まわる世界はボーダーレス

世界各地でのビジネス経験をベースに、グローバルな視点で世界を眺め、ビジネスからアートまで幅広い分野をカバー。

月にまつわるつきない話

2013-09-21 17:14:23 | 中国

中秋の名月でした。
香港も中秋節で20日の金曜日が祝日。
東京でも奇麗な満月が見えていましたが、
上の写真は、自分で撮った物ではなく、
ストック写真です。

日本人は、月の模様に兎の姿を見ますが、
これは古代中国でもそうでした。
しかし、日本では月のウサギは餅を
ついていると言われていますが、
古代中国では、杵でついているのは、
餅ではなく、薬だったのだそうです。
それも、不老長寿の薬なのだとか。

古代中国の神話に、「嫦娥奔月」
(じょうがほんげつ)という話があります。
「嫦娥、月に奔る(はしる)」と読みます。
嫦娥(じょうが)というのは、美女の名前。
こうげいという英雄の奥さんでした。
こうげいは、天空に太陽が10個出現した時、
9個の太陽を弓で射落として、地球を救った
と言われるスーパーヒーロー。

彼はある日、不老長寿の薬を手に入れます。
それを奥さんの嫦娥(じょうが)に預けます。
その薬を狙って、悪党が嫦娥に迫った時、
嫦娥はその薬を奪われまいとして、
自らが飲んでしまいます。
すると、嫦娥の身体は宙に浮き、
そのまま月に行ってしまいます。



こうげいは、必死で月を追いかけます。
もちろん月に到達はできません。
こうげいは、嫦娥(じょうが)のことを思い、
月を見上げ、お供えをしたのだそうです。
これが中秋節の始まりと言われています。

日本のかぐや姫のルーツのような話です。
竹取物語のかぐや姫も最後は月に帰ります。
育ててくれたおじいさんとおばあさんに、
感謝の印として残しておくのが、不老長寿の薬。
月で兎が製造していたやつでしょうか?

しかし、その老夫婦は「かぐや姫がいないのでは
長生きをしても意味がない」ということで、その
不老長寿の薬を日本で一番、天に近い山で
燃やしてしまいます。その山が不死山となり、
今の富士山(ふじさん)になったのだとか。
不老長寿と、月と、兎が結びつきます。

そういえば、中国は2003年から、月探査計画を
進めていますが、そのプロジェクトの名前が
実は『嫦娥計画(じょうがけいかく)』。
今年(2013年)の末までに、「嫦娥3号」という
衛星打ち上げが予定されていています。
月面への軟着陸を目指しているのだとか。

中国、今年中に月探査機打ち上げへ

嫦娥(じょうが)が月に昇った時の
こうがいの募る思いが、時を超えて、
今実現するという壮大なストーリー。
ロマンの感じられるネーミングです。
かつてのアメリカやロシアを宇宙開発で
凌駕するというのが、中国にとっての
不老長寿の薬なのかもしれません。

テレサテンが歌い、後にフェイウォンもカバーした
「但願人長久」(タンイェンレンチャンジュウ)
という歌があります。月を見ながら遠く離れた
相手に思いを馳せるという内容の歌です。
こちらはフェイウォンのバージョン。



人に悲歡離合(悲しみや喜び、別れや出会い)有り,
月に陰晴圓缺(曇ったり晴れたり、満ちたり欠けたり)有り,
此の事 古(いにしへ)より全(まつた)きこと難(かた)し。
但だ願はくは人、長久にして,
千里 嬋娟(せんけん)を共にせんことを。


という歌詞があります。少し意訳してみると、
こんな感じになると思います。

月が晴れたり曇ったり、
満ちたり欠けたりするように
人には喜びや悲しみ、出会いや別れがある。
こういうことは昔から、思い通りにならない。
ただ願わくは、遠く離れているあなた、
ずっとずっと元気で、
そして地球のどこにいてもこの美しい月を
ともにに眺めることができますように。


この歌詞に出てくる嬋娟(せんけん)という言葉。
これは月のあでやかで美しいことを意味していて、
月の別名でもあるようですが、月に住んでいる
という嫦娥のことも意味しているようです。
月には兎だけでなく、月に昇っていった嫦娥も
住んでいるんですね。

この歌詞は、実は蘇軾(そしょく、1036ー1101)
という北宋時代の有名な詩人の詩です。


実はこの人、蘇東坡とも呼ばれていたそうです。
この「東坡」という文字、どこかで見たと思ったら、
「東坡肉(トンポーロー)」の「東坡」でした。
豚の角煮の料理ですが、蘇軾の好物だったとか、
料理をしながら書道に打ち込んでいる間に
煮込みすぎて偶然できてしまったとか諸説あります。

月は、時代を超えて、国を超えて、いろんな
物語を映し出す鏡のような存在。
月を見ていると、古今東西のいろんな物語が見えてきます。

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