まわる世界はボーダーレス

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シンガポールのワクチン接種促進キャンペーン

2021-05-30 22:23:51 | シンガポール

コロナウィルスの収束に向けて、世界各地でワクチン接種が進行していますが、欧米に比べると日本はワクチン接種の進行がかなり遅くなってしまいました。私は現在シンガポールに住んでいるので、シンガポールのワクチン接種の状況に関してレポートしたいと思います。

シンガポールは、市中での感染がほぼ収束していたのですが、2021年4月中旬以降、感染者ほぼ連日出るようになりました。5月に入ってから病院や空港でのクラスターなどがあり、一日の新規感染者が5月13日に24人となり、二桁の日が多くなるのですが、5月16日に38人を記録、5月19日にも34人、21日には30人となりました。(この数字はシンガポールへの入国時の検査でわかる感染者の数字は含まれておりません)

これを受けて、2021年5月8日以降シンガポールに入国する場合のホテル隔離の期間が、それまでの2週間から3週間に延長されることになります。これはハイリスク・カントリーズの場合ですが、日本もハイリスク・カントリーズに入っています。私は2月末から3月頭に2週間のホテル隔離を経験しましたが、ホテルの部屋から一歩も出られず、かなり厳しいものでした。

シンガポールへの入国は、国民と、永住権保持者、長期ビザ保有者のみに認められていたのですが、5月11日以降にハイリスク・カントリーズからの入国許可が停止になり、すでに許可を得ている長期ビザ保有者の入国許可も白紙になってしまいました。

さらに、規制が強化され、5月16日以降、飲食店はすべて持ち帰りとデリバリーのみとなり、集まりも最大2名までとなりました。その他いろいろと規制がありますが、この措置は6月13日までとされています。

さて、ワクチン接種のほうは、ファイザーとモデルナの二種類のワクチンが認可されていますが、2月下旬から70才以上の接種が始まり、3月初旬に60才以上、3月24日から45才以上、5月19日から40才以上の接種が始まっています。

日経新聞の2021年5月28日時点で、シンガポールの人口百人あたりの累計接種回数は65.4回。UAE、イスラエル、英国、チリ、米国に次ぐ上位国になっています。



人口百人あたりの接種完了人数は、シンガポールは28.34人。順位は、イスラエル、チリ、米国、UAE、英国の次の人数です。人口の3割くらいが接種を完了しているという感じです。



シンガポールは東京23区と同じくらいの面積の国土なのですが、40箇所くらいのワクチンセンターがあり、ワクチン接種は着々と進んでいます。

ちなみに私は、4月5日に第一回目のワクチンを接種、26日に2回目接種をしました。2月末にシンガポールに戻ってくる前までは、ワクチンに関してはそれほど積極的ではなかったのですが、シンガポールに戻った後は、ワクチン接種に関するためらいは全くなくなっていました。

日本では、ワクチンの副作用の危険性とかがクローズアップされたり、陰謀論のようなものもネットに出ていたり、ネガティブな情報が多すぎる気がします。ワクチン接種後に死亡したケースが出た場合の報道も、死因がワクチンが原因と特定できない場合でも、「ワクチン接種との関連性は不明」と報道されます。「不明」と言われた場合、ネガティブな思考回路になっている場合は、ワクチン接種は心配だと勝手に思ってしまいます。

ワクチン接種が原因でなくても、ワクチン接種後に死亡するケースはありえます。特に高齢者の場合、脳卒中や、心臓発作で亡くなるのは通常ありえることで、それがワクチン接種後にたまたま生じることもありえます。

シンガポールの場合、ワクチン接種後に死亡があった場合、MOH(保健省)は、ワクチンとの関連性を検証し、「死因はワクチンとは関係がない」ということを常に発表して、いたずらに不安を煽らないようにしています。

たとえばこちらのニュース記事がその一例です。



「57才の男性が3月5日のコロナワクチンの1回目の接種の翌日に心臓発作で死亡。5月24日の月曜日、これはワクチン接種とは関連性が無かったということを発表」という報道です。時間がだいぶたってからの発表でしたが、おそらくいろいろな憶測が広まっていたのでしょう。シンガポールの保健省は、ワクチン後の死亡に関しては、かなりきめ細かくその死因と、ワクチンとの関連性はないということをその都度告知しています。

そして、最近のワクチン接種促進のための告知キャンペーンがこちらの#iGodMyShotというもの。ワクチン接種を完了した高齢者たちの元気な姿を紹介し、ワクチン接種をアピールしています。



このキャンペーンロゴのVサインは、Vaccination(ワクチン接種)の頭文字のVなのですが、ワクチン2回接種完了も意味しているのだと思います。またコロナとの戦いの勝利のVictoryのVも意味しています。





こちらは、プロモーション動画。



登場しているのは、シンガポールでは誰もが知っているコメディ・ドラマ「プア・チュー・カン」の主人公プア・チュー・カンことガーミット・シン(Gurmit Singh)とその妻Rosieことアイリーン・アン(Irene Ang)の二人。お馴染みのシングリッシュで、ミュージックビデオ風に、ワクチン接種を早く受けようとアピールしています。



このドラマはPCKと省略して呼ばれることもありますが、1997年から始まり、大人気となったドタバタコメディです。黄色の長靴とカーリーヘアーがシンボルのガーミット・シンが使うコテコテのシングリッシュが評判でした。”Don’t Play Play!”という台詞なども流行語になりましたね。



ガーミット・シンは、昨年も政府の公式チャンネルで、コロナ対策啓蒙のビデオにも登場して、手洗い、マスク着用、ステイホームなどをアピールしていました。こちらがその動画です。



