ですが、決して負けないで頑張ってください。このフェイスブックのコマーシャルが言っているように、皆さんは一人ではないのです。また同じような経験をし、同じように悩み、なんとか克服してきた先輩たちがこんなにたくさんいたんだということを知って、少しでも救いになっていただければと思います。

Happy Mother's Day!
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シンガポールでワクチン接種

2021-04-27 17:41:40 | 新型コロナウィルス
シンガポールでワクチン接種を完了しました。1回目は4月5日に、2回目は21日後の4月26日です。どちらも注射はほとんど痛みを感じないのですが、数時間後、左腕上腕部に痛みが感じられます。1回目は痛みが二、三日残りました。2回目は1回目よりも熱が出たりすると聞いていたのですが、接収を受けた数時間後は37度程度、その後、熱はありません。ちょっと疲れた感じはあるので、ゆっくり休んでいます。

パソコンやスマホなどの電子機器は時々アップデートやファームアップが必要になりますが、自分の身体がアップデートされた感じです。

シンガポールは現在38箇所のコミュニティセンターなどでワクチン接種が可能で、うち11箇所がモデルなのワクチン、27箇所がファイザーのワクチンとなっています。私は、コミュニテなまィーセンターよりも、ラッフルズシティのコンベンションセンターが一番馴染みがあったので、そこで二回とも接種を受けたのですが、そこはファイザーでした。

私は2月21日に日本からシンガポールに戻り、3月の7日までホテルで隔離になっていました。2月下旬には70歳以上の接種が始まっており、3月初めには60歳以上、3月24日からは45歳以上の接種が始まっていました。

日本にいた間は、ワクチン接種はそんなに積極的に考えていなかったのですが、3月29日にかかりつけの病院の先生の問診を受けた際に、ワクチンについて聞いてみました。そうしたら「受けたほうがよい」との答えでした。血圧が高めとかのリスクを抱えている人ほど早めに受けておいたほうがいいとのアドバイスでした。

家に帰って、すぐに登録してみました。パソコン上で、登録をするのですが、携帯電話番号、名前、NRIC (IDナンバー)、生年月日、言語(英語、中国語、マレー語、タミール語からの選択)を入力して、SUBMITボタンを押すだけ。実に簡単です。携帯番号は、”VERIFY”というボタンで、入力した番号にメッセージが送られ、実在する番号かを確認するという手続きがありますが、これも簡単です。





登録が終わると、人によってかかる日数は異なりますが、私の場合、すぐにメッセージが来て、コードナンバーがスマホメッセージに送られてきました。そうするとワクチン接種の日時と場所を予約するステップになります。コードナンバーを入力し、日時と場所を選んだら、すぐに予約完了となります。


予約した日時に、選択したワクチンセンターに行けばよいのですが、IDカードを持参することと、腕を捲りやすい服を着ている
こと以外は特に指定はありませんでした。予約確認は、スマホのメッセージを見せるだけです。



当日、早めに到着したのですが、かなりの人数が同じ時間帯に予約しているにも関わらず、実にスムーズに受け付けられていきます。到着した人から数人のグループに分けられて、会場に向かいます。途中で、担当の人から、薬のアレルギーはないか、食物アレルギーはないか、血液をさらさらにする薬を処方されていないか、癌の治療を受けているか、24時間以内に発熱はなかったか、14日間に他のワクチン接種をしていないかの6項目の質問を受けます。



登録カウンターもいくつもあります。カウンター番号を指示されて、そこに向かうと、IDカードの提示を求められ、電話番号や名前の確認をされます。自宅住所の郵便番号も聞かれたのですが、覚えていなかったので、ちょっと手間取りました。またもしもの時のために一番の近親者の名前と電話番号も確認させられました。妻の名前と番号を伝えましたが、もし近親者がいなかったらどういうことになっていたのかはよくわかりません。

1回目の接種は、30くらいのブースが見えていたので、一度に30くらいの接種が可能になっていたようです。接種が終わると、オブザベーションルームという場所で、30分間待機して、異常がないかを確認し、一人一人名前を呼ばれて、簡単な問診をされて、問題なければそのまま解放になります。



2回目の接種も同じようなプロセスですが、受付と接種の部屋が若干異なっていました。2回目もほとんど待ち時間がなく、スムーズに受付、接種、オブザベーションルームと進んでいきました。前回よりも人数が少ないような印象を受けました。



1回目の時に、パンフレットを渡されるのですが、それには英語、中国語、マレー語、タミール語で、ワクチンとは何か、どういう副反応が予想されるのかなどがきめ細かく書かれていて、非常に安心できました。

