まわる世界はボーダーレス

世界各地でのビジネス経験をベースに、グローバルな視点で世界を眺め、ビジネスからアートまで幅広い分野をカバー。

平均寿命で香港が首位になった理由とは

2012-07-29 12:37:11 | トラベル
7月26日に発表された、厚労省の調査で、
香港が男性80.5歳、女性86.7歳で、男女
とも世界の首位になったという記事が、
マスコミを賑わせました。日本の女性の
平均寿命が、それまでの世界の首位から
転落したというのが記事のポイントだっ
たのですが、しかし香港が首位になった
というのもインパクトがありましたね。

実際に厚労省が発表した調査はこちら。
表6平均寿命の国際比較
香港は、参考として欄外に登場します。
香港は中華人民共和国の一部なのですが、
特別行政区で、通貨もパスポートも法律
も違うので、別の国といってよいでしょう。

しかし、香港がどうしてこんなに平均
寿命が高いのでしょうか?住環境は決して
よいとはいえず、美しい自然に溢れている
というイメージもなく、高温多湿で不快な
気候の時期が多い、ストレス満載の香港
なのに最長寿国というのはちょっと不思議
な感じです。

香港の食事と言えば、チャーシュー飯や

こちらの麺類など...

こんなのばかり食べてたら、あまり
健康的なバランスがよいとは言えませんね。

でも、ちょっと古い記事によれば、調査会社
が香港市民の価値観を調べたそうなのです。
10年前は41%しか重視していなかった
「健康」が、84%で首位の項目になったとか。

また別の調査で、香港のレイシ(霊芝)の
販売量が10年間で1183%も増えたという
データもあります。購入している人の割合
が最も高かった健康関連商品だったという
ことです。

その他、豆乳とか、亀ゼリーとか、中国茶
とか、身体によさそうな物が町中に溢れて
います。こういうものなども長寿に繋がって
いるのかもしれません。

いろいろ香港長寿の理由を探ってみようと
思ったのですが、なかなかこれという文献
が見当たりません。ちょっとここで、自分
ながらの勝手な理由をを思いつくままに
ご紹介してみたいと思います。

香港長寿の理由その1
医食同源の考え方

香港の街では、漢方関係のお店や、健康
食品のお店がやたら目につきます。苦そう
な中国茶のお店もあちこににあり、亀ゼリー
のお店もチェーン店がいくつもあります。
ちょっと体の具合が悪いときでも薬ではなく、
スープとか飲み物で直すという伝統があり
ます。西洋医学の薬に頼らないこういう
健康管理の仕方が長寿に結びついている
のではないかということが考えられます。

こちらは亀ゼリーの有名チェーンの海天堂。
身体の不調に合わせていろんなお茶も売ら
れています。


香港長寿の理由その2
漢方医の存在と医者に行く事の気軽さ

香港には通常の西洋医学の医者の他に、
漢方医というのがかなりあります。
西洋医学の限界というものもあるのかな
という気がします。ひょっとして漢方は
長寿に関係しているのかもしれません。

香港長寿の理由その3
お茶を飲むこと

飲茶では基本はお茶です。ポーレイ
(プーアル)のようなかなり苦めのお茶を
飲みながら、食事をします。こういうお茶
が油の吸収を防ぎ、健康に貢献しているの
かもしれません。

香港長寿の理由その4
タバコを吸わないこと

一年前のニュースで、香港市民の喫煙率が
過去30年で最低を記録したというのが
ありました。香港市民の喫煙率は11.1%と
1982年以来最低を記録したそうです。
これは2009年のタバコ税の増税と喫煙
禁止区域の拡大が効果を見せたものと考え
られています。喫煙率の低下も長寿に影響
を与えているんでしょうね。

香港長寿の理由その5
適度なストレス

香港の人のサイトに出ていたのですが、
香港はちょっと外に出ると刺激がいっぱい
あり、そういうのが老人にとってはよいと
ありました。静かすぎて環境が良すぎると、
ボケてしまったりするのですが、ちょっと
緊張感があると逆にいつまでも若々しく
いられるのかもしれません。

こちらは歩道を歩く老人の後ろ姿。

香港長寿の理由その6
運動になる坂道と狭い歩道

香港は坂道が多く、歩道も狭く、老人に
とっては(というか若い人にとっても)
快適とは言いがたい環境です。でもこう
いうのはかなり運動にはなります。また
細い歩道で、人をよけながら歩くことは、
かなりの反射神経の鍛錬になります。
こういうのも老化を防止してくれている
のかもしれません。

