まわる世界はボーダーレス

世界各地でのビジネス経験をベースに、グローバルな視点で世界を眺め、ビジネスからアートまで幅広い分野をカバー。

インド人のハートに刺さる、アルセロールミタル・ニッポンスチール(AM /NS India)のブランドCM

2023-12-11 17:47:46 | 広告
2023年11月29日に東京の帝国ホテルで、来日中のインド・グジャラート州のパテル首相ら州政府デレゲーションによるプレゼンテーションが行われました。



その中で、グジャラート州に貢献の大きな日本企業として、スズキとアルセロールミタル・ニッポンスチール(AM/NS India)の2社のプレゼンテーションがありました。

アルセロールミタル・ニッポンスチールはヨーロッパの鉄鋼大手と日本製鉄の合弁会社なので、純粋な日本の会社というわけではないですが、久保田佳司氏がインドへの取り組みを説明されました。



その説明の中で、久保田氏はブランド広告キャンペーンについて触れられました。



ブランドスローガンは「よりスマートな鉄鋼でより明るい未来を」というものですが、その下の"Banuanga Main, Banega Bharat"というヒンディー語のフレーズがキャンペーンテーマです。「私が作ると、インドができる」というという意味になります。

この”Bharat"という単語、今年インドで開催されたG20での招待状が"India"ではなく”Bharat"だったので話題を呼びました。インドが国名を”Bharat"に変更するのかと世界を騒がせました。

この「私が作ると、インドができる」というメッセージは、インドのモディ首相が2014年から提唱している"Make in India"に完全に合致したもので、一人一人がインドの発展に貢献しているというのをアピールするものになっています。



上のものはグラフィックのキャンペーンですが、キャッチフレーズはいずれも同じ、と思いきや、最初の女性のバージョンは、最初の単語が"Banaungi"となっています。そういえばヒンディー語は、動詞も主語の性別を受けて、男性女性で変化するのでしたね。ジェンダーフリーが進む世の中で、インドにはこういう部分に男女の区別が残っているんですね。

ブランドコマーシャル映像がこちらです。



こちらは1分35秒のバージョンですが、明るくてポジティブで覚えやすいメロディの楽曲が秀逸です。いろんな技能者がいろんな現場で、まるでミュージカルのように歌っています。



電力インフラ、クリーンエネルギー、航空産業、自動車産業、海運、宇宙開発など様々な「現場」が登場しますが、それぞれがインドの未来を作っていて、ここに描かれているシーンのほとんどに鉄が使われています。

今年の8月24日、インドの月面探査機チャンドラヤーン3号が月面着陸に成功するのですが、そのシーンも描かれています。この瞬間はインドの人々にとっては歴史的な一瞬だったのですね。実際の中継の動画も挿入されていて、実に見事な編集です。



学校の授業中にこのニュースを見る子供たちという設定のシーンも、素晴らしい演技力です。

このCM全体に言えることですが、キャスティングも、ロケーションの設定も、カメラワークも見事です。私もコマーシャル映像の制作には何度か関わってきているのですが、映像作品として見事ですね。

このテーマの「私が作れば、インドができる」というフレーズ、どこかで似たようなセリフがあったなと思っていたのですが、それは映画「フィールド・オブ・ドリームズ」の中のセリフでした。とうもろこし畑の中で主人公に聞こえてくる、"If you build it, he will come."という言葉です。



彼はその言葉に導かれ、自分の夢だった野球場を作るのですが、そこに野球選手が集まり、観客がはるばるこの球場に集まってくることになります。

アルセロールミタル・ニッポンスチールのこのキャンペーンを作ったコピーライターが、この映画を観ていたかどうかは知りません。が、この映画の感動が、この広告キャンペーンのキャッチフレーズに重なってきます。

このコマーシャルを作ったクリエイティブ・エージェンシーはどこかと調べてみたら、ムンバイのCreativeland Asiaという会社でした。



この会社のウェブサイトに出ている言葉”We are not an agency. We are a creative culture."(私たちは代理店ではありません。私たちはクリエイティブ・カルチャーです)という言葉がいちいち実にかっこいい。こういうクリエイティブな会社だからこそ、こういう素晴らしい作品が作れるのだと思いました。