こちらが副反応のページ。



5番のところにファイザーのワクチンの説明があります。読んでも一般の人にはわからないのですが、きめ細かく説明責任を果たしているという感じです。6番のところに書かれているのが、副反応の症状の一覧とそれの対応です。痛みや、熱、頭痛、筋肉痛、関節痛、倦怠感、リンパ腺部の痒みなどですが、基本的には、時間が経てば治るというものです。頭痛や、発熱の場合は市販の薬を飲むという処方なのですが、こういうのがあらかじめわかっていると安心です。



さらにこちらの7番に注意事項も書かれています。血液をさらさらする薬を飲んでいる場合は、血が止まりにくい場合があるので、注射した場所を5分ほど強めに押さえること。母乳での授乳は5〜7日くらいは止めたほうがよいということ。妊娠予定のある人は一月ほど待つのがよいということなども書かれています。

さらに、12時間から24時間は強い運動は避けること、アルコールは避けること、非ステロイド性抗炎症薬に使用は避けることなどが書かれています。こいうのも今後ワクチン接種を予定されている人には重要な情報ですね。いたれりつくせりという感じです。

2回目接種を終えて会場から出てくる時にこんな看板が目に入りました。



国の安全のためにご協力感謝しますというメッセージ。シンガポールっていい国だなあとあらためて感じました。

着実に進む世界のワクチン接種

こちらはワクチン接種の国際比較です。Our World in Dataというデータの2021年4月25日時点の人口100人あたりのワクチン接種数になっています。すべての国ではなく、主要国をピックアップしていますが、一番下の日本よりも下の国は数多くあります。シンガポールは上のほうですが、イスラエル、UAE、チリ、バーレーン、アメリカ、イギリス、モルジブ、ブータン、ハンガリーなどはシンガポールよりも多いですね。



最新データはこちらのサイトからどうぞ。
https://www.bloomberg.com/graphics/covid-resilience-ranking/

日本は世界のワクチンレースからかなり出遅れている感じがありますが、アフリカ諸国など日本よりも少ない国は数多くあります。

ブルームバーグが発表しているThe COVID Resilience Rankingというのがあります。



世界で最も安全な国・地域の番付「COVIDレジリエンス(耐性)ランキング」と言われているもので、4月はシンガポールがニュージーランドを抜いて首位に浮上しました。感染を抑える措置とアジア太平洋地域の中では迅速なワクチン接種の組み合わせが奏功したと言われています。

シンガポールは国境の管理と厳しい隔離プログラムによって、国内で感染した人をほぼゼロまで抑え込んでいます。屋外でのマスク着用やソーシャルディスタンスは義務付けられていますが、日常生活はほぼ通常通りとなり、コンサートや周遊クルーズを楽しむこともできるようになりました。国民のほぼ2割がワクチン接種を終えています。

https://www.bloomberg.com/graphics/covid-resilience-ranking/

このランキングで日本が7位に入っているのがちょっと疑問を感じる人も多いかもしれませんね。

ランキングが下位の国もアップしておきました。





最下位はブラジルでした。

ワクチン接種はどんどん進めて、早くパンデミックを収束してほしいですね。
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有事におけるリーダーの言葉の力

2020-12-28 18:40:37 | 新型コロナウィルス

シェイクスピアに『ヘンリー五世』という作品があります。英仏百年戦争の時代を描いた作品です。遠征で疲労困憊しているうえに、多勢に無勢で弱気になっている英国軍の戦士たちを前に、若きリーダーのヘンリー五世が行う演説がこの作品の見せ場となっています。言葉の力だけで、戦士たちが勇気付けられ、百人力の力を発揮し、フランス軍の大群に勝利してしまうのです。

1989年、ケネス・ブラナーが主演、監督した映画「ヘンリー五世」から、この演説の部分の動画をご紹介します。



味方があと一万いればと望む声に対して、数が少ないというハンディキャップを、少数のほうが一人あたりの手柄はより多くなるというふうに視点を切り替えます。ポジティブシンキングです。これから始まる戦に勝利するという明確なビジョンを描き出し、本国にいて、ここに居合わせなかった戦士たちは、この伝説の戦いに参加できなかったことを悔やむであろう。この勝利は、伝説となり、代々語り伝えられることになるのだから、と語り、戦士たちの魂を鼓舞していきます。言葉の力が、不可能を可能にし、歴史を変えていきます。それを行うのが、リーダーの役割なのだと、このシーンを見ていつも思います。

