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クリケット・ワールドカップ2023でのアフガニスタンとオーストラリアの伝説の試合

2023-11-08 18:21:20 | インド
2023年10月5日から11月19日まで、インドでクリケット・ワールドカップが開催されています。4年に一度開催のクリケットODIのワールドカップなのですが、今年はインドが開催国です。世界の10カ国が参加して、インド各地で試合が行われているのですが、11月7日にムンバイで開催されたアフガニスタンとオーストラリアの試合が素晴らしかったので、それについて語っておきたいと思います。

その前に、クリケットと言ってもあまり日本では人気がないので、このワールドカップのこともほとんど知られていないので、まずこれについて説明しておきたいと思います。

クリケットの国際試合は以下の3つのフォーマットで行われています。



一番左の「テスト」というのがクリケットの最も伝統的な試合形式です。基本的に2チームのみの対戦で、5日間をかけて戦います。もちろんランチタイムやティータイム(英国発祥のスポーツなのでこれは重要)があります。

しかしこんなに長期間の試合では、ワールドカップのような試合は不可能です。で、試合結果が1日で出るようにODI(ワンデイ・インターナショナル)という試合形式ができました。投球は6球で1オーバーという単位になっているのですが、1イニングの投球数を300球(50オーバー)と制約することで、試合が1日(約7時間)で終わるようにしました。この投球数に達しなくても、アウトの数が10になれば、そのチームの攻撃は終了します。

ODIの形式によるワールドカップは男子が1975年から開始しました。女子のワールドカップは何とそれよりも早く、1973年に開始しています。今回、インドで開催されているのはこのODI男子のワールドカップで、13回目のものになります。参加国は10カ国。総当たり戦で、上位4カ国が準決勝に進みます。また上位7カ国は次の2027年のワールドカップ出場のシード権が得られます。

T20I(トゥエンティ・トゥエンティ・インターナショナル)というのはさらに試合時間を短くできるようにした試合形式で、1イニングの投球数を120球(20オーバー)と制限しています。こちらもアウトの数が10で攻撃は終了です。T20と最後のIを付けずに使われることも多いです。男子のT20のワールド・カップは2024年にアメリカと西インド諸島合同で開催される予定です。また2028年のロサンゼルスオリンピックで採用されるクリケットはT20Iのフォーマットで開催されます。



上の図は、男子の国別ランキングです。T20I、ODI、Testと3種類の世界ランキングがICC(国際クリケット連盟)のサイトに出ています。どのカテゴリーもインドが世界の一位です。ちなみに日本はT20Iでは世界ランキングは50位です。アジアやオセアニアは世界のトップクラスの国が揃っているので、オリンピックの予選を勝ち抜くのも大変です。

こちらは女子のランキングです。



女子は「テスト」の試合は行われないので、ODIとT20Iだけですが、どちらもオーストラリアが世界ランキングのトップです。日本は世界ランキングの51です。女子もアジア圏は強敵揃いですね。

さて現在インドで開催中のワールド・カップのお話です。



参加国は、インド、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、英国、オランダ、パキスタン、アフガニスタン、バングラデシュ、スリランカの10カ国。まもなく準決勝が始まりますが、前回優勝国の英国はすでに最下位で敗退しています。インドは、これまで全勝している唯一の国で、準決勝進出をいち早く決めています。11月7日の試合でアフガニスタンに勝ったオーストラリアも準決勝に進むことが決まりました。

アフガニスタンがクリケットのワールドカップで活躍しているというのは、日本ではほとんど知られていない事実かと思います。アフガニスタンといえば、難民の話とか、タリバンの話ばかりで、クリケットが強い国という印象はほぼないかと思います。が実はクリケットの強い国なんですね。

今回のワールドカップでも、英国、パキスタン、スリランカ、オランダに勝利し、オーストラリアに勝てば、準決勝進出への希望があったのですが、残念ながら負けてしまいました。

オーストラリアとの試合に先立って、インドのクリケットのレジェンドのサチン・テンドルカルがアフガニスタン・チームを訪問したというニュースがありました。



中央のグレーのポロシャツを着た人物が、インドでは誰もが知る伝説のプレーヤーのサチン・テンドルカルです。インドのナショナルチームのキャプテンでもありました。どういう経緯で、彼がアフガニスタンチームを訪問したのかはわかりませんが、ニュース報道によれば、彼のアドバイスのおかげで、強敵オーストラリアを撃退するためのヒントを得たということです。

「遠くに飛ばす」とかは考えず、ボールに集中することが重要だというアドバイスだったそうです。そのおかげで、アフガニスタンのイブラヒム・ザドランは、この試合で、アフガニスタン・チームとしては初のセンチュリーを達成してしまうのです。



センチュリーというのは100ランということです。野球とかは「点」を競い合いますが、クリケットでは「ラン」を競い合います。野球だと走者がいない場合のホームランは1点ですが、クリケットでのホームラン(ノーバウンドで外周の境界線を超える)は6ラン、ゴロで境界線に到達した場合は4ランとなります。

一人のバッツマン(野球でいうバッター)はアウトにならない限り、延々と打ち続けられるので、ランを稼いでいけば100ラン=センチュリー達成も可能ということになります。しかし、センチュリー達成というのは快挙には違いありません。

イブラヒム・ザドランのセンチュリーのおかげもあって、先攻のアフガニスタンは291ランという圧倒的なランを稼ぎ出します。対するオーストラリアはこれ以上のランを達成できないと負けになってしまいます。これは相当なプレッシャーです。

バッツマンの後方のウィケットにボールを当てたり、ノーバウンドの飛球をキャッチしたりするとアウトになって、アウトが10になるとそれで攻撃が終了してしまいます。オーストラリアは数十球で次々とアウトを取られます。また球数もどんどん減っていきます。91ランの時点で、アウト数は7になってしまっていました。このままいけばアフガニスタンの勝利はほぼ確実でした。

ところが、ここで奇跡が起こります。オーストラリアの6番手の選手として登場したグレン・マックスウェル(Glenn Maxwell)が、まるで映画のような活躍をするのです。



何と、マックスウェルが201ランという歴史的な大記録を達成してしまうのです。しかも、途中、脚が痙攣して、走ることもままならない状態になってしまいました。しかし、彼はほぼ片脚で、6ランや、4ランを量産していきます。そして、ついにアフガニスタンに逆転勝利してしまうのです。規定投球数もあと20数球でつきる寸前でした。またあと3つアウトになればそこで試合は終了してしまうことろでした。信じられない展開で、オーストラリアの準決勝進出が決まりました。そしてアフガニスタンの準決勝への道が閉ざされました。

しかし、アフガニスタンがクリケットで頑張っているという事実、そしてこういう試合が行われたという事実を知ることができてよかったです。



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