最後に、アルセロールミタル・ニッポンスチールのようなB2B企業(消費者には直接関係ない産業)が、このようなブランディングキャンペーンを行ったということに拍手を送りたいと思います。日本ではB2B企業は、リクルート目的で認知度アップの広告をよく行っていますが、海外ではこういうことにあまり予算を投下しません。消費者には関係ないので、広告は意味がないと考える担当者が多いです。

しかし、日本に比べて認知度のない海外市場で戦っていくためには、B2B企業にこそブランド広告は必要です。いかに技術力が優れていても、いかに品質が高くても、いかに値段が安くても、聞いたこともないような会社から買いたくはありません。ブランドコマーシャルやブランド広告でメッセージを発信していくことは、B2B企業にこそ必要なアクションなのです。

インドやその他海外市場での広告展開に関してのご相談がありましたらどうぞお気軽にコンタクトしてください。
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世界の広告業界はどのように変化しているのか

2023-10-08 22:07:23 | 広告
先日、明治大学で定期的に開催されている「グローバルマーケティング研究会」の例会があり、世界最大の広告代理店グループ、WPPの中の「グループM」というメディアエージェンシーの大森健一郎さんが、広告業界の状況に関して講演をされました。大森さんは、マツダ自動車からADKに移られ、アムステルダムや上海でも勤務されていた方です。ADKはWPPグループにも入っていたことがあるので、世界の広告業界の変遷とともに生きてこられたような方なのですね。

私が長年勤めてきたのは、海外向けの仕事がメインの日系の広告代理店でした。1980年代には、TBWAと提携をしていたこともあるし、ヨーロッパやアメリカにもたびたび出張する機会がありました。当時は、海外の広告業界の本もいろいろと読みあさっていたし、海外の広告業界紙をウォッチしていました。ここ数年、広告業界のグローバルトレンドからは遠ざかっていましたが、今回の大森さんのお話を伺い、昔の記憶が蘇ってきたわけです。

この記事を書いている途中、1週間ほどシンガポールに行くことになり、旅行中に記事をアップしようと思っていたのですが、結局は帰国してからアップすることになってしまいました。

実はシンガポール滞在中に、電通シンガポールの元社長の紹介で、急遽打ち合わせをすることになった現地広告代理店の社長が、元オムニコムでアジアパシフィックでM&Aを仕掛けていたキーマンだと知り、これがセレンディピティーというやつかと思ったわけです。

この社長は、シンガポール人なのですが、オムニコムの媒体エージェンシーのOMDに数年在籍していて、オムニコムでM&Aを担当、ニューヨークのオムニコム本部でも働くことを勧められたそうですが、それは断ったとのことでした。この人も世界の広告業界の歴史とともに生きてきた人だったわけです。

世界の広告業界は目まぐるしく変化しているので、自分自身のための情報整理という目的で、このような記事を書いてみました。このような内容に興味を持つ人はそれほど多くないかと思いますが、何かの参考になればと思います。

世界の広告業界の変遷

20世紀の広告業界の歴史は、ニューヨークのマジソンアベニューと、ロンドンが中心で、J.ウォルター・トンプソン、サーチ&サーチ、オグルヴィー&メイザー、ヤング&ルビカム、マッキャン・エリクソン、DDB、BBDO、レオ・バーネットなどが業界に君臨していました。

やがて、アメリカでは、ニューヨーク以外にも、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ミネアポリス、オレゴンなどの都市で、ホットショップと言われる小さなクリエイティブ会社が、斬新なクリエイティビティで、広告業界に登場してくるわけです。

そのようなホットショップの代表格が、シャイアット・デイだったり、TBWA、ファロン・マケリゴット、そして、グッビー・シルバースタイン&パートナーズ、ワイデン・ケネディーなどがあります。