映画、「インディペンデンスデイ」は、「ヘンリー五世」のこの演説を下敷きにしています。麹町にあった海外向け専門の広告代理店に入ったばかりの頃、フィリピン人のコピー部長が、そんな話を語っていました。「シェイクスピアが好きなら、ぜひこの映画を見たほうがいいよ」と言うので、見てみました。フィクションではありますが、素晴らしい演説です。



現在のコロナの時代、ヘンリー五世や、インディペンデンス・デイの大統領の状況と同じ危機的な状況です。こういう場合に重要なのが、リーダーの言葉の力です。各国のリーダーの発言はとても重要です。

ドイツのメルケル首相などの演説は有名ですが、こちらはインドのモディ首相の3月のロックダウンのアナウンス。一言一言に毅然とした決意が感じられます。



こちらは、12月14日のシンガポールのリー・シェンロン首相のスピーチです。



派手さはないですが、明日への希望が感じられ、説得力が感じられますね。

さて、こちらは、日本の菅首相の12月25日の演説です。



比較してはいけないのですが、これで国民がどこまで従うのだろうかという不安を感じざるをえません。申し訳ないですが、言葉の力がちょっと不足している気がします。個人の資質というよりも、国全体の命運を担っているので、もう少しなんとかしてほしかったと思うのですが…
と言っているうちに年が暮れていきます。よいお年をお迎えください、という言葉もあまり自信を持って発せられないですが、なんとかよい年になってほしいですね。
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100万人あたりの感染者数で日本がインドを抜いていた!

2020-12-27 21:46:29 | 新型コロナウィルス

年末になって日本の新型コロナの感染者が連日過去最高を更新しているのですが、いつの間にか100万人あたりの感染者数、死者数ともに、インドやバングラデシュを抜いていたんですね。こちらが、100万人あたりの感染者の、4月から現在までの推移です。



7日間の平均値の推移のグラフですが、日本は11月にバングラデシュを抜き、12月中旬にとうとうインドを抜きました。

仕事の関係もあって、ずっとインドとバングラデシュのコロナの状況をウォッチしているのですが、これは驚きです。9月頃まで、感染者が急上昇していて、やがて一位のアメリカを抜くかと思えたインドですが、9月をピークに、徐々に下降線を辿ってきています。

死亡者数の100万人あたりの推移がこちらです。



こちらも7日平均ですが、11月末から12月にかけてバングラデシュを、そしてインドを抜いています。

次のグラフは、致死率の推移です。



5月から7月くらいの日本の致死率は、インドやバングラデシュをはるかに超えていましたが、12月現在、三カ国はほぼ同じくらいの数値です。

インドは13億8千万の人口なので、感染者も死者もはるかに多いのですが、100万人あたりに換算すると日本の状況はかなりひどいです。

日本は一時、押さえ込みに成功したとか、死者数がこんなに少ないとか自慢していたのですが、実は対策らしき対策をしておらず、死者数もアジアではかなり多いという現実を無視してきました。実はひどい状況だったのです。3月29日に、志村けんさんが亡くなり、4月23日には岡江久美子さんが亡くなり、5月13日に関取の勝武士さんがなくなりました。それ以外にも多くの方が亡くなったのですが、医療先進国の日本でどうして死亡を防げなかったのか残念です。

インドの状況も大変なものがありました。3月29日から5月末までインド全土でのロックダウンを行い、その後、現在に至るまで、段階的な規制解除を行ってきています。この対策の因果関係はわかりませんが、結果は着実に現れています。



日本は、「まだ非常事態宣言を出すような状況ではない」とか、「高止まり」とか言っていて、若者たちがマスクもしないで、繁華街に出歩いていたり、居酒屋で飲み会が行われていたりします。日本はもっと危機感を持たねばと思います。インドやバングラデシュに負けたという情報が日本の皆さんに危機感を与えらえることを望みます。

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世界中が泣いた勝武士さんの死

2020-05-16 20:33:04 | 新型コロナウィルス

大相撲力士の勝武士(しょうぶし)さんが5月13日に、28歳の若さで亡くなった。このニュースは、世界中に驚きを持って伝えられた。

主要メディアだけでなく、たまたま調べただけでも、ナイジェリアの新聞、ジンバブエの新聞、インドのケララ州のマラヤラム語の新聞、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語、イタリア語、ロシア語、アラビア語、ギリシャ語、デンマーク語、ポーランド語、ハンガリー語、トルコ語、中国語、インドネシア語、マレー語、タイ語など、ほとんど全ての言語のメディアで、Shobushiという名前、相撲レスラー、28歳、新型コロナで死亡ということが報道された。上の画像は、たまたま目にした各国のニュースの見出しのみを切り貼りしたものだが、国際的にはほぼ無名のアスリートの名前が、世界の隅々にまで知れ渡ったことが、これまでにあったろうか。