香港長寿の理由その7
親戚家族が年寄りを助けるという伝統

香港は地域が狭いので、老人をひとり
ぼっちにさせておかない伝統があります。
同居してないにしても週末にはみんなで
食事をしたりという光景はよく見ます。
日本のように孤独な老人は少ないのかも
しれません。

香港長寿の理由その8
介護の充実

香港にはフィリピンやインドネシアの
メイドがいっぱいいます。車椅子の老人
の世話をしているメイドもよく見かけます。
メイドをうまく使うという文化があるため
(また料金も安いと思われる)、メイドを
使うほうも、使われるほうも、割り切って
対応できているようです。メイドも結構、
一生懸命世話をしています。

香港長寿の理由その9
長寿を祝う伝統がある

香港では、旧正月や、中秋節などでは長寿
を祈る伝統があります。中秋の月餅などは
もともとは、不老長寿に関連のある風習です。
こんなのも長寿に影響しているのかもしれ
ません。

これは旧正月に壁に貼ったりする物ですが、
長寿に関連したメッセージなども人気です。

香港長寿の理由その10
街にやたら活気がある

街市とか見るとやたら活気があります。
人の歩くスピードも、エスカレーターの
速さも速いです。生活のリズムが香港映画
そのもので、やたら元気です。ひょっとして
こういう部分が香港の老人を元気づけていた
りするのかもしれません。

あと、街中にマーケットがあり、新鮮な食材
で料理をしようというのもあるかもしれません。

こちらはマーケットの様子。

新鮮な野菜や、魚、肉などが売られています。

さらに、あまり落ち込まないような思考性とか、
悩みを溜め込まない性格というようなものも
あるかもしれません。また狭い土地に沢山の
人が住んでいるので、身内や親戚、知りあいは
何かあったら助け合うという繋がりなどもある
のかもれません。

以上の理由は、自分で思いついたものだけなの
でもっといろんなことがあるのかもしれません。
単に食生活とか、医療とかだけの問題ではなく、
政治、社会、文化など様々な要素が複合的に
影響しているとは思います。日本も香港に学ぶ
ところも多いのではないかと思います。

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カンヌでフィルム・クラフトの金賞を受賞したインドのCM

2012-07-20 18:43:20 | インド
第 59 回カンヌライオンズ 国際クリエイティビ
ティ・フェスティバル(Cannes Lions International
Festival of Creativity 2012)が、6 月 17 日
から 23 日、フランスのカンヌで 開催されました。
テレビCMや広告クリエイティブの世界では、
アカデミー賞に相当する権威ある賞なのですが、
全部で15ある部門の中でフィルム・クラフト(CM
映像の演出、撮影技術、編集、音楽などを評価する
部門)のカテゴリーで、インドの新聞「ムンバイ・
ミラー」(Mumbai Mirror)のCMが金賞を受賞しました

こちらがそのテレビコマーシャル。長さは2分です。
モノクロフィルムで映画のように描かれるムンバイ
の街頭。メガホンを使って、悲痛な声で何かを訴え
ている人が登場してきます。



まず最初に登場する眼鏡をかけたインテリ風の男性。
メガホンで最大音量で叫びます。



「彼らは、私の本を燃やした!私の本を、私の言葉
を燃やした!でも、彼らは、私の声を黙らせること
はできない!私は、ムンバイである!私は、ムンバイ
である!」彼のそばには、燃え続けている書物の山。

中国の歴史で「焚書坑儒」(ふんしょこうじゅ)と
いう秦の始皇帝の時代の出来事が思い出されますが、
実際に視覚的に映像で見ると、書物が燃えている
映像は悲壮感が漂っています。

画面の左下隅に2010年10月2日、11ページの文字。
これはある記事がムンバイ・ミラー紙に掲載された
日付とページを意味しています。2010年に、ムンバイ
大学の英語の授業で使われていたロヒントン・ミス
トリー(Rohinton Mistry)というカナダ在住のインド
人小説家が書いた、「かくも長き旅」(Such a Long
Journey)という小説が、政治的圧力で、授業のカリ
キュラムから外されたという事件があったようです。
ムンバイを中心に勢力の強い右翼系政党のシブ・セナ
党(Shiv Sena)が、この書物の排斥を後押しした
ようなのですが、そういう事件が背景にあっての
ワンシーンです。

メガホンで怒鳴っている人物は、ロヒントン・ミス
トリーではなく、また俳優でもなく、一般から
選ばれた名も無い市民のようですが、作り物の
コマーシャルの世界とは全然違う、リアルな叫び
が伝わってきます。