20世紀後半から最近まで、広告業界のM&Aが目まぐるしく進展し、うっかりしていると、どことどこが合併したのかがよくわからなくなっていたので、自分の理解をキャッチアップするために、図式化してみたのが冒頭の図です。

広告会社は、WPPやオムニコムなどのホールディング会社が老舗広告代理店を次々と吸収していくのですが、一番上の図は、現在のトップ10の広告代理店を並べてみたものです。世界の広告業界の4大グループは、WPP、オムニコム、ピュブリシス、インターパブリック(IPG)です。その周辺にあるのが、電通グループであり、アクセンチュア、デロイト、PWCなどのコンサルティング系です。あとは、IBM系だったり、ブルーフォーカスという中国の会社だったりします。

昔の広告業界からすると、全く異なった企業名ですよね?おまけに、アクセンチュアとか、デロイトなどコンサル系の企業が広告代理店として電通と同等の規模となっています。コンサル系の会社は、デジタル広告だけをやっているのかなと思っていたら、アクセンチュアは、今をときめくクリエイティブショップのDroga5を買収していたんですね。クリエイティブの分野でもパワーを増強しているようです。

しかも、Droga5の創立者のクリエイターのデイヴィッド・ドロガが、アクセンチュア・インタラクティブのCEOに就任していて、2022年4月には社名をアクセンチュア・ソングと改名しています。

従来の名門広告代理店は合併することでかろうじて規模を保っている感じですが、それをコンサル系が追い上げているという構図です。単独の会社規模では、もはやコンサル系が優位に立っているのですが、大手代理店はホールディング会社の規模で業界での優位を維持している感じです。

ホールディング会社の名前だけだと、実際にどのような広告代理店が入っているのかわかりませんよね?というわけで、4大グループの広告代理店構成を見ていきたいと思います。これらは、現時点での情報をもとに作ったものですが、業界は刻一刻と変化しているので、皆さんがご覧になる頃には状況が異なっているかもしれませんが、ご容赦ください。また、グループ企業のすべてを網羅しているわけではありませんので、そのへんも重要な企業の漏れがあったら、申し訳ありません。

英国発祥の世界最大のWPPグループ



ワンダーマン・トンプソンというのは、広告代理店の老舗のJWT(Jウォルター・トンプソン)とワンダーマンが合併してできた会社です。以前、「電通ワンダーマン」という会社がありました(現在の電通ダイレクトソリューションズ)。オグルヴィーは、元々はオグルヴィー・メイザーという名前の会社でしたが、現在はオグルヴィーという名前になっています。

グレイという老舗代理店は、日本で大広と合弁会社「グレイ大広」という会社を作っていましたが、1999年に合弁を解消。グレイワールドワイドとなっていましたが、サンフランシスコを拠点として世界展開していたデジタル系のAKQAに吸収されていました。

かつては日本に「電通ヤング&ルビカム」という広告代理店がありました。電通とアメリカのヤング&ルビカムの合弁の会社でした。VMLY&Rという広告代理店の後半のY&Rというのがヤング&ルビカムの名残です。

WPPのような大手ホールディング会社は、広告代理店だけでなく、マーケティングコミュニケーションに関わるあらゆる機能の会社を傘下に持とうとします。ブランディング系の会社、マーケティングコンサルタンシー、メディアエージェンシー、PR会社などです。

ランドーアソシエイツは世界的に有名なブランディングの会社です。フィッチも同様なのですが、これが「ランドー&フィッチ」と一つの会社となって、WPPの中にいます。

カンターはマーケティングや調査の会社です。そしてグループMはメディア・エージェンシーですが、この中にマインドシェア、エッセンス・メディアコム、ウェイブメイカーなどの世界的に大手のメディア・エージェンシーが含まれています。

図の一番下の段はPR代理店なのですが、ここも世界的に有名なPRエージェンシーが名を連ねています。ヒル&ノールトンとパブリック・ストラテジーズが合併して、ヒル&ノールトン・ストラテジーズになっています。オグルヴィーPR、FGSグローバル、BCWとPR系も錚々たる会社ばかりです。最後のBCWは、バーソン・マステラと、コーン・ウルフというそれぞれ老舗PRエージェンシーが合併してできた会社です。