ナイジェリアの新聞、Sundiata Postの見出しは印象的だった。
Tears Flow As Sumo Wrestler, Shobushi Dies Of Coronavirus At Age 28
(相撲レスラーの勝武士がコロナウィルスで28歳で亡くなったことに涙が止まらず)
ナイジェリアの人たちが日本の相撲のことをどれだけ知っているかわからないが、勝武士さんの名前、年齢をきちんと伝えてくれていることに感動してしまう。この”Tears Flow”という表現は、ジンバブエなどアフリカのいくつかの国の新聞でも使われている。

私はシンガポールに住んでいるが、シンガポールの新聞、ストレーツ・タイムズの記事を読んで、涙が止まらなかった。

He developed a fever over April 4-5 but had trouble contacting the local public health office because phone lines were constantly busy.
4月の4日、5日に、熱が出たが、地元の保健所が常にお話し中で、電話が繋がらないという問題があった。
He was then turned away by several hospitals before finally being admitted to a Tokyo hospital on the evening of April 8 after he started coughing up blood, it added.
いくつかの病院に断られ、4月8日、血痰が出た後、最終的に東京の一つの病院に入院。


先進国と言われている国家で、電話が繋がらないために治療が受けられない、そして結局は救える命も救えずに、結局は亡くなってしまう。電話回線が行き届かない途上国の僻地の話ならわかるが、東京都心でそのようなことが起こるなんて、なんともやるせない。「4日間は自宅で様子を見る」という目安の問題、保健所が全てのスクリーニングの権限を持つというシステム、確認方法がアナログの電話という手段しかないという問題、そんなことで、将来のあるアスリートの命を救えなかった体制のなんと情けないことか。

勝武士さんの所属する高田川部屋は、江東区の清澄白川にある。小名木川の南側で、清澄通りと、万年橋通りのちょうど間あたり。東京の実家は門前仲町にあるので、正月には、深川七福神でお参りをするのだが、この地域には相撲部屋がいくつもある。熱を出したとき、さぞ大変だったんだろうなと思う。

日本のマスコミは、「日本はコロナの封じ込めに成功していて、死者が圧倒的に少ない」と報道している。本当だろうか。欧米に比べれば感染者数も、死者の数も圧倒的に少ない。それで喜んでいてよいのだろうか。どのようなファクターによるのかは専門家でないので、なんとも言えないが、中国を除いて、たまたまアジア諸国が感染者数、死亡者数が低かったというだけで、日本の対策が優れていたからということは言えないのではないだろうか。

感染者のうちどれだけ死に至ったかを致死率というが、欧米に比べれば低いというものの、アジアの中では、決して低くない。5月15日時点の数字で、日本の致死率は4.38%。そして不気味なことに、日本の致死率は徐々に増加している。これは何だろう。こちらのグラフは日本の致死率の増加を示している。



一方、シンガポールは、感染者は増えているが、死者をあまり出していないので、致死率はどんどん低下している。中国を含めて、アジアの他の国も、横ばいか、低下してきている。こちらはインド、オセアニアを含むアジア諸国の致死率の推移のグラフ。コンスタントに上昇しているのは日本だけだ。



5月15日時点の各国の致死率の数字だけ並べたものがこちら。



死亡者数の数でいくと、中国、インド、インドネシア、フィリピンは日本よりも多いが、他の大半のアジアの国々は日本ほど死者を出していない。日本は高齢者が多いという問題はあるだろうが、新型コロナの死者を本来はもっと低く抑えられたのではないだろうか。医療設備や医療キャパの不足、医療レベルの低さが原因とは思えない。勝武士さんが、もっと早く治療を受けていたら、助かっていたとは断言できないが、様々な理由で、治療を受けられなかったから症状が悪化してしまった方も多くいるのではないかと思う。それを思うと、16日の時点で725人の新型コロナでの死者の数を、こんなに少なくてよかった、と自慢するのは間違っていると思う。725人もの方が亡くなっている。これからさらに増加していくかもしれないが、死に至る人を一人でも少なくできるようにしていただきたい。

最後に、勝武士さんの今年の二月の初切(しょっきり)の動画があるので、ご紹介したい。初切とは、相撲の禁じ手を面白おかしく紹介する見世物で、相撲の取組の前に、決まり手四十八手や禁じ手を紹介するために江戸時代から行われていたものだが、勝武士さんは、この初切の名手だった。エンターテイナーだ。返す返すも惜しい青年を亡くしたものだと思う。悔やんでも悔やみきれないだろうが、天国でもみんなを楽しませてほしい。勝武士さんのご冥福をお祈りいたします。


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