コロナという重いテーマを、明るくポジティブに取り扱っています。しかし、20年以上経っていても彼の人気は衰えていないというのがすごいですね。芸能人の少ないシンガポールでは、コメディアンも歌手も息が長いです。

こんな形で、シンガポールのコロナ対策は、着実に進んでいます。こういう国から日本のコロナ対策を眺めていると、もどかしさを感じるのですが早くワクチン接種が進むとよいですね。そして早くコロナを克服できるとよいですね。

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2020年の母の日に公開されたFacebookのコマーシャルに関して、一年後の母の日に語っておきたいこと

2021-05-06 14:34:03 | 新型コロナウィルス

一年前に作られたFacebook社の母の日に向けたコマーシャル。パンデミックが過ぎ去り、すでにこれが過去の作品となっているのではないかと思っていたら、今年も同じ状況が続いていて、あるいは昨年より状況が悪化している国もあり、このコマーシャルは、年をまたいで私たちに強く訴え続けています。というわけで、2021年の母の日に向けて、昨年の母の日用に作られたこのコマーシャルを紹介したいと思います。



生まれたばかりの赤ん坊の写真から映像が始まります。そして、“I was born during a quarantine”(私は隔離期間中に生まれました)というナレーションが聞こえてきます。



昔のことを知らない私たちは、最近のコロナ禍の話かと思ってしまいます。しかし、ナレーションが、あきらかにかなりの年齢の女性の声で、遠い昔を回想しているような雰囲気。ひょっとして、はるか未来からコロナ禍の現在を回想しているのかなと思えたりもします。

しかし、ちょうど100年くらい前にもスペイン風邪が流行っていて、世界はパンデミックになっていていて、そんな時代の隔離の中で生まれた女性の回想だと知ったときのショックは強烈でした。このコマーシャルで喋っている女性は、Anita Sampsonという1920年に生まれたアメリカ人女性です。



スペイン風邪は第一次世界大戦が終盤を迎える1918年頃流行しはじめ、1920年を過ぎてから収束していくのですが、世界中で5億人(世界人口の約3割)が感染し、数千万人以上が死亡したとされています。日本は大正時代でしたが、約45万人が死亡したと言われています。科学技術や、生活様式は現在とは異なるのですが、ソーシャルディスタンスや、隔離など、パンデミックの対策は、現在とほとんど同じという事実に驚かされます。



アニタさんは、コマーシャルの中で語ります。"I don’t remember it, of course. But for my mother, it was a very difficult time. "(もちろん私は覚えていないけれど、それはとても困難な時代だったと母は私に語ってくれた)さらに、"She told me, ‘it was just you and me for many months.’”(何ヶ月もあなたと私だけだったと母は私に語ってくれた)

このコマーシャルの中で、現在の写真と、100年前の写真が混ざって登場するのですが、パンデミックで苦しんでいるのは、現代の私たちだけではないというメッセージをじわじわと感じます。アニタさんはさらに続けます。”But she wasn’t alone. Everybody tried to do what they could to help.” (でも母は決して一人ではなかった。みんなが自分ができる精一杯のことをしようとしてくれていた) "But she was also a very strong person”(母はとても強い人だった)



"And then it was over. We came out into a new world, my mother and me. We can get through this. We all have the strength to do it”
(そしてやがてそれは終わった。母と私は、新しい世界を迎えることができた。私たちにこれを乗り越えられる。そのようにできる力をみんな持っている) という力強いメッセージ。





彼女の母親もパンデミックの中で頑張ってきた。今の時代の母親も負けてはいけないというエールになっています。



"I’m 100 years old”(私は今100歳です)とアニタさんは続けます。”And you just take care of that little miracle” (みなさんはただこの小さな奇跡を大切にしてくださいね)と若い母親に語りかけています。

このコマーシャルの最後に登場する文字スーパーは、"For all new moms in quarantine, you’re not alone.”(隔離下で新たに母親になる皆さん、皆さんは決して一人ではありません)。この「一人ではない」というのは、周りの人々の協力があるということだけではなく、今の時代が特別なわけではなく、100年前も、あるいはもっと昔も、人類は同じような経験をしてきているというメッセージにもなっています。

ところで昨年の報道によると、100歳のアニタさんは、107歳のフィアンセがいるのだそうです。Joe Newmanという男性ですが、107歳にして赤のメルセデスのオープンカーを乗り回すというすごい人。



こちらのリンクに107歳のJoe Newman氏の姿が動画で紹介されています。Anita Sampsonさんも登場しています。

https://www.wfla.com/wfla-plus/107-year-old-sarasota-man-still-living-life-to-the-fullest-with-fiance-and-drivers-license/

昨年3月、二人が住んでいるフロリダで100歳の誕生日パーティーをリモートで行なったそうですが、その時「パンデミックでは死にたくない」と思ったそうです。その後の様子はわかりませんが、二つの大きなパンデミックを経験したこのカップル、世界最強ですね。



フェイスブックは、このコマーシャルの前にも、パンデミックを題材とした作品を作っていて、どちらの広告代理店も同じ会社なのですが、そのことはこちらのブログ記事をご参照ください。

https://blog.goo.ne.jp/singaporesling55/d/20200414

世界中の母親のみなさん、これから母親になられる皆さん、今は大変な時代ですが、決して負けないで頑張ってください。このフェイスブックのコマーシャルが言っているように、皆さんは一人ではないのです。また同じような経験をし、同じように悩み、なんとか克服してきた先輩たちがこんなにたくさんいたんだということを知って、少しでも救いになっていただければと思います。

Happy Mother's Day!
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