WPPはロンドンを拠点に(登記上はアイルランドですが)、マーティン・ソレル(現在はWPPを去っていて、S4キャピタルという独自のエージェンシーを作っています)という英国人が作り上げた、広告業界の大帝国と言えるかと思います。

ニューヨークで生まれたオムニコム



ニューヨークの広告業界の合従連衡で誕生したのがオムニコムです。DDB(ドイル・デーン・バーンバック)と、ニーダム・ハーパー、BBDOの合併のニュースは、当時の広告業界を震撼させました。TBWAはパリを拠点とするヨーロッパ系の代理店でしたが、アブソルートウオッカの米国キャンペーンをきっかけに世界的なエージェンシーネットワークとなっていきます。TBWAは世界各国のローカル広告代理店を次々と買収していくのですが、それが丸ごとオムニコムの傘下に入ることになります。

アップルの広告で一世を風靡したロサンゼルスのシャイアット・デイは、TBWAに買収され、TBWAシャイアット・デイとなりますが、オムニコムに吸収された形となりました。

日本のTBWA博報堂は、TBWAと博報堂の合弁の会社です。

GS&P(グッビー・シルバースタイン&パートナーズ)は、サンフランシスコを拠点とするクリエイティブエージェンシーでしたが、オムニコムの傘下となっています。

DASグループはマーケティングエージェンシー、インターブランドは世界的に有名なブランディング会社です。OMGはオムニコムのメディアエージェンシーですが、OMD、ハーツ&サイエンス、PHDなどのメディアエージェンシーが含まれています。

PRエージェンシーもいくつもあり、フライシュマン・ヒラード、ケッチャム、MMC、ポーター・ノヴェリなどの会社があります。

オムニコムはWPPに次ぐ世界第二位のグループですが、こちらもオムニコム帝国という感じです。

フランスが作りあげた世界帝国、ピュブリシス



ピュブリシスは、パリを拠点とするネットワークですが、ピュブリシス・サピエント、レオ・バーネット、サーチ&サーチ、BBHなどのクリエイティブエージェンシーを傘下に持っています。ピュブリシス・サピエントは、サピエント・ニトロ、レーザーフィッシュ、DMB&B(ダーシー・マシアス・ベントン&ボウルズ)などをピュブリシスに吸収統合したものです。

サーチ&サーチは英国のサーチ兄弟が作った世界的なクリエイティブエージェンシーですが、アメリカのファロン(元はファロン・マケリゴット)も吸収していました。

ピュブリシスは他にデジタル系のMSLとメディアエージェンシーのピュブリシスメディアを持っています。ピュブリシスメディアの中には、スターコムやゼニスなど老舗メディアエージェンシーなどが含まれています。

4大ネットワークの一つ、インターパブリック(IPG)



インターパブリックグループの中核になっているのはマッキャンとFCBですが、マレン・ロウ・グローバル、R/GAなどが含まれています。マレン・ロウ・グローバルの中には、ロウ&パートナーズ、アミラティ・プリス・リンタス、マレンなどが含まれます。いずれも由緒あるエージェンシーばかりです。

デジタルやエクスペリエンス・エージェンシーとして、MRMやモメンタムなどがあります。またメディア・エージェンシーとしてUMがあります。

PRエージェンシーとしては、ウェーバー・シャンドウィックがあります。

これ以外に、電通や、コンサル系の代理店があります。またWPPの創始者のマーティン・ソレル率いるS4キャピタルの動向も見逃せません。

広告業界のレジェンドたち



世界の広告業界を牛耳ってきたレジェンドたちです。これ以外にも多くのレジェンドがいて、誰を入れるべきかは悩むところですが、とりあえず私の個人的な印象でリストアップしてみました。

広告代理店のありかた自体も変化の途上にあり、「広告」という言葉自体もこのままでいいのかという議論もあります。業界は今後ますます変化していき、20世紀の広告業界を作ってきたレジェンドたちの功績もどんどん過去のものになっていきます。