二番目のシーンでは、歩道橋の上で子供を連れた
主婦がメガホンで叫んでいます。右上には
2011年9月29日12ページの文字が...
「私たちの家に配達されたミルクは、排水溝の水
で薄められていました!その同じミルクを私は子供
に飲ませなければならなかった!どうして?
教えてください!どうして私はそんなミルクを
子供たちに飲ませないといけなかったのか!
私はムンバイ、私はムンバイです!」



シーンは変わって、2010年8月23日、7ページ。
図書館のような場所に、スラムの子供たちが...
「ぼくらのベッドはこのテーブルよりも小さい!
食べ物は週に2回しか食べられない!
食べ物を食べる場所は、排泄をする場所と同じだ!
ぼくはムンバイ!ぼくはムンバイだ!」
図書館で本を読んでいる人たちが、うるさそうに
子供達を眺めています。

そして4つ目のシーン。2011年2月12日、2ページ。
車道に立った男が、向かってくる車に向かって
メガホンで叫びます。



「この街は俺の故郷だ!俺が属しているのはここだ!
わかるか?!貴様らの政治的なポスターを俺の家の
壁にベタベタ貼られるのは我慢できない!わかったか!
離してくれ!いいか、政治的なポスターはダメだぞ!
聞こえるか!俺はムンバイ、俺はムンバイだ!」
叫び続ける男は、強制的に連れ去られていく。



シーンは静かなムンバイの鉄道駅らしい風景。
左上にメガホンが見えています。
MUMBAI SPEAKS
EVERY MORNING
(ムンバイは毎朝、語っています)
という文字。
そして
ARE YOU LISTENING?
(あなたは聞いていますか?)
そして何人かの人が一人ずつ、”I AM MUMBAI”と
語りかけます。
ラストシーンは、通勤の列車の窓から半分外に出た
手に持たれ「ムンバイ・ミラー」の新聞。



モノクロの映像の中に”Mirror”の文字だけが赤く
なっているという演出がまた渋いですね。

「ムンバイ・ミラー」という新聞なんですが、
これは「タイムズ・オブ・インディア」という
英字新聞としては世界最大の発行部数の新聞を
発行しているタイムズ・グループ
(Bennett, Coleman & Co. Ltd.)がムンバイ
地区で発行している英語の日刊タブロイド新聞
で、発行部数は約60万部。2005年に創刊された
物です。

普段はあまり取り上げられない民衆の声を積極的
に取り上げるというのが、このコマーシャルの
メッセージなのですが、新聞社の編集方針として
はかなり明確です。どんな小さな声も、発言力
のない人々の声も、メガホンのように大きな声
で、みんなに聞こえるようにしてくれる新聞。
わかりやすいですね。

ちなみに、このタイムズ・グループの本社は、
ムンバイの鉄道駅のビクトリア・ターミナス
(今ではチャトラパティ・シヴァージー・
ターミナス駅と呼ばれています)のすぐ
向かいにあって、以前、仕事で、このビルに
は何度か訪れたことがあります。そういえば
ここの社長のBhaskar Das氏と、イタリア料理
をご一緒したことなどもありましたが、この
人、広告関係のシンポジウムとかでエキサイト
してくると、ムンバイ・ミラーのCMの最初に
登場する男性のような感じで叫んでいたのを
思い出します。ひょっとして、モデルはこの人?
メディア界のロックスターという感じの人でした。

さて、このコマーシャルの監督は、アビナイ・デーオ
(Abhinay Deo)という人。昨年「デリー・ベリー」
(Delhi Belly)という映画を監督したことで話題に
なりましたが、“I AM MUMBAI”のコマーシャルで
その名声は一気に国際的になりましたね。

このコマーシャルでは、登場人物は一切プロの役者
を使わなかったそうです。これまでカメラの前に
一度も立ったことのない普通の人をオーディション
し、二日間のワークショップで、自分の気持ちを
叫びで伝えるトレーニングをしたそうなんですが、
見ればみるほど悲痛さが伝わってきます。本物の
市民(スラムも含めて)の力強さなんですね。

撮影場所にはカメラが何台か設置されていて、
通行人のリアルな反応を撮影したらしいのですが、
ドキュメンタリーよりも、もっとドキュメンタリー
な雰囲気が伝わってきます。周りの人の反応が
演技ではないからなんでしょうね。

インドのコマーシャルはこれまで、奇想天外な発想
で、こんなのあり?という表現の物が多く、映像の
技術的な部分で評価されることは少なかったのです
が、フィルム・クラフト部門でインドのCMが受賞
することは画期的なことです。このカテゴリーで
インドが金賞を受賞するのは初めてのことのようです。

このコマーシャル、最初見たときは、あまりよく
わからなかったのですが、見れば見るほど、
訴えるものが切実に伝わってきます。いやあ、
素晴らしい作品ですね。

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