会社の名前に残っていたレジェンドたちの名前さえも、次々と消え去っていくのが何とも悲しいですが、どんなに業界が変化していっても数多くの天才たちが広告を通して世の中を面白くしていたという事実は決して忘れてはならないと思います。
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世界のクリスマスコマーシャル2022(その5)-Boots, CocaCola, Amazon, LVなど

2022-12-24 22:52:54 | 広告

2022年の世界のクリスマスコマーシャルを集めていたら、もうクリスマスになってしまい、紹介しきれなくなってしまったので、一気にご紹介したいと思います。

BOOTS UKの “Joy for All"



英国小売店のBootsのクリスマスコマーシャルです。Lydia West演じる女性が、バスの中で不思議な眼鏡に遭遇します。それをかけると、周りの景色が楽しくゴージャスな雰囲気に変化します。



最後は、眼鏡を取っても、その楽しさが現実のクリスマスに。ラストシーンで、サンタクロースがその眼鏡を持ち帰るのが示唆されますが、“S.C."というイニシャルは「サンタクロース」のSとCだったのですね。

広告代理店はThe Pharm VMLY&Lという会社。プロダクションは、Academy Films、そして音楽はホール&オーツの“You Make My Dreams"という曲。

コカコーラの「母親のレシピ」



コカコーラのグローバルコマーシャルです。日本でも放映されているのですが、日本版は短すぎてストーリーがいまいちわかりませんね。すでに他界した母親のレシピにしたがって、クリスマスのパイを作ろうとしている男性。それを見守る母親というストーリーです。



“Just Like Mama Used To Make"という副題がついているのですが、亡くなった母親が作った料理の味が忘れられず、母親が残した手書きのレシピを頼りにパイを作るのですが、試行錯誤して何とか完成させます。

その過程で登場する母親の姿とコカコーラ。最後に登場するコピーは、“Holidays always find a way" は「ホリデーはいつも道を見つける(ホリデーシーズンになればすべてが何とかなる)」というような感じです。

コカコーラ社のクリスマスコマーシャルはもう一つあって、コカコーラのトラックが何台も走っているだけというバージョンがあります。



日本で放映されているコマーシャルは、この二つが合体しているので、よくわからなくなってしまっているのが残念です。

アマゾンの“Joy Is Made"



今年のアマゾンのコマーシャルは、娘の好きなスノードームの世界を自分の家の温室内に作ってしまうというものです。



ロンドンのLucky Generals というエージェンシーが制作したものですが、監督はニュージーランドのTaika Waititiを起用しています。

ルイヴィトンのクリスマス



“Happy Together"という曲(1967年、タートルズ)に乗せて、テディベアらがホリデーを楽しむという作品です。



Gary Freedmanという監督が映像を作っていますが、この人はコマーシャル監督として数々の賞を受賞しているすごい人です。

グッチの「ギフト」



Jordan Hemingwayという人が映像を作っています。豪華な鉄道の旅が進行していきます。ストーリーはよくわかりませんが、上質な旅という雰囲気が伝わってきます。



ペプシの「ピルク&クッキーズ」



ペプシコーラは、少し前から「ピルク」という妙な飲み方を宣伝していました。ペプシと牛乳をブレンドした飲み方で、それを「ピルク」と名付けました。クッキーにとても合う飲み方だということです。



クリスマスの夜にサンタクロースがこっそりピルクを飲もうとしているところに、こっそり忍び寄る女性(Lindsay Lohan) 。サンタクロースの姿は消えているのですが、テーブルの上に残されたピルクとクッキー。それを女性が飲むというストーリーです。この飲み方、「ダーティー・ソーダ」とも呼ばれているようなのですね。日本でも流行ったら面白いですが、健康によいのかどうか何ともよくわかりません。

マークス&スペンサーのクリスマス



マークス&スペンサーは英国の有名なスーパーですが、ここも毎年素敵なクリスマスコマーシャルを作っています。



贈り物でみんながハッピーになるというのを映像で表現しています。

メリークリスマス!

海外のクリスマスの雰囲気を少しは感じていただけましたでしょうか?クリスマスの海外のコマーシャルはまだまだいっぱいあります。もう少し早めに仕込みをして、集めておけばよかったと反省をしております。それでは皆様、メリークリスマス!そしてよいお年を!

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世界のクリスマスコマーシャル2022(その4)-英国スーパー、ASDAの「エルフ」

2022-12-23 15:58:49 | 広告
Asda(アズダ)は英国のスーパーではトップ3に入るメジャーな会社ですが、今年は、エルフ(妖精)のキャラクターを使ったクリスマス向けキャンペーンを展開しています。

これを演じているのは、ウィル・フェレル(Will Ferrell)というアメリカの喜劇俳優ですが、2003年に公開された「エルフ—サンタの国からやってきた」というコメディー映画に登場したキャラクターをそのまま起用しています。この原作の映画を知っていないとよくわからないかもしれないのですが、まずは今年のコマーシャルをご覧いただきましょう。



ストーリーをざっと解説いたします。

2003年の映画の設定では、この「バディ(Buddy)」という名前の妖精は、人間なのですが、赤ん坊の時にサンタクロースに北極の妖精の国に連れ去られ、妖精として大人になったキャラクターです。映画では実の父親が住むニューヨークにやってきて、そこで引き起こされるドタバタ喜劇がテーマの映画です。

このコマーシャルでは、ニューヨークではなく、妖精が英国のASDAのスーパーにやって来たという設定です。いたるところに映画を連想させるセリフやシーンが散りばめられていて、原作を知っている人には抱腹絶倒なんですね。

例えば、冒頭のシーンは、ニューヨークの雑踏でタクシーにぶつかって“Sorry"というシーンがあるのですが、それを再現していますし、彼の口癖の“Son of a nutcracker" (こんちくしょう)というセリフも出てきます。また、「これはコスチュームではない。私は妖精なので」というセリフも原作にも出てきます。

このスーパーでスタッフを募集しているという張り紙を見て、ここで働こうと思い、女性スタッフに連れられて、店内を見学することになります。しかし妖精なので、なかなかうまく適応できません。試食のお菓子をたくさん食べてしまって怒られたりします。



結局最後に、見事な飾り付けができているのを店長が見て、彼の採用を決めるというストーリーです。

では、原作の映画のトレーラーをご覧ください。



原作から20年近くたっているのに、ほぼそのままですね。この映画は英国では、クリスマスの映画としては最も人気のある映画の一つになっていたそうです。

主演のウィル・フェレルは1967年アメリカ生まれ。喜劇俳優として「奥様は魔女」などにも出ていた人なのですが、ブッシュ大統領の役でステージに登場して話題となったこともあります。YouTubeでWill Ferrel George Bushと検索すると面白い動画がいくつも出てきますが、例えばこちら。“You're Welcome America"というお芝居でジョージ・ブッシュの役をやっている場面です。



さて、ASDAの妖精のコマーシャルですが、キャンペーンのタイトルはこのようになっています。



“Have your elf a merry Christmas" というのは、「あなたの妖精にメリークリスマスを」という意味なのですが、もともとは“Have yourself a merry Christmas" のsが抜け落ちてしまってるというジョークなんですね。つまり「あなた自身にメリークリスマス」というメッセージです。

コマーシャルの中にもセルフチェックアウトのレジのsを消して、elf checkoutになっているところとかもクスッとするポイントです。

この作品を作った広告代理店は、Havas London、プロダクションはRattling Stickという会社。監督は、Danny Kleinmanという人です。数々の受賞作品を作っている人ですね。

https://www.rattlingstick.com/directors/daniel-kleinman/

今年の年末商戦、英国ASDAの売上はどれだけ伸びたでしょうか?他のスーパーもいろいろと工夫を凝らしているので競争は熾烈だと思いますが。


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世界のクリスマスコマーシャル2022(その3)- 英国の大手スーパー、セインズベリーのクリスマス・プディング

2022-12-23 08:55:56 | 広告

イギリスではクリスマスのコマーシャルは各社気合を入れて制作しています。流通小売業は特に、この時期のコマーシャルは毎年相当な制作予算を投じるので、見応えのある作品がいっぱいです。今回は英国スーパーの大手セインズベリーの作品をご紹介しましょう。

まるでシェイクスピアの時代の歴史劇のような設定で、“Once upon a pud”(昔昔、とあるプディングのお話)というタイトルの作品です。宮殿のカウンテス(伯爵夫人なんですが、もはや女帝ですね)がクリスマスのパーティーのための料理のメニューを吟味するところからストーリーが始まります。

このお話の中心になるのは、デザートとしてのクリスマス・プディングなのですが、実は女帝は昔ながらのクリスマス・プディングが大嫌い。若手シェフがデザートを任せられるのですが、ご機嫌を損ねたら、首をはねられてしまいそうです。さてどうなることでしょうか?まずは、こちらのコマーシャルをご覧ください。



https://youtu.be/RsbUYmK-Ohg

それではこの作品を細かく見ていきましょう。



まず、最初のオープニング。昔話の始まりのように、「はるか遠くのとある国で、パーティーが計画されていました」というナレーションが入ります。この声は、英国ではお馴染みの俳優のスティーブン・フライ(Stephen Fry)です。大真面目に物語を語っているところがクスッときます。

このオープニングのお城、よく見るとドラゴンが空を飛んでいますね。



宮廷のシェフたちが、パーティで出す予定の料理を持って登場してきます。



カウンテスが新聞のようなものを見ているのが写りますが、このタイトルが“Once Upon the Times”となっています。御伽噺の出だしは、“Once upon a time”(むかし、むかし)というのが定番なのですが、この“time”を“Times”としているところが笑えます。



シェフたちのプレゼンテーションは、どれもカウンテスからOKが出るのですが、最後のデザートのクリスマス・プディングを持っている若手シェフに対しては、ダメ出しが入ります。



プディングの炎を息で吹き消した後で、「私はクリスマス・プディングは嫌いなのよ。何か違うものを持ってきなさい。さもないと…」生命は無いと言っているような雰囲気です。



若手シェフは、恐怖におののきながらも、日夜新たなメニュー開発を続けます。



そしてパーティー当日。壮大な雰囲気の宴会です。



カウンテスがデザートを持ってくるように指示をすると、それは一瞬、クリスマス・プディングに見え、パーティー会場は凍りつきます。



怒りにみちたカウンテスの顔。

しかし、それを一口食べると、カウンテスの表情が変わります。



それは、従来のクリスマス・プディングではなく、キャラメライズド・ビスケット・プディングだったのです。

カウンテスは、一言“That’s a bit of me”(これは私好みだわ)。“Bit of me”というのは俗語で、「私が求めていたもの」というような意味になります。

パーティー会場は大きな歓喜に包まれて、エンディグ。 “Taste the difference”(違いを味わってください)というスローガンが決まります。



もはや壮大な映画です。すごい数の俳優をキャスティングし、ストーリーも編集も秀逸です。

この作品でカウンテスの役を演じているのは、アリソン・ハモンドというイギリスでは超人気の女優です。テレビの有名番組のキャスターもしているようなので、誰もが知るタレントです。

この作品を監督しているのがTim Godsallというディレクターで、カンヌとか世界的な広告賞をいくつも受賞しているすごい人です。

このコマーシャルを制作している広告代理店はワイデン+ケネディ(Wieden+Kennedy)のロンドン。制作プロダクションはアノニマス・コンテント(Anonymous Content)という会社です。

あと、忘れてならないのが音楽です。中世の英国の音楽のような雰囲気ですが、実は2000年にリリースされたアメリカのロックバンド、Wheatusの“Teenage Dirtbag”という曲のエリザベス朝アレンジというのが洒落ています。この曲は、One Directionもカバーしていましたね。そういう細かなところもすごい作品です。



https://youtu.be/FC3y9llDXuM

背景を知ると何と奥が深いんでしょう。クリスマスにはとても印象的なコマーシャルです。
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